結婚,母性,貞操をつかさどる女神ヘーラー
ヘーラーの持つザクロ.
女性の懐妊する力(PLANTS & FLOWERS OF GREEK MYTH 2)や多産,豊穣(ザクロ - Wikipedia)を象徴する果実.ギリシャ神話でのヘーラーの役割を象徴したものと考えるのが一般的です.
しかし,ヘーラーを祀ったパエストゥム遺跡の説明では,
ザクロは「一年の農業の終了のシンボル a symbol of the end of the agricultural year」.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/03/05/015601
なぜこの様なシンボルとしてのザクロをヘーラーが持っているのか?
この遺跡が紀元前600〜400年と既にギリシャにポリスが成立した時期であるのが,やや引っかかりますが---
「ヘーラーはこの地域の偉大な女神だった」ことで,説明がつきそうです.
ただ,その内容をきちんとまとめることができませんでした.
今日は,以下の引用のみにとどめさせてもらいます.すみません.
▽日本語版ウィキペディア
では,ギリシャ神話でのヘーラーの記載の最後に,次のような文を付け加えています.
ヘーラーはサモス島で誕生したと考えられており,サモス島は古くからヘーラー信仰の中心地となっていた.
元来は,アルゴス,ミュケーナイ,スパルタ等のペロポネーソス半島一帯に確固たる宗教的基盤を持っており,
かつてアカイア人に信仰された地母神であったとされ,北方からの征服者との和合をゼウスとの結婚で象徴させたと考えられる[フェリックス・ギラン『ギリシア神話』].
▽英語版ウィキペディアには
「ヘーラーのギリシャの初期の宗教での重要性は確固としたものになっている」(“early importance in Greek religion is firmly established”)
「この様なヘーラー信仰が“母権性社会”と結びついたものとする,とても多くの研究がなされている」
とありました.
この“ヘーラー信仰が“母権性社会”と結びついたとする説” は異論も多いらしいのですが,とても魅力的.
研究論文が多いのもよく分かります.
例えば,
▽驚異的な量の古代ギリシャの文献をアップしている日本語のサイト(敬服します!)http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/
にある『失われた女神たちの復権』 ("The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets") のヘーラー像を一部抜粋させて頂くと,
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/hera.html
ヘーラーの前身とされた女神にレアーがいたが,この古代ギリシア以前の太母は,ギリシア神話に取り入れられて,ヘーラーの母親になった.
ヘーラーもレアーもエーゲ文明初期の太母神の形姿であり,両者とも男神たちが登場する以前から存在していた.ヘーラーの名は,ヒエラ(「聖なる者」)と語源が同じだったとも思われる.
更にそのほかにも,ヘーラーと語源を同じくする同格の女神が,広範囲にわたって数多く分布していた.
ヘーラーは,オリュムポスの神々をも含めて,「万神の母」であり,永遠の生命を付与する神餐を彼らに与えた.
古代ギリシアの著作家たちは,ヘーラーをゼウスに従属する女神と位置づけたが,実際は彼女の方がはるか以前からの存在であり,不本意ながらもゼウスと結婚したのだった.神話では,両者の間に争いが絶えなかったが,これは,昔行なわれた母権制信奉者と父権制信奉者との衝突を反映していた.
女神ヘーラーに対する信仰は,古代においては,異教を信奉するヨーロッパ全域に及んでおり,したがって,大陸全体が,ヘーラーの化身の1つである女神エウローペーにちなんで命名されたのだった.サクソン人のヘーラー崇拝はへレスブルク(「へラの山」)で行われたが,そこにはヘルメセウルと呼ばれる男根をかたどった「世界柱」が,大地女神の女陰の像にはめ込まれて立っていた.
エーゲ文明初期の太母神の形姿であるヘーラー.