天の裔の神々(ウラニオネス)のなかでも とりわけ愛らしい子供たちを生まれた
(ヘーシオドス,神統記 岩波文庫 廣川洋一訳)
とかかれたレート−
後世の「アポローンへの賛歌」は,アルテミス,アポローンを出産した場所を次のように記しています.
ようこそ,至福なるレートー,あなたこそ名高い子供の母.主アポローンと矢を降りそそがせるアルテミスを,娘はオルテュギアーの島で,息子は岩なすデーロスの高い峰,つまりキュントス山にもたれ,イーノーボスの流れに沿ったシュロの木のすぐそばで産んだのだから.
(四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』より 岩波文庫 逸身 喜一郎・ 片山 英男 訳.)
ただし,
この日本語版で “「シュロの木」のそばで産んだ” と訳されていますが,
シュロは日本にもあるヤシ科の植物.
(ヤシ科の植物をすべてシュロと言い表すこともあるとのことですが---
国語辞典的には認められていません:
→たとえばデジタル大辞泉棕櫚/棕梠(シュロ)とは - コトバンク
日本国語大辞典もほぼ同じ )
The Theoi Project によれば
正しくはナツメヤシのようです.
The Theoi Project の記載は以下の通り(かっこ内拙訳)
PLANTS & FLOWERS OF GREEK MYTH 2
PALM, DATE(なつめやし)
Species(種)
: Phoenix dactylifera (=ナツメヤシの学名)
A medium sized tree which grows to a height of 15 to 25 metres. Its edible dates are harvested.
(中程度の高さの木で,15〜25メートルになる.食用のデーツが生産される)
Sacred to
: Apollon and Leto(アポローンとレートーの神木)
(the sacred palm tree of Apollon's birth grew in his sanctuary on the island of Delos
アポローン誕生のヤシ神木はデーロス島のアポローンの神殿で育っていた)
; Nike (the goddess of victory held a palm branch as an attribute).
(ニーケー 勝利の女神で象徴としてヤシの枝をもっている)
Mythology
: Birth of Apollon. The goddess Leto gave birth to Apollon on the island of Delos whilst clinging to a palm tree beside the Inopos River.
(アポローンの誕生 女神レートーは,デーロス島のイーノーボス川の横のヤシの木のすぐそばでアポローンを産んだ)
(Source: Homeric Hymns, Callimachus, et al)
百科事典マイペディアの解説
デーツとも。中近東原産とされるヤシ。アフリカを中心とした乾燥した熱帯域で多く栽培される。高さ20〜30m。葉は羽状複葉。果実は長楕円形で,果肉は甘く柔らかいので生食のほか菓子やジャムの原料とする。また樹液を発酵させヤシ酒を作る。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディア
https://academic.oup.com/botlinnean/article/151/1/15/2420456