日本人が好むじゃがいも料理としては,フライドポテト,肉じゃが,ポテトサラダ,コロッケ,じゃがバターなどが挙げられています.経済的で,作り方も比較的シンプルな料理で,フライドポテト,ポテトサラダ,コロッケは世界中で人気.日本独自と思われるのは肉じゃが.いつ,どのようにして開発されたかははっきりしていませんが,文献的な根拠を示した情報から,比較的新しい料理であることは確か.料理名としては1950年が初出.1928年の海軍のレシピに似た料理があるものの,肉じゃがではないともこと.

ヨーロッパを中心にじゃがいも料理を紹介してきましたが,世界中で庶民の味を作っていることがよく分かりました.

日本でもとても人気のある食材ですが,どの様な料理に人気があるのでしょうか?

ネット上の簡単なランキングの紹介記事二つをまとめたのが次の表です.

gooランキング https://ranking.goo.ne.jp/ranking/29874/

Macaroniランキング https://macaro-ni.jp/130414?page=3

順位は違いますが,上位第5位までは,同じ料理.簡単な人気投票とは言え,かなり納得できる料理名が並んでいます.

フライドポテト肉じゃがポテトサラダコロッケじゃがバター

いずれも,かなり経済的で,作り方も比較的シンプル(美味しく見栄え良く作るのにはかなりの手間とコツを要するものもありますが)な料理という点では,世界のじゃがいも料理と同じ.

品目としても,フライドポテト,ポテトサラダ,コロッケ(クロケット)は,世界中で人気があります.じゃがバターは,料理とは言えない気がする一方,世界中で食べられているのではとも思います.

 

日本独自と思われるのは肉じゃが.

いつ,どのようにして開発されたかははっきりしていませんが,文献的な根拠を示した情報から,比較的新しい料理であることは確か.

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/肉じゃが

魚柄仁之助(『国民食の履歴書: カレー、マヨネーズ、ソース、餃子、肉じゃが』青弓社、2020年.ISBN 978-4-7872-2087-5)

によると,肉じゃがが料理名として確認できる初出は,雑誌『主婦と生活』の1950年(昭和25年)1月号であり,四谷見附にあった外食券食堂のメニューに「肉じゃが」があったと報告されている.しかし,それがどのような料理であったのか具体的にはわかっていない.

 

この記事は,日本語版ウィキペディアにしては,珍しく(ごめんなさい),全てにおいてしっかり文献的なフォローがなされていて,信用できる記事になっています.

 

例えば,

テレビの人気番組では,肉じゃが開発には海軍の東郷平八郎が関わったと紹介され,

http://mreveryman.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-dfe3.html

https://iromame-beans.jp/user/yu2otktk/e9c2239b89d49ca90a5a

また,農水省のウェブサイトにも同様の内容が紹介されています.

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/42_20_hiroshima.html

しかし,ウィキペディア「肉ジゃが」執筆者はこの説の出所もしっかり抑え(毎日新聞に証言が記載されている),これが,町おこしのために作り出されたご当地グルメの宣伝文句であることも明らかにしています.

一方,東郷平八郎が活躍した時期よりかなり遅れた頃の海軍・陸軍のレシピに,肉じゃがと類似した料理が記載されてはいるとのこと(海軍「甘煮」/1938年,陸軍「牛肉煮込み」/1928年).ただし,これを紹介している軍隊の料理史研究家からは肉じゃがとは認められていません.(高森直史『海軍 肉じゃが物語 ルーツ発掘者が語る海軍食文化史』光人社、2006年.ISBN 4-7698-1292-2)

 

 

なお,肉じゃが,ポテトサラダは,“「おふくろの味」幻想~誰が郷愁の味をつくったのか~ (光文社新書)”という興味深い本でも取り上げられています.私が全く予想していなかった内容でまとめられたもの.

短時間で一冊を読み込んで,簡潔にまとめることはとても無理とは思いますが,明日取り上げてみようと思っています.

ネット上のインタビュー記事 “『「おふくろの味」幻想』

著者・湯澤規子さん・インタビュー”

https://veryweb.jp/life/543093/

からたどり着いた本です.このインタビューのまとめで終わってしまうかもしれません.