新年ですね.私は喪に服しておりますが,少しでも良い方向に向かうよう,向けるような一年でありますように.
正月はじめのブログ.百人一首に取りあげられている万葉集の歌を取りあげたいと思いましたが---.
その前に分からないことをはっきりさせてから.とても基本的な知識なのでしょうが,私にとってははっきりしないことだらけ.
「百人一首って?」「いつ頃からカルタとりが始まったの?」
ホントの名前は小倉百人一首,選者藤原定家の名前ぐらいは浮かんでくるのですが---
あとはほとんど何も知りませんでした.ウェブ上にも百人一首についてのサイトがいくつもあります.次の二つはきれいにまとめられているサイトです.
ここには検定サイトもあります.
「百人一首って?」
上記のウェブサイトにも「小倉百人一首とは」の記載がありましたが----.少し難い言葉での説明ですが,素性の知れた情報であることを優先して日本国語大辞典(小学館)の記載を引用します.歴史的な事項については,ウェブ上の情報がいい加減だった経験が何回かあるので(上記二つのサイトがいい加減ということではありません.私の見る限りではしっかりした内容のように思えます)
小倉百人一首:藤原定家が宇都宮頼綱(蓮生)の依頼で,蓮生の小倉山麓中院の山荘の障子に貼る色紙形の和歌として選んだといわれる100首の歌.天智天皇から順徳天皇までの,百人の歌人の秀歌を一首ずつ集めたもので,近世以降,歌ガルタとして広まった.定家が選んだ100人の秀歌を,後年その子為家が改訂したものが今日伝わるものであるともいう.小倉百首.
障子(襖:ふすまとか屏風としているサイトもありましたが)に貼る色紙なんて,イイですね.天智天皇〜順徳天皇の歌とありますが,他のサイトでは「勅撰和歌集:天皇の名で編纂された和歌集」から集めたとの記載も.
100首の内訳について百人一首の歴史によれば.
古今集24首,後撰集7首.拾遺集11首,後拾遺集14首,金葉集5首,詩花集5首,千載集14首,新古今集14首,新勅撰集4首,続後勅撰集2首
ということは,万葉集の歌が百人一首に入っているのか分からなくなりますね.「なぜ万葉集の歌が選ばれているのか?」も疑問としましょう.
''歌ガルタとして広まった''という記述は重要ですね.歌を鑑賞するというより,カルタとりのために広まったということでしょうから.
「いつ頃からカルタとりが始まったの?」
この疑問については,「歌ガルタ」語誌(語史に同じ:語源や語形・語義・用法の変化)に記載がありました.
歌ガルタ(歌骨牌):(カルタはポルトガル語carta)----------*(浮世風呂1809-13の使用例の記載)のあとの語誌には
「室町時代に行われたとみられる歌貝にウンスンカルタが影響して生じたもの.古今和歌集・伊勢物語・源氏物語などの歌を用いたものから,元禄ごろに小倉百人一首を用いたものに代わり,これが一般化した」とありました.
「元禄以降」なんですね.他のサイトでも元禄ごろよりとあります.
「なぜ万葉集の歌が選ばれているのか?」勅撰和歌集から選ばれているはずなのに!
この答は''勅撰和歌集に万葉集の歌が選ばれているから''という割と簡単な理由でした.でも,これが,万葉集の歌と百人一首の歌が,同じ歌なのに細部が異なったり,時には作者が異なっていたりする理由なんですね.勅撰和歌集に選んだ時点ですでに「細部が異なったり,時には作者が異なっていたりする」というわけです.
万葉集にも百人一首にもある歌は次の四首(推定を含めて).どのサイト・本も内容は同一なので,最終的には普段あまり参照としない質問サイトの答百人一首の中に万葉集のうた?は含まれてますか... - 文学、古典 | Yahoo!知恵袋を少しだけ変えた形でお借りして掲載します.とても親切な回答なので.
質問:百人一首の中に万葉集のうた?は含まれてますか?あれば教えてください!
回答
「万葉集」から”選ばれた歌”はありません.ですが,元歌が万葉集に存在する歌はあります.「百人一首」は勅撰集(天皇や上皇の命によって編纂された)から抜粋する方針で編まれていますので,“万葉集から選んだ”というわけではなく,時代とともに変化した万葉歌が勅撰集に収録され,それを百人一首に選んだという具合です.
持統天皇と山部赤人の作品は,「新古今集」から選ばれていますが,その元歌は万葉集にあります.但し表現がやや異なっています.
【春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香久山】(百人一首)
【春過ぎて 夏きたるらし 白妙の 衣干したり 天の香久山】(万葉集)
【田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ】(百人一首)
【田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にぞ 富士(不尽)の高嶺に 雪は降りける】(万葉集)
【あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む】(百人一首)
【あしひきの 山鳥の尾のしだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む】(万葉集) 作者未詳歌と同じ表現:万葉集巻十一‐2802番歌「思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥の尾の 長きこの夜を」の「或る本の歌に曰はく」にある.
【秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ】(百人一首)
【秋田刈る 仮庵を作り 我が居れば 衣手寒く 露ぞ置きにける】(万葉集)巻十-2174 作者未詳歌が元歌と指摘されています.