新型コロナウイルス感染第4波に見舞われている日本ですが---
世界に目を向けると,感染者の増加は一日たりとも止まることがありません.
2021年4月25日までの感染者総数は1億5000万人に近づいています.
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死者数は300万人を超え
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1日の死者数は12,000人を超えています.
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アメリカの死者が抑えられつつあるものの,インド,ブラジルは,1日約2500人の死者を数えています.
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土記
偏るワクチン
青野由利
毎日新聞 2021/4/24 東京朝刊
ワクチン戦略の「成功例」として世界で注目されているのはイスラエルだ.国民の半数以上が新型コロナウイルスのワクチンを2回接種.16歳以上では8割.患者は激減したと胸を張っている.
行動規制もかけていたが,同国のチームが今週,米科学専門誌に公表した論文では,ロックダウンの効果を差し引いてもワクチンの効果が大きいと分析している.
英国や米国も人口の4割が少なくとも1回接種済み.感染者や死者数では最悪状況にあった国だが,「ワクチン接種はうまく進んでいる」というのが大方の見方だ.
そんな中,日本は1回接種が済んだ人が1%程度.菅義偉首相が訪米中にファイザー社の最高経営責任者に追加供給を要請したのは焦りの表れだろう.五輪開催への国民の不安を紛らわそうという狙いもあるのかもしれない.
もちろん,国内の接種体制を整えることは大事だ.ただ,自国の遅れにばかり関心を向けていると見失うこともありそうだ.
「世界のワクチン流通には衝撃的なほどの不均衡があります」.今月,世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が訴えていた.
全世界で7億回以上のワクチンが接種されたが,その9割は高所得・高位中所得の国々.低所得国の接種者は0・2%に過ぎない.
公平なワクチン供給の国際枠組み「COVAX」が貧困国を中心に提供したワクチンは4月上旬までに約3800万回分.これを100以上の国・地域に分配したというから十分にはほど遠い.
では,途上国の感染状況はどうかといえば,非常に厳しい.
たとえばインド.感染が急拡大し,今週,1日の新たな感染者数が31万人を超えた.死者数は1日2100人に上り,病院では深刻な酸素不足が起きている.背景には新たな変異株もあるようだ.
ブラジルも感染拡大は収まらず1日の新規感染者は6万~7万人,死者は3000人前後に上る.それ以外にも世界には感染が抑えられない国々はたくさんある.
「五輪は必ず開催される」と述べた国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長.日本の緊急事態宣言は「東京五輪とは関係ない」と述べたバッハ会長.彼らは,こうした世界の感染状況や日本のリスクをどう分析・評価しているのだろうか.
流行第4波は,専門家が「こうすれば,こうなる」と言った通りの道をたどった結果にみえる.日本の状況も世界の状況も楽観を許さない.ワクチンの「成功例」に目を奪われて見誤らないように.(専門編集委員)
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