に引き続き,鎌倉おんめさま(大巧寺 だいぎょうじ)を散策して出会った花々から.
おんめさまの秋の花々2.(付 「蒲」の話題3題 因幡の白ウサギ,蒲鉾,蒲焼き)
昨日も書いたように,おんめさまの散策路には,華やかな花や,特に珍しい植栽があるわけではありません.しかし,何気なく目をやるとほっとするような花々が,手入れの行き届いた姿を見せてくれます.
わが家にもある秋明菊.ムラサキシキブについで多く見られるこの小径の秋の植物.ジャパニーズアネモネですね.
散策路からやや離れた庫裏の横には,ムクゲが最後の花をつけていました.足下に目を移すと,ホトトギス.
「花びらにある紫色の斑紋が,ホトトギス(小鳥)の胸の斑紋と似ていることから付けられたとされている.ホトトギス(小鳥)のは横縞模様であるが,野草の斑紋には横縞模様から大小の斑点まで様々なものがある」 https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/hoto/hototo.htm
初めて見た時には,「余りかわいくない」と思いましたが,この様な名前の由来や「ほととぎす」に寄せる昔の人々の思いを知ると,愛おしい気持ちで見ることができます.
そして,初めて見る花が,昨日の金糸梅の他にもう一種.
ハギだとばかり思ってネームプレートを見ると,「イワフジ」.
検索しても,記事は限られて--.しかし,別名とあったニワフジでは多くの記事がみつかりました.
自生するのは中部地方以西とありましたが,今では自生は稀とのこと.ただし,「庭には広く植えられる」とありました.ニワフジとは - コトバンク ニワフジ - Wikipedia
関東の庭ではやや珍しいと考えて良いのでしょうか?
ハギやフジと同じマメ科マメ亜科ですが,属はどちらとも違う「コマツナギ属 Indigofera」
植えられている方の投稿画像をみると,ハギやフジほど,大きくはならないようです.庭に植えるのには手頃.
最後は,普通は湿地でみかけるガマ(蒲).
水を張ったプランターに植えられてかなり大きくなり,立派な穂をつけていました.ガマ,コガマ,ヒメガマなどがありますが,これはおそらくコガマ.
この様な形で庭でも楽しめるんですね.イネ科の蒲の「バケツイネ」様栽培ということですね.
ガマの話題1. 因幡の白ウサギ
「大黒様」の歌は今でも歌われているのでしょうか?
大きなふくろを かたにかけ
大黒さまが 来かかると ここにいなばの 白うさぎ
皮をむかれて あかはだか
大黒さまは あわれがり
「きれいな水に 身を洗い がまのほわたに くるまれ」と
よくよくおしえて やりました
http://www.worldfolksong.com/songbook/japan/daikokusama.htm
この歌は,“『古事記』中の大國主神の文のうち稻羽之素菟(稲羽の素兎)”をもとに作られたものですが,(大國主神と大黒様の関係については上記のサイトで)
生薬の観点からは矛盾があるようで---
“ 雄花序に形成される花粉は「蒲黄(ほおう)」と呼ばれ,イソラムネチン配糖体(フラボノイド)などを含み,止血,収れんなどの作用があります.
古事記の「因幡の白うさぎ」に登場する「ガマの穂綿」は花粉ではなく成熟した雌花序が綿状になったもので、穂綿には薬効がありません.”
ガマの話題2. 「蒲鉾」の語源: 蒲鉾はガマの穂の形に似ていたから
かまぼこという名の由来を紐解いてみると、
室町時代の文献「宗五大双紙(そうこおうぞうし)」(伊勢貞頼入道宗五著/大永8年:1528年)に,「かまぼこはなまず本なり,蒲の穂を似せたるものなり...」の記述があり,魚類のすり身を竹の棒に巻きつけて炭火であぶり焼きしたもので,その形状は日本最古のかまぼこの図を見ても分かるように,今の竹輪(ちくわ)に近かったようです.
参考:ちくわ手作り体験 | とうふちくわの里 ちむら 基礎:練りものができるまで 【練りもの】教室 紀文アカデミー 紀文食品
蒲焼 - Wikipedia の記載では次の通り.
「蒲焼」の語源については諸説ある.
蒲の穂に由来するという説: ウナギを割いて骨を取り除き、串を打つ調理方法が確立する以前の,串刺しする調理法の完成した状態が蒲の穂に似ていたからとする説.
『大草家料理書』では丸のまま縦に串刺しにして醤油と酒で調味し焼いて調理されていたことが記されている(なお、『大草家料理書』の成立時期について『日本料理由来事典』及び『衣食住語源辞典』では江戸時代初期とされているのに対し、『図説江戸料理事典』では『大草家料理書』は室町時代の書であるとしている).
『大言海』では形状が蒲の穂に似ていたことから付いた「蒲鉾焼」の略形であるとしており,「がま焼」あるいは「かま焼」の転訛であるとする説もある.
松下幸子著『図説江戸料理事典』柏書房 p.161 1996年,『丸善食品総合辞典』丸善 p.225 1998年,
『衣食住語源辞典』東京堂出版 p.174 1996年,川上行蔵監修『日本料理由来事典(上)』同朋舎出版 p.278 1990年(諸説ある中の一説として紹介).本山荻舟『飲食事典』平凡社、昭和33年(1958年)12月25日発行