“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ.
今日とりあげるのは
タケ
古事記には,タケは幾度となく登場するようです.
上記口語訳古事記の索引によれば,5カ所.
ほかに,タケノコ=タケの若芽,小竹=ささも出てきますが,これらについては,既に本ブログで取り上げました.
タケノコ
yachikusakusaki.hatenablog.com
小竹/ささ
yachikusakusaki.hatenablog.com
古事記で,タケが初めて登場するのは,ホヲリ(アマツヒコヒコホホデミ・ヤマサチビコ)が兄ホデリ(ウミサチビコ)の釣り針をなくし,探している場面.
そこに現れたのが,潮の流れを支配する神シホツチ.タケで編んだ籠の船をホヲリに与えます.
神代編 其の六
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さあ,困ってしもうた弟は,泣き悲しんで海辺にたたずんでおったのじゃが,その時に,どこからともなく,シホヅチが現れての,
「いかなるゆえに,ソラツヒコ(天空から降りてきた神の意と思われる)は,泣き悲しんでござるのか」と問うてきたので,ホヲリは答えて,
「わたしは,兄と釣り針を換えて魚を釣ろうとしたのですが,その兄の釣り針を海の中になくしてしまいました.それで,返せと言われたので山ほどの釣り針を作って償おうとしたのですが,受け取ってくれずに,『なお,その元の釣り針を返せ』と言うのです.
それでわたしは,泣き悲しんでいたのです」と,こう言うて泣きじゃくっておった.
すると,シホツチは,
「わしが,そなたのためによき計りごとをお教えしようぞ」
と言うての,すぐさま隙間なく竹を編んだ小さな籠の船を造っての,その船にホヲリを乗せて,教えて言うたのじゃ.
「わしが,この船を押し流すから,しばらくそのまま往(ゆ)きなされ.
うまく潮の路(みち)に乗るだろうて.
その路が見つかったなら,そのまま潮の路に乗って往(ゆ)きに往くと,鱗のさまに屋根を葺いた宮が見えてくるはずじゃが,それがワタツミ(海の神)の宮じゃ.そして,その神の御門に到り着いたならば,そばにある泉のほとりに大きなカツラの木が立っておろうから,その木の上に登って座っておるとの,ワタツミの娘がそなたを見つけて,ともに考えてくれるでござろうよ」
ヤマサチビコは,高千穂の峰に降り立ったヒコホノニニギ(アメニキシクニニシキアマツヒコヒコホノニニギ)とコノハナノサクヤビメ(カムアタツヒメ)の息子.
このあと,ワタツミの娘トヨタマビメを娶り,その孫ワカミケヌが神武天皇と呼ばれることになります.