カラスが,また,柿を!
防ぐ手立ては,わが家では見つかりません.
プロの方々でも難しいようで---
カラスは,農作物へ害を及ぼす鳥としては断然トップ.
農林水産省/全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成26年度)
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_zyokyo2/h26/pdf/160122-b.pdf
果樹の被害に限ってもカラスによる被害は第一位です.
さらに飼料作物(トウモロコシなどでしょうか?),野菜も被害額は同じぐらい.イネにまでカラスが被害は及ぼしている!
http://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_zyokyo2/h26/pdf/160122-c.pdf
何でも食べるカラス.
そして賢いカラス.
「果物に傷をつけて熟すのを促す」なんていう行動までするそうです.
「収穫前より、果実に加害して、傷をつけて過熟を早め、その後軟化したら再飛来して加害しているのが観察された。一方、多くはないものの未熟の青い柿を傷つける行為がみられた。それを、注意深く観察すると、傷をつけることにより果実の軟化と熟成様現象を促進させるような行動と考えられた」
(カラスかヒヨドリかは書いてありませんでしたが,おそらくカラス)
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19208029/19208029seika.pdf
これでは太刀打ちできません.
農家の方々にとっては死活問題ですが,対策はなかなか難しいようです.(もちろん,直接遮断してしまう防鳥網は有効ですが,手間・コストがかかります.)
以下,もう言い古されていることですが,
「害対策がなぜ難しいか」「鳥害・鳥に関してよくある誤解」「カラスの視覚と聴覚」について.
(ただし,今日も時間がなくて整理し切れていません.記載をほぼそのまま引用)
鳥害対策がなぜ難しいか.
中央農業研究センター | 農研機構第2部 鳥害対策 でまとめたものをそのまま引用します.
http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/i_center/bird/070604_kensyu_handout.pdf
◆鳥は賢い
→ちょっとした変化に警戒するが,単なる脅しはすぐに見抜き,慣れてしまう.
◆鳥はしつこい
→毎日餌を必要とする.例えばスズメ大の小鳥では1日食べなければ餓死する.従って,餌場への執着は強い.
◆鳥は行動範囲が広い
→10kmくらいは簡単に移動する.群れで生活し,安全かどうか,餌があるかどうかを他の鳥の様子から学習する.
◆鳥の感覚は人間に近い
→光やフェロモンといった昆虫で有効な手段は使えず,薬物感受性も人に近いため,人に害のない対策の開発が難しい.
鳥害・鳥に関してよくある誤解
http://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/i_center/bird/070604_kensyu_handout.pdf
上と同じ出典です.10年前のもので,視覚・聴覚に関しては異なった結果が明らかになっていますが,他は今でも同じようです.
◆本能的にいやがる刺激を使えば鳥は慣れない
→タカやヘビに対する忌避反応はたぶん遺伝的ないしは本能的だが,偽物はやがて見破る.
◆鳥は人よりも目や耳がいい
→普通の鳥は視覚も聴覚もせいぜい人と同程度.(ここは変わっています.カラスについていえば:視覚は,人間より優れている.聴覚は劣っている.後述)
◆鳥が嫌う色がある
→鳥は色を識別できるが,「本能的に」嫌う色はない.(後述)
◆鳥は磁力で方位を決めているから,磁石で方向感覚を失う
→ハトや小鳥などは地磁気で方位がわかるが,視覚や太陽コンパスも併用しているので,これらが使える限り方向定位や行動には影響しない.
◆鳥にはなわばりがあって自由に飛び回れない
→農業被害をもたらす鳥の多くは,広い範囲を飛び回り,餌の多い場所に集まる.
◆山の環境が悪くなって鳥害が増えている
→農業害鳥のほとんどはもともと里の鳥.個体数や鳥害が増えているとすれば,むしろ農業そのものの変化が原因と考えられる.
◆---を設置したら被害が減ったので有効な防鳥対策である
→どんな防鳥対策でも,鳥にとっては「怪しい」ため,一時的には他の場所や何も対策をしていない圃場に行く.時間がたてば戻ってくることを考慮して評価する.
「本能的に」嫌う色はない
カラスに関していえば,
「黄色い色のネットで覆えば,ゴミ被害を減らすことができる」と信じていませんか?
実は私はそう思っていました.
しかし,これは,一時よく見かけた,黄色いゴミ袋から来る誤解のようです.
以下,「カラスの教科書 松原始 講談社文庫」から引用します.
(気楽に読めるかなり面白い本でした.ネット上でも話題になっていたようですね.おすすめ)
カラスの教科書の通販/松原始 講談社文庫 - 紙の本:honto本の通販ストア
「このゴミ袋は半透明で薄い黄色だが,鳥類の目には不透明な黄色に見えることを利用していると,伺ったことがある.鳥の目には,原色を補強する機能があり,人間には薄黄色でも鳥には非常に鮮やかな黄色に見えるのだ.
つまり,カラスにとってはどぎつい黄色で,中は見えない袋なのである」
「ホームセンターで.『カラスの嫌いな黄色いネット』という商品を見たことがある.別に黄色が嫌いなわけではない上,ネットでは中身が見えてしまうので,完全に無意味なはずだ(ただし,この商品は同時に『くちばしを差し込めない細かい編み目』『チェーン編み込みで持ち上げ防止機能』もうたっており,むしろこちらに立派な意味がある)」
カラスの視覚と聴覚
動物の視覚や聴覚を正確に測定することは,難しい.当然ですよね.人間なら「見えた」「聞こえた」ということで測定できますが--.
ただ,解剖学的?な研究から予想はできます.
例えば
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19208029/19208029seika.pdf
によれば,
嗅覚:
脳の嗅覚を司る部分が小さい
⇒「嗅覚は発達していない」
視覚:
・網膜の神経節細胞は300万個を超え,「高密度域」も2箇所(ヒト網膜には、おおよそ120万から150万個の神経節細胞が存在するとされる).
・4種類の色を見分けるタンパク質(錐体オプシン)があり、その内のひとつは紫外線に感受性を持つ.学習行動からも短波長に対して最も高い感受性を持っている事が分かる.
⇒「視覚が極めて発達している」
そして,熟成段階の異なる果物をカラスに与えたところ,果実の色(果皮の光反射)を見て,順番に食べることが実験からも明らかになったそうです.