「さむい」を表す漢字「寒」は,会意文字=「宀と,人(ひと)と,茻ぼう(草のむしろ)と,冫ひよう(さむい))」. 「さむい」という意味以外に,「季節の名」=大寒+小寒=「冬,立春までの約30日間」の意味も表しています.寒の雨,寒の水,寒の夜もこの季節に関連した言葉になります.最近はあまり使われなくなつてきているように思いますが---. うつし身は現身ゆゑになげきつとおもふゆうべに降る寒の雨 斎藤茂吉  シリウスの志(し)にしたがひて大寒の風ちぎれとぶ八衢(やちまた)に立つ 雨宮雅子

今朝も鎌倉は氷点下.

植木鉢の土は,二日間凍ったままでした.寒さに弱い植物は屋内に避難させました.地植えのものはそのままですから,寒さに弱いものは,上部が枯れたようになってしまいます.例えばまだ花をつけていたパイナップルセージは,あっという間に葉は褐変してしまいました.春になって芽が出るのを待たねばなりません.

一方,ビオラやハボタンは,土が凍ったぐらいではびくともしません.

この時期に育てたことがない,先日購入したアネモネ.これも寒さには強いようです.さすがに首を曲げたようになっていましたが,昼過ぎには元通りの姿に.

寒い日が続きます.

今日は,季節としての「寒」を詠んだ歌を集めてみます.大寒小寒の「寒」です.最近はあまり詠まれなくなつている歌題のようですが.「寒」という言葉自体,あまり使われなくなつてきているようにも思います.以前は「寒の入り」は,ニュースで毎年取り上げられていたように思つていますが---

 

その前に,以下,中学生に戻って,この「寒」をつかった言葉をいくつか,辞書からピックアップしてみました.

 

▽まず「さむい」を表す漢字「寒」.

家の中で筵(むしろ)にくるまって寝ている人を表している会意文字=「宀と,人(ひと)と,茻ぼう(草のむしろ)と,冫ひよう(さむい))」とのこと.知りませんでした.

 

寒(角川字源)

会意.宀と,人(ひと)と,茻ぼう(草のむしろ)と,冫ひよう(さむい)とから成る.家の中で人がむしろにくるまって寝ていることから,「さむい」意を表す.

 

▽「寒」を国語辞典で調べてみると---

「さむいこと」以外に,「季節の名」=「冬,立春までの約30日間」という解説が載っています.小寒大寒ですね.

 

かん【寒】(日本国語大辞典

②陰暦での季節の名.冬,立春までの約三〇日間をいう.一年中で最も寒い時期とされ,前半の一五日を小寒,後半の一五日を大寒とする.寒中.《季・冬》

 

大寒小寒は昨日取り上げましたが,皆様ご存じの通り,この意味の「寒」に関連した言い回しも沢山あります.

 

・寒に入る/寒の入り  寒の季節に入る。

・寒の雨  寒の期間中に降るつめたい雨。

・寒の内  一月五日ごろから二月二、三日ごろの、小寒大寒合わせた約三〇日間。寒中かんちゅう。

・寒の水  寒中の水。冬の水。また、そのように冷たいことのたとえにいう。

・寒の餅  寒中につく餠。また、それを切餠として水に入れたまま、たくわえたもの。

・寒の夜(よ) 天地も凍りつくばかりの寒い「寒中」の夜

 

 

「寒」を詠んだ短歌

 

拍子木のはたと途絶えつ寒き夜の夜まはり男何を為(す)るらむ  若山牧水 くろ土

 

 

寒の中の雨はまことにしづかなる音をたてけりまだ宵なるに  岡麓 涌井

 

 

うつし身は現身(うつしみ)ゆゑになげきつとおもふゆうべに降る寒の雨  斎藤茂吉 ともしび

 

 

降りいでて漸(やうや)くしげき寒の雨なみだのごとき過去が充ちゆく  佐藤佐太郎 帰潮

 

 

寒の夜を真澄の鏡研ぎとぎて身はなまぐさきしはぶきに痩(や)す   岡野弘彦 滄浪歌

 

 

寒の水あかとき飲みてねむりけりとほき涌井の椿咲けるや  前登志夫 縄文期

 

 

シリウスの志(し)にしたがひて大寒の風ちぎれとぶ八衢(やちまた)に立つ  雨宮雅子 雅歌

や‐ちまた【八衢】
 道が八つに分岐している所。また、道がいくつにも分かれている辻。分かれ道が多くて迷いやすいことや、あれこれと考えて心が乱れることなどのたとえにもいう。