春の星座,しし座.
古代メソポタミアで獅子の星座絵が描かれ,古代ギリシャでは,ネメアーの獅子とされました.
ネメアーの獅子は,
曾祖父母,高祖父母に奈落タルタロス・大地の母/地母神ガイア,海洋と地震を司るポセイドーン・見るものを石に変える力を持つメドゥーサを持つ,いわば“由緒正しき怪物”.
(系図については,諸説あります.例えば,ネメアーの獅子の父をテューポーンとする説,偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」,もありますが,ヘーシオドス「神統記」に記載がある部分については,これに従いました)
ヘーラクレースによって退治されますが---
ネメアーの獅子の高祖母メドゥーサは,ヘーラクレースと同じくギリシャ神話の英雄の1人ペルセウスによって退治されています.
この英雄ペルセウス.父ゼウスからみればヘーラクレースの異母兄弟.そしてヘーラクレースの母方の系譜では曾祖父ということになります.
ネメアーの獅子が属する怪物の系譜と,ヘーラクレースの英雄の系譜は,代々,争ってきたことになりますね.
この系譜間の争い,何と言っても大きな争いは,奈落タルタロスと大地の母ガイアの息子テューポーンとゼウスの闘い.
これらの闘いについては,後日.
偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」(日本語訳「ギリシャ神話」)によれば,ネメアーの獅子退治は,ヘーラクレースの十二の功業の1番目とされています.
ヘーラクレースは,ゼウスとアルクメーネー(ペルセウスとアンドロメダーの孫に当たります)の子.アルクメーネーの婚約者アムピトリュオーンに姿を変えたゼウスが思いを遂げ,ヘーラクレースが生まれました.
しかし,その結果,ヘーラクレースは生まれたときからゼウスの妻へーラーの憎しみをかい,十二の功業は,へーラーによって与えられた狂気の中,自らの子どもを殺した罪を償うために行った冒険物語.
岩波文庫版,アポロドーロス「ギリシャ神話」(高津春繁訳)より.
(この偽アポロドーロス「ビブリオテーケー」では,ネメアーの獅子は,テューボーンの子とされています.)
第二巻Ⅳ-12
ミニュアース人に対する戦さの後にヘーラーの嫉妬のために気が狂い,メガラーによって得た自分(ヘーラクレース自身)の子供とイーピクレースの二人の子供とを火中に投じた出来事があった.
それゆえに彼(ヘーラクレース)は自分自身に追放の判決を下して,テスピオスによって(罪を)潔(きよ)められて後,デルポイに赴き,どこに居住すべきかを神に問うた.
ピュートーの巫女はその時初めてヘーラクレースと彼を呼んだ.
というのはそれまでアルケイデースと呼ばれていたからである.
彼はティーリュンスに住み,エウリュステウスに十二年間奉仕して,命ぜられる十の仕事(*)を行い,かくして,と巫女は言った,功業が完成した後に,彼は不死となるであろう,と.
(*実際には12の仕事が与えられました)
ヘーラクレースはこれを聞いてティーリュンスに行き,エウリュステウスによって命ぜられたところを行った.
第一に彼はネメアーの獅子の皮を持って来ることを命じた.これは,不死身の獣で,テューボーンから生まれたのである.獅子にむかって行く途中でクレオールナイに来て,日雇人のモロルコスが犠牲を捧げようとした時に,ヘーラクレースは三十日まで待つように.そして狩から無事帰還した場合には救主ゼウスに捧げ,もし彼が死んだその時には死者(ヘーロース)として彼に供えるようにと言った.
ネメアーに来て獅子を探し出し,先ず矢で射た.しかし不死身であることを知って,棍棒を振りかざして迫った.二つの入口のある洞窟に逃げ込んだ時に,彼は一方の入口を築き塞ぎ,他のほうから獣にむかって行き,頸(くび)に手を巻きつけて窒息せしめるまでしっかと持って縊(し)めた.
そして肩に担いでクレオーナイへ運んだ.
モロコスが最後の日に死者として彼に犠牲を供えようとしているのを見出し,救主ゼウスに捧げ,獅子をミュケーナイに持って行った.エウリュステウスは彼の逞(たくま)しさに驚いて以後市にたち入ることを禁じ,門の前でその獲物を示すように命じた.
NEMEAN LION (Leon Nemeios) - Labour of Heracles in Greek Mythology