事件のはんにんは「障害者はいなくなればいい」という言葉を言っていますが,それはあまりにもひどいとおもいました. なかまが「おなじ考えの人が僕をさがしにくるんじゃないか」と言っているのをきいて,こわくなりました.みんなもこわがっています./ わたしはこれからも,障害者をみんなに知ってもらうために,こうして顔も名前も出していきます.そしてちいきの人たちとのつながりも大切にしていきたいと思っています.今回の悲しい事件をきっかけに,少しでも障害者が安心,安全に地域でくらしていけることを願います.三宅浩子

「生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの  大月書店」より

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当事者・家族・支援者の声

わたしには,夢も生きがいもある 

三宅浩子 知的障害当事者,社会福祉法人 夢21福祉会(神奈川県横浜市

 

わたしは三宅浩子ともうします.四十六さいです.知的障害者です.横浜のグループホームでくらし,作業所での仕事はお豆腐の製造と販売をしています.

今回の事件のはんにんは「障害者はいなくなればいい」という言葉を言っていますが,それはあまりにもひどいとおもいました.

同じ障害のあるなかまが「おなじ考えの人が僕をさがしにくるんじゃないか」と言っているのをきいて,こわくなりました.みんなもこわがっています.

 

わたしには将来の目標があります.手話をべんきょうして,しかくを取ることです.そのために,本をかって毎日,グループホームへ帰ってから勉強しています.また,楽しみはHey! Say! JUMPのコンサートへ行くことです.きっと殺された人たちにも,目標や楽しみがあったと思います.こんな人がいたんだと知ってもらうために,わたしは今日ここに立っています.

 

まだまだ,障害は社会にりかいされていません.わたしは話もできるし,見た目もけんじょうしゃとかわりません.だけど計算がにがてで,豆腐屋で一万円を出されるとこまってしまいます.おつりの計算に時間がかかってしまうと,お客さんに大きな声で「はやくしろよ」と言われてしまうことがありました.ご飯も食べられないくらい落ち込みました.障害のためにできないことがあるのに,それを理解してもらえないのがげんじょうです.だからこそ,お豆腐の販売では,近隣の高校の学園祭で生徒さんにきょうりょくしてもらい,一緒になって模擬店でお豆腐やかりんとうを売ったり,小学校の秋祭りに参加したり,地域ケアプラザでは,とうふ教室をひらいて,楽しみながら地域の人にりかいしてもらうために,わたしたちもがんばっています.

 

事件のひがいしゃの家族も,きっと今までたくさんの差別や偏見に苦しんできたと思います.障害が社会にりかいされないまま障害者の名前や顔が出ても,その人たちが正しくりかいされているとは思えません.今回のように新聞などに顔や名前を出さないのは,きっと家族はそんなへんけんや差別からこどもを守りたいんだと思います.わたしの両親も,わたしの障害を周囲にりかいしてもらおうと,いつもがんばってきました.

 

わたしはこれからも,障害者をみんなに知ってもらうために,こうして顔も名前も出していきます.さいきんでは,鉄道えんせんのじょうほうしにわたしがはたらいているお店がとりあげられることになり,仲間と一緒にしゅざいをうけました.そしてちいきの人たちとのつながりも大切にしていきたいと思っています.今回の悲しい事件をきっかけに,少しでも障害者が安心,安全に地域でくらしていけることを願います.

 

(二〇一六年九月二八日,日本障害者協議会主催の追悼・緊急ディスカッションでの発表原稿に加筆)