オルペウス(オルフェウス)1 出生と母カリオペー 琴座の琴=竪琴Lyreの持ち主とされるオルペウスの母はカリオペー(カリオペ).ムーサイ(単数形はムーサ)の中で「第一等の位にある」とされた雄弁/叙事詩の女神.古い絵画では,彼女もまた竪琴をもった姿で描かれます.ムーサと言われてもなかなかぴんときませんが,英語名ミューズなら,今日の私たちにもなじみのある名前.ミュージアムmuseum,音楽musicはミューズ由来の言葉ですね.

琴座の琴=竪琴Lyreの持ち主とされるオルペウス(オルフェウス).

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6月中旬21時頃・4月下旬0時頃・3月中旬3時頃、東京近郊

星座図鑑・こと座

 

密儀宗教オルフェウス教を創始したとされるギリシア神話の英雄ですが---

その名は特に天才的楽人として知られています(ブリタニカ国際大百科事典 オルフェウスとは - コトバンク ). 

 

「彼が竪琴を弾くと、森の動物たちばかりでなく,木々や岩までもが彼の周りに集まって耳を傾けた」ウィキペディア オルペウス - Wikipedia 

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Orpheus & the Beasts - Ancient Greco-Roman Mosaic

 

英語版ウィキペディアによれば,

Orpheus - Wikipedia

オルペウスに関する最古の記述は,抒情詩人レギオンのイビュコス(紀元前6世紀)の詩の断片.'onomaklyton Orphēn' ('Orpheus famous-of-name' オルペウス 有名人) 

古代ギリシャのほとんどの詩人/歴史家は,オルペウスの実在を信じていたようです.

 

ピンダロス(Pindaros, 英: Pindar, 紀元前522年/紀元前518年 - 紀元前442年/紀元前438年)は,彼を,'歌の父  the father of songs'と呼び,

”オルペウスは,ムーサイ(単数形はムーサ,英語ではmuse ミューズ)の一人カリオペーとオイアグロス(トラーキア王)の子” としています.

 

偽アポロドーロス「ビブリオテーケー(日本語訳 ギリシャ神話)」にも,同様に記載が.

 

“カリオペーとオイアグロスから,しかし名義上はアポローンから,ヘーラクレースが殺したリノスおよび歌によって木石を動かした吟唱詩人オルペウスが生まれた”

(アポロドーロス ギリシャ神話 高津春繁訳 岩波書店

 

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ヘーシオドス神統記には,オルペウスの名はありません.

しかし,”ゼウスを褒め称える優美な言葉を語るムーサ(英語ではmuse ミューズ)”は全編にわたって登場し,例えば,次のように描かれています.

 

ヘーシオドス 神統記  廣田洋一訳 岩波書店 より

“さあ 詩歌女神(ムーサ)たちのことから始めよう 

彼女たちは オリュンポスに住みたもう

父神ゼウスの大御心(おおみごころ)を悦ばせるのだ

今在ること この先起こること すでに生じたことがらを

声をあわせて讃え歌うて.麗しき歌声が疲れも知らず

詩歌女神(ムーサ)たちの口から流れ 彼女たちの百合花(ゆり)にも似た歌声が----”

 

“--- これが詩歌女神(ムーサ)たちの 人間どもへの聖い贈物である.

というのも詩歌女神(ムーサ)たちと遠矢射るアポロンに由来するからだ.

人びとが歌人や竪琴弾きとなってこの地上が存える(ながらえる)のは”

 

また,ムーサの母をムネモシュネーティターンの女神で記憶を司る)とし,カリオペーをムーサたちの中で「第一等の位にある」としています.

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“彼女(ムーサ)たちを ピエリアで 父神ゼウスに添寝して 生みたもうたのは

エレウテルの丘陵(おか)を治めるムネモシュネ

彼女たちを 厄災を忘れさせ悲しみを鎮めるものとして生みたもうたのだ.

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大いなるゼウスの儲けた 九人の娘たちは.

クレイオ エウテルペ タレイア メルポメネ

テルプシコラ エラト ポリュムニア ウラニアに

カリオペで この方(カリオペ)はみんなのなかで第一等の位にある

というのも彼女は畏い(かしこい)貴族(パシレウス)の世話をなさるのだから”

 

 

ムーサと言われてもなかなかぴんときませんが,英語名ミューズなら,今日の私たちにもなじみのある名前.

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によれば,

ミューズ

ミューズとは - コトバンク

------ やがてミューズたちは音楽のみにとどまらず,広く文芸と学問全般の神とされるようになり,プラトンアリストテレスの学校にはムーセイオン(ムーサの聖所)が設けられていた.

今日のミュージアムmuseumという語は,アレクサンドリアの研究・教育機関であったムーセイオンに由来する.

音楽musicもmuse由来ですね by yachikusakusaki

ローマ時代には,9人にそれぞれ機能分担させる試みもなされ,カッリオペは叙事詩の,メルポメネは悲劇の,クレイオは歴史の,テルプシコレは合唱や舞踊の,ウラニアは天文学の女神というように,その領域が定められた.[中務哲郎]

 

 

ムーサたちの中で「第一等の位にある」カリオペー.ただ,ギリシャ神話で彼女が単独で活躍する場面はあまりありません.

以下にthe Theoi projectのサイトから,カリオペーのまとめを引用します.

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CALLIOPE (Kalliope) - Greek Goddess Muse of Epic Poetry

カリオペー

拙訳

カリオペーは,音楽,歌と舞踏の女神ムーサイの長女.彼女は雄弁の女神でもあり,彼女の才能を王や王子に提供しました.

古代ギリシャ古典期,ムーサに個別の芸術的役割を賦したとき,カリオペーには叙事詩の女神の名が与えられました.そのため,彼女は書字版と尖筆(せんぴつ),または巻物をもった姿で描かれます.

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ただし,古い絵画では竪琴をもっています.

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カリオペーは吟唱詩人オルペウスの母で,息子がバッカス神の信者たちによって八つ裂きにされたとき,彼の頭部を取り返して,レスボス島に祀りました.

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彼女の名前は,ギリシャ語のkallosとopsが組み合わされた”美しい声を持った”を意味しています.

 

KALLIOPE (Calliope) was the eldest of the Mousai (Muses), the goddesses of music, song and dance. She was also the goddess of eloquence, who bestowed her gift on kings and princes. In the Classical era, when the Muses were assigned specific artistic spheres, Kalliope was named Muse of epic poetry. In this guise she was portrayed holding a tablet and stylus or a scroll. In older art she holds a lyre.

Kalliope was the mother of the bard Orpheus. When her son was dismembered by the Bakkhantes (Bacchantes), she recovered his head and enshrined on the island of Lesbos. 

Her name means "beautiful-voiced" from the Greek words kallos and ops.

CALLIOPE (Kalliope) - Greek Goddess Muse of Epic Poetry

 

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