日本でクリスマスローズといえば,クリスマスローズ属(Helleborus)の種全てを指す言葉. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/02/06/001317
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耐寒性が強く,冬〜早春の花として欧米で品種改良が進み,最近では日本でもかなりの人気.
約20種あるとのことですが,園芸種としては,英語で“Christmas rose”と呼ばれているヘレボルス・ニゲル( Helleborus niger ),
そして,欧米で最も人気が高いヘレボルス・オリエンタリス (Helleborus orientalis,レンテンローズ)とその交配種ヘレボルス・ヒブリダス(Helleborus × hybridus)等がよく知られています.(Hellebore - Wikipedia)
同時に,この美しい花たちは,かなり強い毒性を持つ.
このこともよく知られてきました.
一説では語源も毒から?
属名Helleborusの語源としては,
「ギリシャ語helléboros で原義はおそらく「子鹿が食べる植物」(hellós, ellós 子鹿+borá 食べ物)」,
と多くの辞典類は解説していますが(ランダムハウス英語辞典,hellebore | Origin and meaning of hellebore by Online Etymology Dictionary hellebore | Definition of hellebore in English by Oxford Dictionaries )----
殺す(ellein)+食べ物(bore)とする記載も散見されます.:The genus name is derived from the Greek “ellein,” “to injure,” and “bora,” “food.”Hellebore make for an enchanting addiction - Lifestyle - Columbia Daily Tribune - Columbia, MO
毒として実際に使われたことがある?
このクリスマスローズの毒は,古代ギリシャ・第一次神聖戦争の際,アテナイ(アテネ)などの同盟軍が,隣国キラを陥落させるために,川の水に混ぜたと言われています.第一次神聖戦争 - Wikipedia
最初の生物化学兵器として使われた毒?
少なくとも,クリスマスローズは,古くは毒草として,時には薬草と考えられていたようですね(Hellebore - Wikipedia).
クリスマスローズ毒の本体
クリスマスローズの主な中毒症状は,嘔吐、激しい痙攣(けいれん)、呼吸麻痺.
ヘレブリン、ヘレブリゲニン、ヘレボリン、ヘレボレイン、プロトアネモニン.|東邦大学薬学部|薬用植物園|見本園|クリスマスローズ|
プロトアネモニンは,皮膚や粘膜を刺激して水疱を生じさせたりする毒ですが,ヘレブリン、ヘレブリゲニン、ヘレボリン、ヘレボレインは,いわゆる強心配糖体.
:“ステロイド”と呼ばれる物質に糖がついた化学構造をもち,心臓収縮を増強する作用を持つ物質.
沢山の植物がこの強心配糖体を持つ事が知られています.例えば,キョウチクトウ,ジキタリス,オモト,スズラン,フクジュソウ,ストロファンツス,モロヘイヤ(果実のみ)--- 強心配糖体を含む植物
なお,これらの植物の内,ジキタリスとストロファンツスの成分は,慢性の心不全(収縮機能の低下により身体組織の需要に見合う十分な血液を、心臓が拍出できない状態)の治療に用いられる心収縮力増強薬として認められていますが(強心配糖体 - 薬学用語解説 - 日本薬学会),その他が薬として使用されることはありません.クリスマスローズも含めて.