いて座のギリシャ神話
弓を射る半人半馬が描かれる「いて座 Sagittarius(Sgr)」
Star Myths | Theoi Greek Mythology
ギリシャ神話では,ケイローン/ケイロン(Chiron),または,クロトス(Crotus/Krotos)とされています.
ケイローンについて,2回に分けてまとめてきました.
ケイローンは,野蛮かつ好色とされるケンタウロスの一人でありながら,学識に優れ,とくに音楽,医術,狩猟,預言術に精通し,多くの神々の子や英雄たちの養育に携わったとされています.弟子として名前が挙げられた英雄は実に25名!ケイローンは,他のケンタウロスとは生まれが違い,神の直系/ゼウスの異母兄弟.死後星座とされますが,死の場面を描いているのは,偽アポロドーロス/ビブリオテーケー.
ケイローンの出生については,「アルゴナウティカ」の挿話に語られています.妻レアーの目を盗んでピュリラーとの情事にふけるクロノスは,妻に見つかり馬に姿を変えて逃げ出します----.「アルゴナウティカ」では,この挿話の前に,ペーレウスがアルゴ号の乗員を鼓舞する場面があります.ペーレウスの結婚にはケイローンの尽力があり,また息子アキレウスの教育を引き受けたのがケイローン.この挿話は,このような逸話を知る読者にとっては,ごく自然な流れ.
CHIRON (Kheiron) - Elder Centaur of Greek Mythology
多くの神々の子や英雄たちの養育に携わったケイローン.
英語版ウィキペディアには,ケイローンに学んだ英雄の名が25名も記されていますが---
古代ギリシャ・ローマの文献を網羅してあるthe Theoi projectのサイトでは,
CHIRON (Kheiron) - Elder Centaur of Greek Mythology
次の5名の英雄の名と対応する原文英語翻訳/文献名が記されていました.
英文の翻訳も---と考えたのですが,時間切れ.
今日は,ネット上の事典/辞典のコピペ.
アリスタイオス Aristaeus
:アポローンと女狩人キューレーネーの子.
カドモスの娘アウトノエーと結婚し,アクタイオーンとマクリスの二人の子を儲けた. ミツバチの巣箱を作って養蜂の技術を発明.チーズの製法やオリーブの栽培,圧搾の技術も伝えた.(ウィキペディア)アリスタイオス - Wikipedia
アクタイオーン Actaeon
:ケイローンから狩りの術を教わった.
ある日,アクタイオンはキタイロンの山中で,狩りの最中に50頭の飼い犬に八つ裂きにされて死んだ.その原因は,ゼウスから愛人セメレを奪おうとしたためともいわれるが,
多くの説では,彼が処女神アルテミスの入浴中の裸体を目撃してその怒りに触れたためとされている.
処女神アルテミスは,泉の水をかけてアクタイオンを鹿に変え,彼の猟犬たちを扇動してかみつかせた.
主人を失った犬たちを慰めるため,ケイローンはアクタイオンの立像をつくった.(日本大百科全書)アクタイオンとは - コトバンク
イアーソーン Jason
:アルゴ船(アルゴー船)乗組員の指揮者として活躍した英雄.イオルコス王アイソンAisōnの子.
幼少のころ,父の異父兄弟ペリアスPeliasが父の王権を奪ったため,ケンタウロス族の賢者ケイローンのもとで養育された.
成人後,国に戻ってペリアスに王国返還を求めると,東方の蛮地コルキスから金毛羊皮を持参せよと命じられた.
そこで彼は大船アルゴを建造,全ギリシアの名だたる英雄たちを率いてコルキスを訪れ,同地の王の娘で魔女のメデイアの助けを借りて羊皮を入手,彼女を伴って帰国した.(世界大百科事典 第2版)イアソンとは - コトバンク
ディオニューソス Dionysus
:ギリシャ神話の酒と豊穣の神.ブドウの栽培を教えたという.
本来トラキア,マケドニアの,集団的狂乱と陶酔を伴う秘儀における神であったが,ギリシャに伝播し主に女性の間で熱狂的な崇拝を受ける.オルフェウス秘儀との接触により,冥界とのつながりをもつに至り,ヘレニズム期以降彼自身の秘教が大流行した.
ギリシャ演劇は,ディオニュソス神の祭儀から発達した.別名バッコス(Bakkhos).英語名バッカス.(世界大百科事典 第2版)
アキレウス Achilles
:ギリシア神話の英雄.ペレウス(ペーレウス)とテティスの子.ホメロスの「イーリアス」の主人公.
トロイ戦争中,トロイ一の英雄ヘクトル(ヘクトール)を一騎討ちで破る.幼時母が冥界のステュックス河に浸して不死身としたが,かかとだけ浸さなかったのでアポロン(一説にパリス)にそこを矢で射られて死ぬ.ラテン名はアキレス.(精選版 日本国語大辞典)
CHIRON (Kheiron) - Elder Centaur of Greek Mythology
そして,もう一人,忘れてはならない人物の名前が.
アスクレーピオス ASCLEPIUS(古希: Ἀσκληπιός, Asklēpios)
:ギリシア神話の英雄で医術の神.
もっとも有名な出生譚(たん)では,アポロンとコロニスの子.アポロンはテッサリアの王プレギアスの娘コロニスを愛し,1子を身ごもらせた.しかし,コロニスがエラトスの子イスキスと通じたので,アポロンはコロニスを殺し,火葬の薪(たきぎ)の中から腹の子のアスクレピオスを救い出したとされる.
---- 1人で成長したアスクレピオスは,やがてエピダウロスにおいて神として崇拝された.彼は父神アポロンによって怪物ケンタウロス一族のケイロン(ケイローン)に預けられ,医術と薬術を学び名医となった.
さらに女神アテネからは死者を蘇生(そせい)させる力をもつメドゥサの血を得,多くの英雄を生き返らせたが,その能力を恐れたゼウスにより雷で殺された.のちにアエスクラピウスの名で祀(まつ)られたこの医神は,やがてへびつかい座の星に変身した.(日本大百科全書)
なお,杖にヘビの巻きついたモチーフは「アスクレーピオスの杖」(蛇杖)と呼ばれ,医の象徴として世界的に用いられています.