先週，お客様を案内して鎌倉英勝寺を訪れたところ，紅葉の中，ヒイラギには花が．
これから赤い実がなるのか？
と思っていたら，
クリスマスに飾られる赤い実はセイヨウヒイラギ（英語ではHolly とかChristmas Hollyと呼ばれているそうです）の実だそうです．日本ではシナヒイラギ（ヒイラギモチ）が用いられることもあるようですが---．
一方，日本のヒイラギの実は黒く，しかも春に色づくとのこと．
両者は葉の付き方からも区別ができ，セイヨウヒイラギの葉は互生．
それに対し日本のヒイラギは対生．
湯浅浩史先生によれば，日本のクリスマスのために描かれる赤い実をつけたヒイラギの絵は，対生の場合が多いとか（「植物ごよみ」朝日新聞出版）．
今度，少し注意してみてみましょう．
飾りとしてのヒイラギとセイヨウヒイラギ
▽ヒイラギ
日本のヒイラギは古くは古事記に比比羅木と記され，現在は柊．
デコレーションというより，魔除けの意味を込めて，節分で飾られます．
また，「家の庭には表鬼門（北東）にヒイラギ、裏鬼門（南西）にナンテンの木を植えると良いとされている」とのことヒイラギ - Wikipedia．
現在はそんな意味を飛び越えて，葉も花も楽しめる庭木として多く利用されているようですが．
▽セイヨウヒイラギ
「植物ごよみ」では，さらに，なぜセイヨウヒイラギがクリスマスに飾られるかについて”常緑の信仰”の一つとしていました．
簡単にまとめると；
“北ヨーロッパでは針葉樹の常緑樹が森林を形成しているが，広葉樹の常緑野生種はセイヨウヒイラギをおいてない．
冬も枯れない緑色の木に生命力を感じるのは日本と同様で，針葉樹のクリスマスツリー，落葉樹に寄生するセイヨウヤドリギとともに信仰の対象となった”
としています．
英語のサイト
は，ー 英語でよく分からない部分はありますが ー
Saturnaliaの祭（農神サトゥルヌスSaturnを祭り,古代ローマで12月中旬に数日間にわたって行われた収穫祭･冬至祭）で飾られていたことに由来し，後にクリスマスと融合して，教会や家々で用いられるようになったとのこと（イギリスでは，とありましたが）．
また，小さなセイヨウヒイラギの木は，コニファーが用いられる以前は，家庭用クリスマスツリーとして用いられていたそうです．
歴史は古いんですね．
（湯浅先生は，赤い実も“太陽”や“血液”と関連づけて，飾る意味の一つとしていましたが，ウェブ上でその話を裏付ける記事は今のところ見つかっていないので，保留としておきます．
西洋では太陽を赤ではなく黄色と捉えているいうこともあって
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/06/000815 ）
語源
▽ヒイラギ
日本のヒイラギは，疼ぐ（ひいらぐ：ひりひり痛む）が転じてヒイラギになったようです（ ヒイラギとは｜ヤサシイエンゲイ ）.
▽セイヨウヒイラギ
セイヨウヒイラギがHollyと呼ばれていることが，Holy（神聖な）と関連しているように見え，日本語のウェブサイトでそのように記している例もありますが----それは，間違いのようです．
holly | Origin and meaning of holly by Online Etymology Dictionaryによれば，
Hollyは，葉の形に由来する「ちくりと刺す」事を意味するヨーロッパ語に共通した語源からとのこと．
日本と同じですね．
植物分類としては，
▽ヒイラギ
モクセイ科 Oleaceae，モクセイ属 Osmanthus，ヒイラギ O. heterophyllus，ヒイラギ O. h. var. bibracteatus
▽セイヨウヒイラギ
ニシキギ目 Celastrales，モチノキ科 Aquifoliaceae，モチノキ属 Ilex，
セイヨウヒイラギ I. aquifolium
全く違う植物！
