うどんの起源を調べようと思い立って,手にした本は
この文庫版のもとは,同じ著者による「文化麺類学ことはじめ」.こちらは,かなり以前,単行本で購入したことがあり----
ざっと目を通して,ひろい読みしただけで見つからなくなったまま---
改めて学術文庫版を購入.
紹介文は:
そば、うどん、冷麺、ラーメン、スパゲッティ……。これらに当代の即席麺まで加えれば、今や麺文化は世界を覆っているといっても過言ではない。そもそも麺とはいったい何か。麺はいつ頃、どこに生まれ、どのように波及したのか。厖大な文献を渉猟するとともに、精力的に積み重ねた広範なフィールドワークの成果をもとに綴る、世界で初の「文化麺類学」
すばらしい労作なのですが,気楽に読める本とはいえません.1日2日でまとめることはとうてい無理な濃密な内容.
この「麺の文化史」をできるだけ反映したいと思いつつ,まとめられる自信は全くありません----
うどんの起源①
うどんとは
精選版 日本国語大辞典の解説によれば,
う‐どん【饂飩】
〘名〙(「うんどん(温飩)」の変化した語か)
小麦粉に少量の塩と水を加えてこね,薄く伸ばして細く切ったもの.茹でて汁に付けたり,汁と共に煮たりして食べる.
うんどん.きりむぎ.
※親元日記‐寛正六年(1465)一二月二五日「御供衆点心 うとん」
この解説では,四つの事項が示されています.
( 1 ) うどんの製造法
「小麦粉に少量の塩と水を加えてこね,薄く伸ばして細く切ったもの」
( 2 ) うどんの料理法
「茹でて汁に付けたり,汁と共に煮たりして食べる」
( 3 ) 別名/古名
「うんどん」「きりむぎ」,「うんどん(温飩)」の変化した語の可能性.
( 4 ) “うどん”ということばの初出は1456年.ただし“うとん”.
(⇒麺の文化史によれば,嘉元記1352年が初出)
歴史に直接関係している内容は,( 3 ) ( 4 )ですが,
( 1 ) ( 2 )の二つでうどんが定義できる!
うどんの定義
「小麦粉に少量の塩と水を加えてこね,薄く伸ばして細く切ったもの」で「茹でて汁に付けたり,汁と共に煮たりして食べる」
うどんの歴史を考える上でも.大切な事柄ですね.
麺類発祥の地とされる中国.
この地にどのような種類の小麦粉食品があるかを料理法により分類すると下図のようになり---
上記定義に従えば,うどんは,中国語の麺条(ミエンテイアオ)の一つという事になります.(麺の文化史)
なお,中国語と日本語では「餅」「麺」の意味が違うことは要注意事項ですね.
「うどん」という言葉
日本国語事典にあるように
「うどん」という言葉の初出は室町時代で,これが現在のうどんとほぼ同じものであると思われます.
「室町時代になると,餛飩,饂飩という文字で「うどん」「うんどん」「うとん」と読ませる例が現れるが,この頃になると,いまの麺類にあたる食品をさすことにまちがいがない」
うどんらしいことば“饂飩”(温飩)は11世紀に.
『江家次第』(11世紀はじめに書かれた宮中行事の記録)に “饂飩” “索餅(さくべい)”の記事」があり,この“饂飩”が,“うどん”らしい言葉の初出.饂は国字で「うん」と読ませる(饂飩 うんどん).
『麺の文化史』によれば,
「 いつ頃から日本で麺/うどんが食べられるようになったのか」について,確実なことは分かっていない.
世界の中でも,麺に関する歴史的文献資料が多く残っているのは,中国と日本である.それらの資料を引用しながら,我が国の麺の歴史についてふれた本が何冊も刊行されている.ただし,その多くはそばを主題としたものだ.-----
それに対して,そば以前から食べられてきた麺である,小麦粉を原料とするうどんやそうめんの本は少ない.
江戸時代から日本の麺の歴史についてのせんさくがなされ,物知りや学者がさまざまな意見を提出している.それにもかかわらず,日本の麺の歴史におけるかんじんのところで,わからないことがいくつもある.わたしなりに問題を整理してみよう.
①いつ頃から日本で麺が食べられるようになったのか.
②索餅という食品はなんであったか.
③索餅とそうめんはどのような関係にあるのか.
④いつ頃から切り麺が食べられるようになったのか.
⑤ソバを切り麺に加工する技術はいつからはじまったのか.
続く