総合:2016年10月8日(土)よる9時から10時13分
再放送:総合 10月15日(土)午前0時10分(金曜深夜)
夏目金之助(漱石:長谷川博己)の書いた小説「吾輩は猫である」が評判を呼び、金之助は一躍作家として有名になる。そして金之助は教師をやめて作家になることに興味を示すが、鏡子(尾野真千子)は猛反対する。(以上番組ウェブサイトより)
小説家として認めてくれた東京朝日新聞社への入社をあきらめきれない金之助. 200円という月給(現在の給料は本棚代38円より下)の申出を聞いた鏡子.金之助「君は今でも反対か」鏡子「反対です.私は申し上げることは全て申し上げました.これ以上申し上げることはございません」金之助「つまり反対か?」鏡子「小説を書いていきたいというのは昔からのあなたの夢ですから,私もその夢に乗ってみたいとそう思ったこともありましたから」金之助「だから?」鏡子「これ以上は,お好きなように」金之助「じゃあ好きにするぞ」
そんなある日、金之助が幼い頃に世話になった養父の塩原昌之助(竹中直人)が、夏目家にやって来る。
塩原「どうかして元通りのおつきあいが願えないかと思ってね」
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'互いに不実不人情にならぬよういたしたい'という金之助の書いた念書を見せ,
塩原「不実とは見て見ぬふりをすること.不人情とは昔を忘れることだ」
部屋から走り出た金之助.鏡子に向かって「金が欲しくてきたんだ.---追い返してくれ」
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金之助の兄「悪いのは親父の方だ.----金之助は塩原の家にいた方が幸せだった」
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鏡子と同行する塩原.「かわいくて仕方が無かった」「何もかもなくした」「金之助をたった240円で売り渡した」「分かりますか?落ちぶれるという忌ま忌ましさが」「分かるでしょう.溺れる者はわらをもつかむという気持ちが.」
雨の日,再び塩原が尋ねてきた.
鏡子「今日は塩原さんに帰っていただきましょうか」
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塩原「そう言わずに200円ばかり都合つけてくれないか?」
拒む金之助.脅す塩原.胃の痛みで倒れる金之助.
金之助「この人が良い父親だったんだ,たった一人の,大事な父親だったんだ」
その言葉を聞き,部屋を走るように出る塩原「失礼」
なけなしの100円を天井裏から取り出す鏡子.雨の中,裸足で塩原を追う.
封筒を渡しながら鏡子「100円あります.三年かけてためました.持って行って下さい.」「これで私たちは一文無しです.明日から質屋通いです.見て下さい.質札がこんなに.私たちには子供が四人います.おなかの中にも一人います.小説を書きたい若者たちも沢山集まります.毎日どうやってまかなっていくか,小説を書いてもまだ質屋と縁が切れないんです.でも,塩原さんは今お金が必要なんでしょう.急場をしのがなければならないんでしょう.そういうお金でしょう.でしたら,この百円差し上げます.その代わり念書を返して下さい.夏目の書いた念書を」
塩原「念書はダメだ」
鏡子「じゃこれは差し上げません」
鏡子「必要なんでしょう.今これが必要なんじゃありませんか.だから恥を忍んでこられたんでしょう」
塩原「そうだ」
鏡子「夏目がああやって倒れてしまえば,ただの紙切れじゃありませんか?溺れてつかむわらほどの値打ちもありませんよ.念書の中に互いに不人情はよそうと書いてあるでしょう.うちの人は人情はありますよ.あなたはどうなのですか」
塩田,念書を取り出し,「もってけ」
念書を渡し,傘を放り出し,走り去る塩田「うううっ」
鏡子「はあはあはあうう」しゃがみ込んで泣く.
柱にもたれて外を見る金之助.ガラス戸の外に立つ鏡子,戸を開けてずぶ濡れのまま金之助の前に立つ.房子(黒島結菜)そっと席を外す.鏡子座って黙って念書を金之助に渡す.金之助が開くのを見つめながら
鏡子「多分あの方はもういらっしゃらないと思います.そんな気がします」
念書をゆっくり三つに切り裂く.破った念書を傍らに置き,
金之助「これでまた一人,身内が減った.身内というのはやっかいだが,自分が生きてきた証拠のようなものだからね」
鏡子「さみしい?」
金之助「君はどうだった?中根の親父さんを自分の手で切った」
金之助「残念だ.(首を振りながら)俺は君ほど強くはない」
立ち上がろうとして跪く,助けようとする鏡子.
金之助「いい」胃を押さえながら出て行く.
鏡子のアップ,涙.うつむき,子をなでるようにお腹に手を当て,
涙から,やや微笑んで「あーあー」
「夏目漱石の妻」第一回・第二回ともメイルを書いたり,新聞を読みながら時々目をやる,という感じで視聴していました.この第三回もはじめは同じ.しかし,再度塩原が訪問した場面から画面を見るようになり,金之助が倒れたところからは釘付け.塩原に念書の返却を迫る鏡子.抗う塩田.そして,念書を切り裂いた金之助の言葉.おなかの子をいたわりながら泣き・微笑む鏡子.
この間は圧巻でした.尾野真千子さん,長谷川博己さん,竹中直人さんの演技と脚本,そしてシューベルトのピアノソナタの挿入.尾野真千子さん.久しぶりにしっかり拝見して,再びファンになりそうです.
鴻雁来(こうがんきたる) 雁が北地より飛来する頃