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ファージャオ親子の間に異変が起きました.ファージャオの腕や足には母親に噛まれた跡が見つかりました. 実はこの時ファージャオのお母さんは発情期を迎えていました.やむをえずお母さんは第一基地に戻されました.独りぼっちになってしまったファージャオ.このまま野生化訓練を続けることはできるのでしょうか. /NHK パンダ山へ帰る(2)

パンダ 山へ帰る~密着記録 野生化プロジェクト~ - NHK(2)

パンダ 山へ帰る~密着記録 野生化プロジェクト~ - NHK

 

地球上のジャイアントパンダのおよそ8割が生息する中国四川省

臥龍(がりゅう)自然保護区では,パンダ野生化プロジェクトが行われています.センターの中で生まれたパンダを野生で近い環境で訓練し,最終的に自然の山に返すことを目指しています.

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Xi Xi, Si Xue & Xi Mei gave birth to a cub @ CCRCGP

 

yachikusakusaki.hatenablog.com

警戒心が身につき竹も食べられるようになりました.第一段階の訓練は無事完了.次のステップへと踏み出します.

 

第2期訓練は第1期よりも険しく広大な山で行います.餌の竹を自分で捜せるようになることが目標です.

ここが第二訓練基地.10種類以上の竹が生い茂るこの山で親子で生活します.

 ここにはユキヒョウやオオカミなど,子パンダを狙う様々な野生動物も生息しています.観察のため棚で囲まれていますが、ほぼ野生と同じ環境です.訓練基地にはセンターのスタッフが常駐し,毎日追跡調査をします.

 2015年4月ファージャオ(華姣)とお母さんを乗せた籠が第二基地を目指して進みます.人間の姿を見せないよう,ファージャオの籠は竹で覆われています.

 

第二基地では外敵や土砂崩れなどあらゆる危険から母パンダが子どもを守らなければなりません.その背中を見て子パンダは自然との向き合い方を学ぶのです.

母と子それぞれに無線発信機と録音マイク,GPSをつけます.緊張した面持ちのファージャオ(1歳9ヶ月).これからが野生化に向けての正念場です.頼りになるのはお母さんだけ.親子で力を合わせて生きていきます.

 

二ヶ月経った2015年6月下旬.ファージャオ親子の間に異変が起きました.

親子の距離がそれまで10メートル以内だったのに,ある日突然200メートルも離れたことがGPSから分かったのです.スタッフが駆けつけると,そこにはおびえた様子のファージャオがいました.ファージャオの腕や足には母親に噛まれた跡が見つかりました.

実はこの時ファージャオのお母さんは発情期を迎えていました.子育て中に発情するのは極めて珍しい事です.体を幹にこすりつけ始めました.山の稜線の高い木に登り,遠くのオスにアピールするのです.発情期には子どもに目を向けなくなってしまいます.やむをえずお母さんは第一基地に戻されました.

まだ乳離れもしていないのに,独りぼっちになってしまったファージャオ.このまま野生化訓練を続けることはできるのでしょうか.

飼育員「その頃のファージャオは体が小さかったので心配でした.授乳期なのに母親と別れて栄養が足りるだろうかと不安でした」

訓練基地でお母さんと離れてしまったのは,ファージャオだけではありません.

こちらは7ヶ月のオスシンバオ(新宝).お母さんと大の仲良し.毎日じゃれ合って遊んでいました.ところが,お母さんがある日突然体調を崩し,救急病院に運ばれたのです.

緊急手術が始まりました.病名は腸閉塞.命に関わる危険な病気です.

お母さんが病院に運ばれた後のシンバオ.木登りを始めますが,何だか元気がありません.いつもは下にいるはずのお母さんの姿が見えない.

ああ,危ない.(細い枝に登ってしまい,たわんだ拍子に落下)

よかった.怪我はしていないようです.

この日悲しい知らせが届きました.お母さんが治療のかいなく亡くなったのです.シンバオの野生化訓練は中止となりました.これまでお母さんのおっぱいしか飲んだことがなかったシンバオ.人工のミルクを嫌がります.これからは人間に育てられることになりました.

 

ファージャオのいる第二訓練基地です.シンバオと同じく独りぼっちになってしまったファージャオはどうしているのでしょうか.その後の様子によっては訓練を中止しなければならないかもしれません.第二基地では毎日2回見回りが行われます.アンテナの方向を変えながらファージャオの無線発信機の信号をキャッチします.

「いなくなった.ファージャオの音がなくなった.見失った」「また信号を見つけたとしても,我々の歩くスピードじゃ追いつけない」「ファージャオは動きが速いな.すぐどこかへ逃げてしまう」

受信した信号を記録することで,ファージャオの様子がつかめました.

ファージャオは同じ場所にとどまることなく,竹を求めて広い範囲をくまなく動き回っていました.しかも竹林にいる時間は1日の80%以上.同年齢のパンダの倍以上の行動力です.

 

2015年11月.ファージャオ(2歳4ヶ月)が久しぶりに姿を現しました.

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野外に放されるパンダ「華姣」の捕獲作戦_中国網_日本語

お母さんと別れておよそ5ヶ月.体が一回り大きくなり,食欲も旺盛です.ファージャオの予想以上の成長ぶり.野生化プロジェクトにとって,嬉しい驚きでした.

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野外に放されるパンダ「華姣」の捕獲作戦_中国網_日本語

7ヶ月ぶりに身体検査をしてみると---.

内臓,血液全て異常なし.体重は46キロに増えていました.腸の中から,竹についた虫が原因の寄生虫が見つかりましたが,低い数値でした.新鮮な竹を選ぶ能力が高い証です.

突然のお母さんとの別れで独りぼっちになったファージャオ.その逆境をたくましく生き抜いていたのです.

 

中国全土のパンダの専門家が集まり,ファージャオの野生化について検討会が開かれました.「特に人の気配を感じるとすぐ木の上に逃げる.--」

これまでの成長の過程が詳しく報告され,ファージャオを自然に帰すことが決まりました.

野生化プロジェクトの最終段階.いよいよ山に放たれ,大自然の中,一人だけで生きていきます.

2015年11月19日.朝早く,ファージャオをのせたトラックが出発しました.向かったのは臥龍から更に西へ500キロの栗子坪(リッシヘイ)自然保護区.ここには確認されただけで15頭の野生パンダが生息しています.

野性に帰るファージャオを見送ろうと,多くの人が集まっています.

ジャイアントパンダを絶滅から救う希望となるのか.               

ファージャオ山へ帰る2015年11月19日.

小さな背中にみんなの願いが託されました.

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 パンダ 山へ帰る~密着記録 野生化プロジェクト~ - NHK 大熊貓「華姣」放歸野外 - 壹讀 http://www.macaodaily.com/res/1/20151120/49131447955011046.jpg

 

飼育員 牟士傑(むしけつ)さんもう二度と彼女の世話をすることはないと思うと,悲しくて複雑な気持ちです.でも訓練を修了したから自然に帰らなきゃ.彼女には彼女の使命があるから.彼女は森へ.私たちは次の訓練へ」

 

この後もファージャオの追跡調査は継続して行われ,パンダ保護研究センターに報告されます.

GPSと無線で居場所をつかみ,ファージャオの位置を地図上に記録していきます.

糞はDNA分析でどのパンダのものか識別できます.ファージャオの健康状態を知る重要な手がかりです.

パンダが食べた竹も貴重な情報源です.野生パンダがどの竹をどれくらい必要とするかなどを,知ることができます.

山の中には赤外線カメラも設置.ファージャオの姿は捉えられるのでしょうか.

 

ファージャオが山に放たれてから2ヶ月後.

センターに消息を知らせる最初の報告が届きました.ファージャオは放たれた場所から1キロ以内の狭い範囲を行き来しているようです.

研究員黄炎さん「今のファージャオの状態はすごく良いです.とても慎重に周辺を探索しています.いきなり遠くに行くのは非常に危険ですから.ファージャオの野生化が成功する可能性は高いと思います」

 

四川の山に厳しい冬が訪れました.冬眠をしないパンダにとって,過酷な季節です.10年前,野生化第1号のシャンシャンが亡くなったのも最初の冬でした.餌の竹が少なくなり,他のパンダの縄張りに入って,攻撃されたのです.

長い冬,そして春が過ぎました.ファージャオは元気に暮らしているのでしょうか?一旦捕獲して詳しく調べることになりました.

荷物の中にはなぜか大きな骨が.

GPSで最近ファージャオが活動していると確認された地点に向かいます.

作られているのは大きな檻(おり).この中にファージャオを捉えようというのです.大型の動物を捕らえるためのこの地方の少数民族伝統のやり方です.

ファージャオをおびき寄せるために使うのが羊の肉.焼いて匂いを拡散させます.現在は竹を主食とするパンダですが,かつては肉食動物.今もその習性が残っているのだそうです.

お札をたいて山の神にファージャオと再開できるよう祈ります.しかし,一ヶ月以上待っても,ファージャオは檻に寄ってくることはありませんでした.

更に遠くへと移動しているようです.

「ファージャオの信号が弱くなったな」

ファージャオの姿だけでも確かめたい.信号をたよりに近くまで行ってみることにしました.

「信号が強いぞ」信号の強さからファージャオは数百メートル以内にいます.信号を追って更に山の奥へと進みます.設置してある赤外線カメラを確認してみると---.

パンダです.ファージャオでしょうか.映像を分析したところ違うパンダでした.

GPSで確認したファージャオが通った後を進むと,糞が見つかりました.だ新しく,堅い竹の繊維がはっきり見えます.

更に行くと竹を食べた後が見つかりました.かみちぎった部分の高さから3歳のファージャオが食べたのは間違いありません.その下にも糞が散らばっていました.後で分析したところ,やはりファージャオのもので,新鮮な竹をたくさん食べていることが分かりました.

とうとうファージャオが姿を現すことはありませんでした.でもそれはファージャオが無事に野性に帰っている証しなのです.

飼育員 牟士傑(むしけつ)さん「私たちはずっと彼女のことを考え,成長を見守ってきました.でも彼女はその事をしりません.あっという間に森の中に消えてしまう.一瞬泣きたくなるけど彼女が自然の中で幸せに生きることを祈ります」

ファージャオが山に帰ってから1年3ヶ月.最新の調査でファージャオは放たれた場所から30キロほど離れた山の中で順調に生活していることが分かっています.

副主任張和民さんファージャオにはとても期待しています.子どもを産んで遺伝子の多様性に貢献できるかもしれません.『野生化は成功したか?』と問われれば,いまはまだカッコ付きの『成功』です.ファージャオが子どもを連れて現れたら本当の成功と言えるのです.

 

四年前に生まれ,新たな野生化プロジェクトのもとで育ったファージャオ.お母さんとの別れを乗り越えてたくましく成長し,野生化に向け着実に歩んでいます.この深い森のどこかで今日も竹を探しているファージャオ.1年後の夏にはパートナーと出会う年齢を迎えます.

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その数1,864頭 ジャイアントパンダの最新の推定個体数|パンダの保護活動|WWFジャパン

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パンダ 山へ帰る~密着記録 野生化プロジェクト~ - NHK

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