鳥獣害にには関心を持っていましたが、これほどひどいとは思っていなかった。私は年金で生活しているけれども、農家の人はたまりません。この問題を思想として整理しておかないと、収拾がつかなくなる。
(中略)
(篤農家の)有井さんはサルを撃つとき手が震えたそうです。サルは人間に似ているので撃つ人がいない。だけど、誰かが撃たなければ、農業経営は破綻してしまう。問題は、有井さんが苦しんだように、獣害と仏教の殺生戒、自然保護思想との間で、どう折り合いをつけるかということだと思う。
(中略)
動物たちが持続的に生存することができ、農家も経営を維持できる均衡状態を、その地域、その地域で構想し、形成しなければならない時期に来ているのではないでしょうか
祖田 修 書く人 東京新聞朝刊 2016年9月18日(日) 「鳥獣害 動物たちと、どう向き合うか」(祖田修著 岩波新書 2016年)に関するインタビューに答えて
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里山は、生産、環境保全、文化の3つの資源の供給地.計画的に配分し利用することが大切
里山が放置され、人間が里山から撤退したことが、野生動物の被害の増大の大きな原因になっているという論旨からすれば、里山をいかにしてもう一度人間の生活の場として取り戻せるか、すなわち、人と動物の入会地としての里山を新たな形で再生するための方策をたてればよいかを考え出さねばならない。
(中略)
里山は、生産、環境保全、文化の3つの資源の供給地として、計画的に配分し利用することが大切である。
河合隼雄 里山とは何か 「動物たちの反乱」(河合隼雄、林良博 編著 PHPサイエンスワールド新書 2009年)
大切なことは、集落より森の中の方が安全で快適だということを、サルたちにわからせること
いま全国で起こっていることは、集落周辺に定着して農作物に依存した生活を送るニホンザルが増えているという現象である。シカやイノシシに比べるととても低い増加率だが、農作物を採食している限り、着実に個体数が増えて被害地域が拡大してゆく。捕獲によって個体数を減らしても、農作物採食を減らす対策をしない限り、根本的な問題は解決しない。
(中略)
ニホンザルによる農作物被害を軽減するには、適切な被害対策を計画的に実施して、サルが農作物に依存しないようにすることが最も根本的で効果的な方法である。ここで大切なことは、集落より森の中の方が安全で快適だということを、サルたちにわからせることだ。
室山泰之 ニホンザルの被害はなぜ起こるかのか 「動物たちの反乱」(河合隼雄、林良博 編著 PHPサイエンスワールド新書 2009年)