正月,三が日に既に咲いていた鎌倉八幡宮の梅.早梅(そうばい:俳句の世界では晩冬の季語 季語・早梅で,風土により早めに咲いた梅の花のこと。早咲きの梅をたずね歩くことを探梅という)と呼んでいいのか?
早咲きの梅の品種であることは確かでしょう.
早咲きのウメ
ウメ(花ウメ)とは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 には
早咲きの品種としては,
野梅系の白花「緑萼(りょうがく)」と「冬至」(極早咲き)が例として取りあげられていました.「冬至」は早ければ11月には咲く品種のようです.
ウメの一般的な特徴としては
「品種によって開花期の差が大きいです」
「性質上、野梅性・緋梅性・豊後性・杏性の4系統に分けられます」
「園芸上は花を観賞する梅と果実の収穫を目的とする梅に分けられます」
そして,
「花梅だけで300種以上の品種が栽培されています」とのこと.
水戸の梅まつりの楽しみ方 (茨城県の観光情報ポータルサイト) には,早咲きの品種としては,「八重寒紅」「白難波」「八重冬至」「烈公梅」が,
また,
梅の開花前線@日本列島|なんでも梅学 には「紅冬至」「初雁」の名も.
鎌倉八幡宮の早咲きの梅は,この中では,「八重冬至」が一番似ている気がしますが---.
ウメの分類
さすがに梅を愛する日本人,梅の分類も細かく,上記
「野梅性・緋梅性・豊後性・杏性の4系統」の他にも
「野梅系野梅性 野梅系難波性 野梅系紅筆性 野梅系青軸性 緋梅系紅梅性 緋梅系緋梅性 緋梅系唐梅性 豊後系豊後性 豊後系杏性」の九つに分ける分類の仕方もあるようです(いろいろな梅の花|なんでも梅学).
ただ,細かな分類は日本特有といってもいいもののようです.現在の植物学上の分類(APG;Angiosperm Phylogeny Group )では,
スモモの近縁で,
アンズとは同じグループ(アンズ節)に位置づけられています.
植物学上の梅の分類(APG分類):Prunus mume - Wikipedia
目 Order: Rosales バラ目
科 Family: Rosaceae バラ科
属 Genus: Prunus(スモモ属) 和名:サクラ属
亜属 Subgenus: Prunus(スモモ亜属)
節 Section: Armeniaca(アンズ節)
種 Species: P. mume
Binomial name Prunus mume Siebold & Zucc.
植物学上は,ウメとアンズはほとんど区別されていないで,「種」の段階で初めて分けられるんですね.
しかも,多くの梅はアンズとウメの雑種なのです.全く知りませんでした! そしてこの「交雑性」を基礎とした分類もあるのです(梅の形態と分類).
https://www.fukuume.com/f/ume_information/ume/ume2
梅園
日本では,本家の中国以上に愛されているようにみえる梅.沢山の品種に加え,いくつもの大きな梅園があります.大きな梅園を訪れたことがないので一度足を運んでみたいもの.
梅の名所へでかけよう2016 - 観梅・梅まつり特集:るるぶ.comによれば,人気トップ20は,
(1〜5位)
東京世田谷羽根木公園,大阪北野天満宮,水戸偕楽園,大阪城公園,三重いなべ市農業公園梅林,
(6〜10位)
名古屋農業センター,京都青谷梅園,東京文京湯島天満宮,埼玉越生(おごせ)梅林,東京八王子高尾梅林,
(11〜15位)
群馬高崎箕郷(みさと)梅林,東京大田区池上梅園,三重津結城神社,愛知知多佐布里池(そうりいけ)梅園,神奈川小田原曽我梅林,
(16〜20位)
兵庫たつの綾部山梅林,東京江東亀戸天神,東京新宿御苑,奈良五條賀名生(あのう)梅林,東京府中市郷土の森博物館 とのこと.
それぞれホームページ等で詳しい解説があります.その他,このブログを書くにあたって参照した,熱海梅園(平成29年 第73回熱海梅園梅まつり),小石川植物園(梅を紹介した個人のサイトhttp://www.geocities.jp/kbg_tree/ume/ume-list.htm)や梅農園:例えば梅ひとすじ95年/紀州梅干の月向農園 梅干し・梅肉エキスの通信販売)も楽しめそうな気がします.
山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によれば,
現在普通に目にするウメは,ほとんど中国から来たもので,700年前後に遣唐使などより移入されたものと思われます.
「万葉集」では,萩に次いで多く,120首前後が読まれています.
とのこと.
梅 / 万葉集
ゆきのうえに,てれる つくよに,うめのはな,おりて おくらむ,はしき こもがも
雪(ゆき)の上(うえ)に,照(て)れる月夜(つくよ)に,梅(うめ)の花(はな),折(お)りて送(贈 おく)らむ,はしき子(こ)もがも 大友家持 (第18巻 4134)
雪の 上に.照れる 月夜に.梅の 花,折りて 送らむ,はしき 子もがも
(右の一首は,十二月に大伴宿禰家持作る)
▽折口信男 万葉集
今夜は,雪の上に照って居る,月の好い晩だ.梅の花を折って,贈って好いような,可愛ゆい人があれば好いが.
▽斎藤茂吉 万葉秀歌
天正勝宝元年十二月,大友家持の作ったもので,越中の雪国にいるから,「雪の上に照れる月夜に」の句ができるので,こういう歌句の人麿の歌にも無いのは,人麿はこういう実際を余り見なかったせいもあるだろう.作歌のおもしろみは,這般(しゃはん この辺り)の裡(うち)にも存じて居り,作者生活の背景ということも自然関聯(かんれん)してくれるのである.下の句もまた,越中にあって寂しい生活をしているので,都をおもう情とともにこういう感慨がおのずと出たものと見える.
雪の上に照り映えている月のこんな夜に,梅の花を手折って送ってやれる,かわいい娘(こ)でもいればいいな
(風雅な歌材,雪・月・花が組み合わされた最初の例)