「かれら,彼女らは子どもをつくらない,つまり生産性がない」 自民党の杉田水脈(みお)衆議院議員が,月刊誌への寄稿でLGBT,性的マイノリティーの人たちについて述べた言葉です. その波紋は,障害のある人や難病患者にまで広がっています.「最初,杉田議員の書かれた文章を読みましたときに,まず真っ先に,ひらめいたのは,『あっ,これ,やまゆり園の植松と根っこは同じだな』と」 NHK ニュースウオッチ9 8月3日 

NHK ニュースウオッチ9

8月3日

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ニュースウオッチ9 - NHK

 

「かれら,彼女らは子どもをつくらない,つまり生産性がない」

自民党杉田水脈(みお)衆議院議員が,月刊誌への寄稿でLGBT,性的マイノリティーの人たちについて述べた言葉です.

その波紋は,障害のある人や難病患者にまで広がっています.

おととし,相模原市で起きた障害者殺傷事件の被告が,「生産性のない人間は生きる価値がない」などという趣旨の発言をしているからです.

事件の後つくられた,NHKの特設サイトには,今,杉田議員を批判する投稿が相次いでいます.

政治家に限らず,世の中の多数が,マイノリティーに対する偏見が根強いと思う.

傲慢で,危険だと思う.

 

人を生産性で区別する考え.私たちは当事者の声に耳を傾けました.

 

(映画の言葉「死のうかなと思いました」)

先週公開された映画,性別がない.男性でも女性でもない中性として生きる漫画家(エッセイ漫画家 新井祥)の内面に迫ったドキュメンタリーです.

男性パートナーとの暮らしぶりを描きながら,「普通とは何か?」を問いかけています.

作品は反響を呼び,映画館には多くの人が詰めかけています.

映画を見た人

「男性とか女性とか,中性とかも関係なく,生き方にすごく心打たれました」

「自分の気持ちをすり減らしながら,なんとか生きている人が,実は,みえないけれど,けっこういっぱいいるんだな,ちょっと『仲間いる.よかった』という感じがしました」

 

映画の監督渡辺正悟(しょうご)さんです.

作品を通じて,多様な性のあり方を知ってほしいと言います.

「知らないっと言うことが,一番,差別とか偏見を生むっていうことだと思うんですよ.こういう生き方がある,こういう生き方をしている人を,自分は,私は,理解できるよ.少なくとも町中で会ったりとか,自分たちの共同体の中で,そういう人がいたら,そういう人たちに対して,『差別の目線とか,仕打ちをするな』っていうことを訴えたいですね」

 

LGBTを巡っては,近年,一部自治体で同性カップルをパートナーとして認めるなど,差別の解消や多様性の尊重に向けた動きがすすんでいます.

 

こうした中での杉田議員の言葉,

“彼ら,彼女らは子どもを作らない.つまり「生産性がない」.そこに税金を投入することが,果たしていいのか.”

自民党は,「関係者への配慮を欠いた表現があった」などとして,今後,十分に注意するよう,杉田氏を指導しました.

杉田氏は,NHKの取材に対し,「真摯に受け止め,今後,研鑽に努めていきたい」とコメントしましたが,考え自体の撤回や謝罪はしていません.

 

杉田氏の言葉に対しては,月刊誌が発表された直後から,「人権を踏みにじるものだ」と批判があがっています.

先月27日には,当事者団体などが,自民党本部の前で抗議集会を開き,主催者の発表で,およそ5000人が参加しました.

抗議集会参加者「杉田さんの発言,ホントにひどいです」「みんな怒ってんだよ.(そうだ.)ここに来てない人もみんな怒ってる(そうだ.)」

 

杉田氏の言葉を,性的マイノリティーの当事者は,どう受け止めたのか.

 

長村さと子さんです.レズビアンで,パートナーのまみこさんとは二年前に結婚式を挙げました.

長村さん

「怒りって言うより,悲しいかな.

『生産性で人間を語ること自体が,間違っている』というか,私たちが,国に利益をもたらすか,みたらさないかということを基準にされて,税金の投入をすべきかどうなのか,論じられる.

そもそも公的な支援の根拠を生産性に求めるのがどうなんだろうな.

というのは,すごく思いますよね」

長村さんは,「子どもを持ちたい」と考え,同じような願いを持つ人たちの支援などを行っている団体の代表も務めています.

長村さん「生むとか育てるとか,みんな,自分の人生で選択して責任とって生きてるから,その言葉が,どういう人たちに刺さってしまったり,傷つけたりするか,っていうのを,分かっていて使ってないのかな」

 

人を「生産性」で区別する考え.

その波紋は,LGBT以外の人にも広がっています.

おととし,19人が殺害された障害者殺傷事件の被告は,「生産性のない人間は生きる価値がない」などという趣旨の発言をしています.

こうした中,障害のある当事者やその家族からも,反発の声が上がっていて,障害者殺傷事件のNHKの特設サイトには,批判する投稿が相次いでいます.

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https://www.nhk.or.jp/d-navi/19inochi/

長野県30代男性会社員

「政治家に限らず,世の中の多数が,マイノリティーに対する偏見が根強いと思います.植松容疑者が特別例外ではなく,身近なところにそういう差別思想があるのかもしれません」

(原文 寄せられたご意見 | NHKオンライン

健常者でも障がい者でも、命の重さに変わりはありません。第2の植松を生み出さない世の中にします。

自民党の議員がLGBTの人間に生産性がないと言って問題になっていますが、政治家に限らず世の中の多数がマイノリティーに対する偏見が根強いと思います。

植松容疑者が特別、例外ではなく、身近な所にそういう差別思想があるのかもしれません。旧優生保護法における不妊手術が表面化していますが、単純に政治のせいにするのではなく、一人一人が当事者意識を持たなくては、また同じ悲劇が繰り返されます。)

 

障害をもつ娘をもつ母親 千葉県40代女性

自分の考える基準がすべて正しく,その枠組みからはみ出た人は切り捨てるべき,という考えは,傲慢で危険だと思う.

(原文 寄せられたご意見 | NHKオンライン

◎亡くなった方たちへのメッセージ

私の娘も重度知的障害があり、一人っ子であることから、いずれは家族以外の人に支えられて生きていくことになります。この事件は他人事とは思えず、ただただ被害者の方々、ご家族の皆様の痛みに思いをいたすことしかできません。せめてこれからの日々に少しでも幸あれと祈るのみです。

◎今回の事件についてのご意見

私は容疑者や、その考えに賛同する、もしくは容疑者の考えに一理あると考える人たちに問いたい。
「あなたの大事な人が重度障害者になった時、あなたはその人に『世の中に不幸しか産み出さない存在になったから死ななければならない』と言えますか?」重度障害者には生きる価値が無いと容疑者は言う。けれども、生まれる前から様々な問題を抱え、生きて生まれることが出来るかどうかとまで言われ た娘が、今、私たち家族、友人、クラスメイト、先生たち、支援してくれる人々に囲まれて笑っているという事実が、「生きていること。また、その笑顔」そのものに価値があると教えてくれていると思う。自分の大事な人が笑顔でいてくれること、それ以上の幸せは無いと私は思う。大事な人のそのまた大事な人の笑顔の輪がどこまでも世界中に広がっていく、それを豊かな社会と呼ぶのではないだろうか。
最近、人の価値は生産性があるかどうかだとの趣旨の発言をした政治家がいるが、自分の考える規準がすべて正しく、その枠組みからはみ出た人は切り捨てるべきとの考えは傲慢で危険だと思う。一人の人間が出来ることはそれほど多くはないと思う。「生産性」云々する人は自分自身の価値をどれ程高く見積もっているのだろう。得意不得意、長所短所、一人として同じ人はいないはず。「皆違って皆良い」金子みすゞさんの優しい視点をすべての人が共有できる社会が実現することを心から願います。)

 

人を生産性で区別する考え,障害のある人や難病患者たちも懸念しています.

 

難病患者の支援団体で事務局長をつとめる川口有美子さんです.

母親が難病を抱えたいた川口さん.杉田氏の発言は,難病患者や障害のある人にも向けられたものだと受け止めています.

川口さん「最初,杉田議員の書かれた文章を読みましたときに,まず真っ先に,ひらめいたのは,『あっ,これ,やまゆり園の植松と根っこは同じだな』と.『日本ももしかしたら,医療費とか,介護費用を削減するような方向に,この次はくるな』と.『LGBTの次は,重度の障害の人たちに話が来るんじゃないか』と思った」

 

この団体の職員で,筋肉の難病に苦しんでいる女性です.

「『みんな,生きているし,意味がある』と私は思っています.(“生産性がない”と)明言されてしまうと,ショックだし,存在価値みたいなものを,自分で追い詰めてしまうかもしれないですね」

 

生産性で,人の価値を判断するような風潮にあらがおうと,川口さんらは,障害者の団体などとともに,抗議の意志を示すことにしています.

川口さん「なんか,こういう考え方の政治家が増えてしまうと,真に困っている人たちに,きちんとした倫理的な政策が作れなくなるとか,できなくなるんじゃないかな,と思って危惧しています.ただ見ていただけだったんですけど,今後は,やはり声を上げていく必要があるじゃないかな,と思ってます」

 

浅はかと言える言葉に,反発や嫌悪感を覚えた人は少なくないのではないでしょうか.

人,一人一人の価値を数字ではかるような考え方,受け入れることはできません.