相模原殺傷事件公判 被害者遺族らの意見陳述 2
東京新聞 2020年2月13日朝刊より
【殺害された女性=当時(六〇)=の弟】
植松聖さんに死刑を求めます.
人が亡くなり,刃物で重傷を負い,職員,家族,世の中の人が心に大きな忘れられない傷を負って生きていくのですよ.
あなたはどうですか.
好き放題言い,絵を描き,手紙を書き,マンガまで出し,あまりにひどいですね.自分の人生,起こした事件に真剣に向き合うときですよね.
あなたはあまりにも幼い.
判決が下ったとき受け入れるか,控訴するのか,心の準備をするべきですよ.
ご両親に私の連絡先を教えてください.大事な一人息子に私は死刑をお願いしました.おわびを言いたいです.
県,県警,地検,地裁,やまゆり園の皆さん,匿名により非難され,申し訳ありませんでした.
報道の皆さん,匿名により取材に苦労され,世の中に伝えるのに大変だったと思います.この事件を機に,報道の仕方をもう少し考えてもらえればありがたく思います.
このような事件が,少しでも少なくなるよう,人の両親に訴えてもらえればと思います.
【負傷した女性の父】
長女は三年前,被告人に四カ所を刺されて重傷を負い,一命を取り留めていただきました.
自閉症の障害者で会話ができずに「痛い」という言葉が言えなかったのですが,さぞ痛かっただろうと思う.できれば親が代わってやりたかったです.
週に一度,仮施設に会いに行っています.それだけ,かわいいのだと思います.
現在は車いすで生活しています.あまり外に出られません.会いに行ったときは好きなものを食べさせたり,顔をなでて「頑張れよ」と言ったりしています.
被告人には一刻も早く罪を償って欲しいと思います.
【矢野一矢さんの父剛志さん】
息子は事件で首,のど,腹を刺され,意識不明の重体となり,四十四日間入院しました.二〇二〇年度中に施設を出て,自立するために努力しています.どんなに思い障害があろうと,意思疎通の取れない人は一人もいません.
裁判員,裁判官には良識ある判断をしていただきたい.
判決が出ても終わりではなく,判決は通過点に過ぎません.このような出来事が二度と起きないよう,事件を語りつづけることが,被害者家族の使命と考えています.
健常者に重度知的障害者の実情を知っていただき,重度障害があっても,街中で堂々と暮らせる社会になるよう活動していきたいと思います.
【殺害された女性=当時(二六)=の母】
どうしても娘の思いを伝えたいです.
園の行事ではフランクフルトやチョコバナナをおいしそうに食べていた.大好きなアイスをうれしそうに食べ,職員さんも喜んでいた.
いろんな思い出が,娘の心の奥に残っていると思います.
いとおしく大雪に思ってきました.かわいくて,かわいくて大好きでした.
大事な命を奪われてしまいました.月日がたっても悲しみは癒えません.とても寂しくつらいです.
この思いは永遠に続いて,消えることはありません.毎朝,遺影の笑っている顔を見ると,ずっと話し掛けていた.
私,心をとざしてしまいました.それでも娘のことを言いたいのです.
娘は多くの人の心を癒やし,愛されて,娘の笑顔はたくさんの人を幸せにしてくれました.娘のことを心配して悲しんでいる人がたくさんいるのです.
私の人生で欠かせない存在でした.
もっともっと生きてほしい.娘は二度と戻ってこない.被告に大事な命を取られました.
あなたが娘を奪った.娘と同じにしてください.死刑にしてください.障害があっても大切な命です.