最も広く親しまれている星座の一つオリオン座.
Star Myths | Theoi Greek Mythology
描かれるのは狩人オーリーオーン.
天空ではおおいぬ座の犬を連れ,うさぎ,おうし,または七人のニンフを追いかけているとされ,また,サソリによって追いかけ続けられているとされてきました.
オーリーオーンの死
このオーリーオーンの死については,更に様々な物語が伝えられています.
the Theoi projectでは,四つの物語があるとしています.
ORION - Boeotian Giant of Greek Mythology
そのうちの二つはオーリーオーンを女神に愛される美貌の狩人として描いていますが,
後の二つの物語では,粗野で傲慢な男.
オデュセウスを連れ戻しにきたゼウスの使いヘルメースに対し,海の女神カリュプソーは次のように伝えます.
「あなた方神々は,なんと残酷な方々なのでしょう.あなた方ほど嫉み深い者は,他にはおりますまい.女神が人間の男に抱かれるのを快く思われない.
それも隠し立てをしてではない.明らさまに自分の夫に選んだ場合でもです.
以前,指ばら色の暁の女神(エーオース)が,オリオンをわがものにした時もそうでした.
安楽にお暮らしのあなた方神々は,いつまでもそれを許そうとなさらず,その果ては黄金の座にいます純潔の女神アルテミスが,オルテギュエの島で彼を襲い,優しい矢で命を奪ってしまわれた」ホメロス (著), 松平 千秋 (翻訳) ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫)
オデュセウスは,紀元前8世紀の終わりに表されたとされています.
これより約8000年以上後にまとめられたとされる偽アポロドーロス“ビブリオテーケー”は,オーリーオーンを粗野な男として描き,エーオースの恋もアプロディーテーの嫉妬から生まれたとしています.
そして,オーリーオーンの死は円盤投げの申し込みという理不尽な要求,もしくは乙女を暴力によって犯したため,アルテミスに射殺されたと.
ホメーロスの著作から長い年月を経る間に,オーリーオーンの評価が変わっていったようです.
女神に愛される者を嫉むのは,神々だけではなく,我々一般の人間に共通した醜い心なのかな,と思わされます.
アポロドーロス“ギリシャ神話”高津春繁訳,岩波文庫 (偽アポロドーロス“ビブリオテーケー”)
デーロスにおいてアルテミスはオーリーオーンを殺した.人は彼が大地より生れ,その身体は巨大であったと言っているが,ペレキューデースは彼をポセイドーンとエウリュアレーの子であると言う.
ポセイドーンは彼に海上を闊歩する力を授けた.彼は(先ず)ヘーラーが美しさを競ったという廉(かど)で,地獄に投げ込んだシーデーを妻とした.
その後キオスへ行ってオイノピオーンの娘メロペーに求婚した.しかし,オイノピオーンは彼を酔わせ,眠っている間に彼を盲目とし,海辺に棄てた.しかし彼は(ヘーパイストスの)鍛冶場に行き,一人の子供を奪って肩に乗せ,太陽の昇る方向に導くように命じた.そこに到着して太陽の光線によって治癒せられて視力を回復し,大至急でオイノピオーンにむかって道を急いだ.
しかし,ポセイドーンが彼のためにヘーパイストスによって造られた家を地下に用意せしめた.
曙(エーオース)がオーリーオーンに恋して彼を掠(さら)い,デーロスに連れて来た.というのは,曙(エーオース)がアレースと床をともにしたというので,アプロディーテーが彼女を絶間なく恋に身を焼くようにしたからである.
オーリーオーンは,一部の人々はアルテミスに円盤投の競技を挑んだために滅ぼされたと言い,またある人々はヒュペルボレイア人の所より来ていた乙女の一人オーピスを暴力を以て(もって)犯したためにアルテミスに射られたのであると言っている.