学術会議前会長「民主主義の大きな危機,賢明な政治を」
嘉幡久敬
2020年10月12日 8時17分
https://digital.asahi.com/articles/ASNBD2HWKNBCULBJ004.html
日本学術会議の前会長,山極寿一・京都大前総長が11日,同会議などが主催するオンラインシンポジウムに参加し,会員候補6人が任命されなかった問題について「民主主義の大きな危機」などと語った.
シンポのテーマは「Withコロナの時代に考える人間の『ちがい』と差別」.山極氏は人類学者として参加し,冒頭であいさつした.
山極氏は「会長であった私が総理ときちんと交渉すべき問題だった」などと謝罪.
「国の最高権力者が意に沿わない者を理由なく切る,(さらに)問答無用であるという風に明言すると,その風潮が日本各地に広がることが懸念される.これは民主主義の大きな危機」と訴えた.
さらに,イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「非常事態こそ民主主義が必要な時である」という言葉を引き,「新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する非常時に,民主主義国家としての日本を,学術の力で支えていかなければならない.その根幹を揺るがす事態は大変遺憾.菅総理には賢明な政治,政権運営をお願いしたいと切に思う」としめくくった.(嘉幡久敬)
首相に任命拒否を「事前報告」
杉田官房副長官「複数人いる」
2020/10/12 23:41 (JST) ©一般社団法人共同通信社
日本学術会議の会員任命拒否を巡り,杉田和博官房副長官が内閣府の提案に基づき,任命できない人が複数いると,菅義偉首相に口頭で報告していたことが12日,分かった.
政府関係者が明らかにした.
加藤官房長官は首相が会員人事を決裁した際の文書に,会議側が推薦した105人全員の名簿が添付されていたと明かした.105人の推薦名簿を「見ていない」とした菅首相発言に対し,名簿は添付したが「詳しく見ていなかったということだ」と軌道修正した.
政府関係者によると,具体的な人数については事前報告していなかったが,決裁時には口頭で任命されない6人について説明し,首相も理解を示した.
前川喜平・元文部科学事務次官が杉田和博房副長官が学術会議任命拒否の6人の調査を指示した可能性を指摘!〜10.13 第4回「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」内閣府,内閣法制局 2020.10.13
IWJ Independent Web Journal
(取材:浜本信貴,文:杉浦まりあ)
菅義偉(すが よしひで)総理の日本学術会議の会員任命拒否問題に関する第4回目となる野党合同ヒアリングが10月13日の13時から行わた.
出席したのは元文部科学事務次官の前川喜平氏と内閣府,内閣法制局の担当者だ.
前川氏は文部科学事務次官時代の体験を元に,菅総理がどのような考えで今回の任命拒否に至ったのかについて考えを述べた.
前川氏は2016年に文化功労者選考分科会の人選リストを杉田和博官房副長官へ持参した.
そこで杉田官房副長官は,候補者2人の差し替えを求めたというのだ.また,その2人のうち1人は安全保障関連法に反対する学者の会に入っていた.
前川氏によると,杉田官房副長官は「政権を批判する人物をもってこられても困る.事前にチェックするように」と発言した.
当時官房長官であった菅総理が「任命権」についてどんな認識をもちえるのか,前川氏の分析を是非御覧いただきたい.
前川喜平・元文部科学事務次官が杉田和博房副長官が学術会議任命拒否の6人の調査を指示した可能性を指摘!〜第4回「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」内閣府、内閣法制局
前川喜平 科学者の下僕化 を痛烈批判
サンデー毎日2020年10月18日号
管政権は,官僚だけでは足りず科学者まで下僕化するのか.
菅義偉首相が,日本学術会議の新候補のうち6人を排除,任命しなかった,とのニュースで浮かんだのは,前川喜平元文部科学省事務次官が,安倍晋三政権下の霞が関官僚の実態について形容した「下僕化」というキーワードであった.
その前川氏はどう受け止めただろうか.
「ひどい話です.学術会議は,科学者の国会ともいわれ,学問の自由の世界を代表する人たちが,政治,社会,経済のあり方について政府に対し勧告権を持つ.
つまり強い独立性を有する機関だ.
根底には学問の自由を保障する憲法の精神があり,その人事の独立性を維持することは,学問の自由を制度として保障することにつながる.大学の自治と同じだが,そこには政治が介入しないということだ」
「日本学術会議法には『学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する』とある.
私も法律条文を書いてきたからわかるが,『基づいて』という法律用語は極めて拘束力が強く,推薦された通りに任命する,と読むべきだ.
もし万が一基づかない任命をする場合にはこの人ではダメだという強い説明責任が生じる」
政権はその説明を拒否,任命権のゆえの裁量という.
「政府側は,首相に実質的な任命権はなく推薦通りにする,との見解を国会で明言してきた.
法文上裁量があるとは解釈できない.
学術的功績は学術会議自身が判断するので首相判断の余地はない.
説明のできない違法行為であり,学問の自由を侵害した違憲行為としか考えられない」
「怖いのはこの人たちに違法・違憲行為との認識がなさそうなことだ.
検察の定年延長人事の時は,司法の独立性尊重意識の薄さを感じたが,今回は学問の自由や,政治と学問がどうあるべきかについての憲法感覚の欠落を感じさせた」
官僚人事の延長線上では?
「私が次官時代,文化功労者選考分科会委員選任(閣議了解事項)案件があり,文科省案を持って行ったら2人突き返された.
過去に安倍政権批判の発言があった,というのが杉田和博官房副長官が示した理由だった.杉田氏は管官房長官(当時)と相談の上決めており,杉田氏の一存ということはありえない.
これもまた文化功労者の選考に政治的影響が及ぶという意味で問題だったが,今回の学術会議の方がずっと深刻だ」
6人の顔ぶれは?
「まっとうな人ばかりじゃないですか.
もしこれが,恐らくそうでしょうが,安保法制や特定秘密保護法,共謀罪に異論を述べた,反対したということを実際の理由として任命拒否したとすれば,思想や言論を理由にした不利益な取り扱いとなり,憲法23条(学問の自由保障)のみならず19条(思想・良心の自由の不可侵権),21条(表現の自由保障)にも反する」
以下略