「大徳寺納豆は,以前,取材で頂いて『いや私の知っている納豆じゃない』」⇒「でも,よく考えたら,スゴイことですよね.一休禅師がお伝えになったことが、500年以上も時を経て,私たちの口に入ってくる,これ,スゴイことですね」「イメージが全然変わりました.一休さんが日本にわざわざ伝えようととしてもってこられた納豆の,その意味が,分かりましたね」女優の羽田美智子さん そして番組終了時の映像:おかゆの上に大徳寺納豆が二粒.その美味しそうなこと!NHK「一休禅師も驚く?大徳寺納豆グルメ」 

NHKEテレ“趣味どきっ!三都・門前ぐるめぐり”

その第二回は 「一休禅師も驚く?大徳寺納豆グルメ」

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火曜放送シリーズ - 趣味どきっ! - NHK

 

「NHKBSプレミアム井川遥 驚きのみそ汁 一杯の幸せな旅」,お味噌汁(3)  現在の味噌のルーツ?大徳寺納豆- yachikusakusaki's blog

では,

味噌は寺院で独自に発展してきたこと,そして,

大徳寺納豆は味噌のルーツの面影をそのまま残している「豆味噌」として紹介

 

今回は

「一休禅師により伝えられてきた大徳寺門前の名物」としての側面を紹介.

 

番組ウェブサイトでは

「実は大徳寺納豆を作ったのは、型破りな禅僧として知られる一休さん。そこには庶民への熱い愛が.そして門前には今納豆を使った新グルメが続々誕生中」

 

以下冒頭を再録,そして番組の概要 +α です.

 

古都.日本の古き良き伝統を今に伝える町.

そこには人々が心のよりどころにしてきたお寺や神社があります.そして,人が集まる場所には長年愛され続けてきた美味しい名物が.

さあ,「門前ぐるめぐり」でおなかも心も満たしましょう.

 

多くのお寺や神社が集まる町,京都.1200年の古都には歴史を物語る名物がいっぱいです.中でも今回の名物は,ちょっと強烈.その名も「大徳寺納豆」.500年以上前から京都に伝わるスーパーフードです.「うーん」お味もなかなか強烈なようですが.

「作り方が一休さんを通じて世に広まった.えっ?あのアニメの? 「一休さ〜ん」ん?

型破りな僧侶だった一休さんの意思を継いで,門前では挑戦心あふれるグルメが生まれています.「やっぱり一休さんですから,何でもあり」

一休禅師も驚く?大徳寺納豆グルメ.

 

今回名物の旅をするのは女優の羽田美智子さん.

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レプロ マネジメント5部 (@lespros_sec5) | Twitter

糸引き納豆の産地,茨城出身ということですが.今回の名物「大徳寺納豆」の印象は?

羽田さん大徳寺納豆は,以前,取材で頂いて.黒々しい---私の納豆という世界からは,およそかけ離れたものが出てきて.頂いたら,なんか,味噌の塊のような.すごくしょっぱくて.『いや私の知っている納豆じゃない』と思って.その時は拒否反応があったんですけども.でも代々京都で愛され続けてきたものだから,そのルーツとか人気の秘訣があるはずなんですよね」

そして案内してくれるのは郷土史家の鳥井光広さん.京都の歴史研究の傍ら,地元人によるディープな観光ツァーを行っています.

「羽田さんは大徳寺納豆が苦手らしいのですが?」

鳥井さん「変えられると思います.今回の納豆は糸引き納豆とは違いますんで.面白い納豆ですんで.今日の話し聞いてもらって,最後には好きで帰ってもらえると思いますね」

 

京都市北区にある大徳寺臨済宗大徳寺派大本山として,洛北を代表する寺院です.

羽田さん「ここからが門前という形に---.今ほんとに『大徳寺名物大徳寺納豆』.もうほんとうに大徳寺納豆,納豆というお店が並んでいるんですけど」

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http://photonorichan.kyo2.jp/e434421.html

 

羽田さん「これ,味っていうのは,お店一軒一軒違うんですか?」

鳥井さん「作り方によっては違うと思いますね.塩けとか塩分濃度も違いますし.樽にいる菌も違いますんで.そこら辺がいろいろ----.お家お家の味が出てくるという」

羽田さん「へえー.ぬか漬けみたいな.」

鳥井さん「そうですそうです」

羽田さん「その人によって違う菌が出るっていう--.へー」

鳥井さん「そろそろ老舗と言われる所につくんですけど」

やって来たのは大徳寺納豆の老舗中の老舗「大徳寺一久」.対応したのは女将の津田紘子さん.

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『京都お菓子巡り』 [今出川・北大路・北野]のブログ・旅行記 by らぼさん 大徳寺納豆でおなじみの大徳寺一久

出された大徳寺納豆を前にして

「口に入れる勇気がなかなか---」という羽田さん.「からいぞからいぞ,と思って」と勧められ,やっと口にして曰く「強烈に酸っぱい梅干しいただいたような」.

大徳寺から門前に大徳寺納豆の製法が伝わったのは室町時代のこと,当時大徳寺の住職だった一休宗純(1394〜1481)がその作り方を教えたのです.

羽田さん「でも,よく考えたら,スゴイことですよね.一休禅師がお伝えになったことが、500年以上も時を経て,私たちの口に入ってくる,これ,スゴイことですね」

 

大徳寺納豆は,大徳寺の中でも作られていました.

羽田さんは大徳寺真珠庵に向かいます.この真珠庵は27代住職山田宗正(やまだそうしょう)さんによれば「今風に言えば一休記念館」とのこと.

一休さんのお弟子がふすま絵を描き,庭を造り--,一休ファミリーによる手作りのお寺.

一休さんの教えについては

一休さん自身,あまり教えを説いたらアカンと.まあ,一休さんは良いけれど,一休さんの真似をするとろくなことにならないという--」「全て,あなたならどうする?なんですよ.ギリギリの個というか,ほんとうのとことんアイデンティティーはどうだ,というところが大事であって,だから,話すこともない.私の話を聞いても何の足しにもならない.邪魔になるだけ」

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2012 秋 大徳寺 真珠庵 特別公開の案内 - Amadeusの「京都のおすすめ」 ブログ版(観光)

(普段は拝観できませんが時折特別拝観ができるとのこと.茶祖村田珠光の墓,方丈東庭・南庭,長谷川等伯屏風絵などが見どころ.

また,番組中では院内の「真珠庵」の額の字を「一休さんの筆跡を彫り込んだもの」と紹介していました.庵はくさかんむりで書かれており,草葺きの小屋の意味と墓守の小屋の意味があるとのこと)

 

番組テキストの解説では--

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アマゾンイメージ

 

宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)禅師が正和(しょうわ)4(1315)年,洛北に小堂をひらいたのが大徳寺の始まりと言われます.花園(はなぞの)上皇や後醍醐(ごだいご)天皇から厚遇されて栄えましたが,後に応仁(おうにん)の乱で焼失しています.これを復興したのが,晩年の一休宗純(いっきゅうそうじゅん)禅師でした.

一休さんの一般の信者さん,いわゆる俗弟子に,堺の商人で尾和宗臨(おわそうりん)という方がいました.貿易で財をなした人物で,この宗臨さんが大徳寺の復興に全財産をつぎ込んで,一休さんを支援してくれたんですね」

と語るのは,大徳寺内の一休さんを開祖とする塔頭(たっちゅう)「真珠庵」の住職,山田宗正(やまだ・そうしょう)さん.

「納豆の製法も,宗臨さんが明(みん)から持ち帰ってきたようです.この時代は戦乱に明け暮れ,疫病や飢饉(ききん)とたいへんな時代でしたから,今のようにお酒のつまみにいい,なんて言っているどころではなくて,救荒食だったと思います.大豆の良質なたんぱく質と塩と生きた納豆菌とで栄養価も高いし,発酵食品で体によくて日もちもする.真珠庵の前任住職であるわたしの師匠も,外国に出かけるときには必ず持って行って,薬代わりに食べていました」

一休さんも,これは人々のためになる!と,普及に努めたのではないかと山田住職は推測されています.

 

番組では,唐納豆(真珠庵では大徳寺納豆をこの様に呼ぶとのこと)を天日乾燥している場面の放映がありましたが---

 

昨年,東京国立博物館で開催された「禅 心をかたちに」展を紹介したウェブサイト:

zen.exhn.jp

ここに,山田住職が「唐納豆」を作っている一連の写真が公開されていました.お借りしてここでも紹介させてもらいます.

 

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1. 北海道産の大豆1斗を(2升ずつ5つのバケツに分けて)井戸水で何度も良く洗う.洗った大豆は鉄釜に入れて、井戸水に浸して一晩置く。大徳寺は京都の地下水脈における北の要衝で、雑みのない地下水がおいしさの秘密という.

2. 朝5時から、鉄釜に薪をくべながらかまどで炊く。かまどは40数年前に山田和尚が弟弟子とともに作成したもの.

3. 柄杓で1杓ずつ、吹きこぼれそうになるたびに水をさして炊いていくとやがて吹きこぼれなくなる.

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4. おき火でことこと炊き、蓋をして蒸らす(炊き2時間半、蒸らし1時間、合計3.5時間くらいのイメージ)

5. ざるで大豆と煮汁にわけて、大豆は水気を切り、熱を取る.

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6. 大豆にハッタイ粉(麦こがし)をまぶして舟に広げ、室(むろ)へ入れて自然発酵させる(4~5日間)

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7. 6の煮汁約45リットル(この煮汁を“アメ”と呼ぶ。甘味やうまみ、ミネラル感が増すという)に2升8合(5kg弱)の塩(真珠庵はフランスのゲラント塩を主に使用。沖縄やイタリア産の塩を使うこともある)を入れ、これを沸騰させ、冷まして桶に入れる.

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8. 6の発酵した大豆をへらで舟からこそげ落とし、桶に加えて7のアメ塩水と混ぜ合わせる。これを、最初のうちは毎日30分おきに(1日につき約20回)、1ヶ月半くらい経ったのちは1日数回のペースでかき混ぜ続け、2ヶ月半ほどかけて自然乾燥させる.

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9. 乾燥すると固まってくる。2ヶ月ほどして八丁味噌ぐらいの固さになったらおはぎ大にまとめて天日干しして、さらに乾燥、数日後にはそれを一粒ずつ手で分けて天日干ししてできあがり.

番組でも紹介していましたが

真珠庵大徳寺納豆はフランスのゲラント塩を主に使用とは!

 

 

大徳寺門前では,一休さんがあっと驚くようなオリジナリティーあふれる納豆グルメが生まれています.

CAFE DU MON (カフェ ドゥ モン)を訪ねた羽田さん.オーナーシェフ中川朋子さんに勧められて

大徳寺納豆カヌレ」を頂きます.

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CAFE DU MON

羽田さん大徳寺納豆どこへいっちゃんたんだろうと言うぐらい溶け込んでる.あっ出てきた.美味しいですね」

カヌレはフランスの修道院で作られていたお菓子だとか.

修道院の女性とお寺のお坊さんが結婚されたみたいなお菓子」と羽田さん.

 

次に向かったのはフレンチレストラン「エヴァンタイユ」

「旬の野菜の取り合わせ」を唐納豆ソースで頂きます.

羽田さん「美味しい.たまらないです.この甘塩っぱさが」「洋風なのにどこかお母さんの味」

オーナーシェフ森谷之雄さん「唐納豆の熟成した塩分って言うのが,そういう感じになるんだと思います」

作り方はというと---

 

唐納豆にお湯を入れてミキサーで20秒ミキシング.そこへ白味噌を入れて出来上がり!

 

森谷之雄さん一休さんなら『おお,やりおったな』.何でもありっていうと語弊があるかも知れないですけど,『できるもんならなんでもやってみ』みたいな.それで今までず〜と来てますから.やっぱり可能性に挑戦するっていうんですか.こだわらずに,これ,あれ,それ,みたいな.その中から残ってきたのがこの大徳寺納豆なんですね」

 

羽田さん「イメージが全然変わりました.一休さんが日本にわざわざ伝えようととしてもってこられた納豆の,その意味が,なんか,分かりましたね」

今も一休さんの精神を引き継いでいる.

 

真珠庵の山田住職は各地で座禅会を行っています.

その席で自身が作った唐納豆を参加者に振る舞います.一休さんの考える禅の心,それは唐納豆を食べてもらうことで一番伝わると住職は考えています

一休さんに思いをはせるというああいう直接的なものがあるとわかりやすいですよね」

 

番組終了時の映像:おかゆの上に大徳寺納豆が二粒.その美味しそうなこと!