ワカメの栄養成分
「藻類は体にいい」と何となく思っている私たち.
他の国々ではあまり食べられていないので,日本人だけでしょうが---
しかし,日本食品成分表を見る限り,ヨウ素以外,特に目立つ栄養素はありません.
(後述する食物繊維もかなり含まれますが,数字として「特に目立つ量」ではありません.ただし,その質が陸生生物と異なるため,様々な機能を持つのではないかと研究が続けられています)
野菜の優等生ほうれんそうにも,さすがにヨウ素はほとんどなく,藻類の独壇場.
ただ,藻類の中でもコンブが飛び抜けており(下記),ワカメの数値はそれほど目立ちません.
ヨウ素は甲状腺の機能維持に必要で,欠乏は「単純性甲状腺腫」の原因となるため,海藻を食べない国では「ヨウ素添加塩」(⇒*)を用いるなど摂取を心がける必要があります.
しかし,「海藻を食べる特異な国」で生活する日本人にとっては,あまり気にならない栄養素ですね.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/brte/24/3/24_117/_pdf/-char/ja
⇒*
欧米では.「ヨウ素添加塩」は一般的になっているようです.
例えばネット上で見られるMSD Manual日本語版にもしっかり記述されています.
MSD Manual 家庭版
体内のヨウ素のほとんどは甲状腺にあります.甲状腺のヨウ素は,甲状腺ホルモンの形成に必要です.ヨウ素は海水中に存在しています.
少量のヨウ素が大気に入り,雨を介して海の近くの地下水や土壌に入ります.
米国を含む多くの地域で,十分な量をとるためにヨウ素(結合したヨウ化物として)が食卓塩に添加されています.
ヨウ素欠乏症
ヨウ素が食卓塩に添加されている地域では,ヨウ素欠乏症はまれです.しかし,世界的にはヨウ素欠乏症は多くみられます.海から離れた地域や標高が高いところに住む人は,海の近くと違って環境中にほとんどヨウ素が含まれていないため,ヨウ素欠乏症になるリスクが特に高くなります.
ヨウ素が欠乏すると,甲状腺ホルモンの分泌に必要なヨウ素をより多く取り込もうとして甲状腺が腫大し,甲状腺腫を形成します.甲状腺の機能が低下し,甲状腺ホルモンがほとんど分泌されなくなります(甲状腺機能低下症― 甲状腺機能低下症を参照).妊孕性(にんようせい)が低下します.成人では,甲状腺機能低下症によって,皮膚の浮腫,声がれ,精神機能障害,皮膚が乾燥しうろこ状になる,毛髪が硬く薄くなる,寒さに耐えられない,体重増加といった症状が生じることがあります.
妊婦がヨウ素欠乏症になると,流産と死産のリスクが増大します.胎児の成長が遅くなることがあり,脳の発達に異常が現れることもあります.生まれてすぐに治療を受けないと,知的障害と低身長を引き起こす病気(クレチン症)が発生します.クレチン症の新生児は耳が聞こえずものが言えないことがあります.先天異常や甲状腺機能低下症がある場合もあります.
ヨウ素以外の栄養成分
ワカメの栄養成分を比較するために,二つの表を用意しました.
一つは
表A. 乾燥した藻類の成分表: ワカメの乾燥品のヨウ素の数字が抜けていますが,それ以外の栄養成分については,ワカメ,ノリ,コンブ,ヒジキの比較ができます.
ただし,乾燥食品の栄養成分の数値は,気をつけてみる必要があります.
1. 乾燥したままで食べるか?
水で戻したり,ゆでて食べる場合:実際に食べる量は,乾燥品ではどれ位になるのかを換算して考える必要があります.
(例えば,乾燥わかめは1グラムあれば,スープやお吸い物には十分でしょう)
2. 乾燥したまま食べるとすれば,どれ位が目安?
(例えば,あまのりは栄養価が高い食品ですが,乾燥したまま食べる量は限られるのでは?せいぜい一枚3グラムむ程度⇒ 焼き海苔のカロリー − 簡単!栄養andカロリー計算 )
表A
もう一つは
表B.水戻し等,水分をしっかり含んだ藻類の成分表: アマノリ以外は,乾燥品を直接食べることはあまりない(ふりかけ等例外はありますが)ので,こちらが実際に口にする藻類の栄養素を反映したものと言えるでしょう.
また,この表の数値は,他の野菜との比較もしやすくなっています.実際,ここでは,ほうれんそうと比較してみました.
表B
ワカメの食物繊維
ヨウ素以外で,藻類に多いといえる食品成分は食物繊維です.
表Aを見ると特にそう思いますが,水戻し等をした表Bの数値は,飛び抜けて高いとは言えません.
また,ワカメに限っていえば,乾燥わかめの水戻しと,湯通し塩蔵わかめ塩抜き,同ゆで,で,食物繊維の数値がかなり異なります.ワカメの食物繊維が水溶性なため,加工段階で失われた可能性が考えられます.
ワカメの食物繊維は,その含量もさることながら,食物繊維の化学型が陸生植物と異なる点が注目されています.
陸生植物の食物繊維はセルロースが多いのですが,海藻ワカメはアルギン酸を多く含みます.ともに細胞壁の成分ですが,系統的に全く異なる陸生植物と褐藻類では,細胞壁の主成分が異なるということですね.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdf2004/8/1/8_1_1/_pdf
http://sourui.org/publications/sorui/list/Sourui_PDF/Sourui-60-02-047.pdf
アルギン酸は,水溶性食物繊維の代表格.
不溶性のセルロースとは異なる機能を持つと指摘されています.
また,その他の食物繊維で注目されるのは,フコダイン.
褐藻類のヌメリ成分(細胞間粘質多糖)で,他の食物繊維にない作用をもつのではないかと注目されています.
⇒海藻成分フコイダンの生体調節機能に関する研究|機能性多糖分析学寄附講座
ワカメのカロテノイド
ワカメの食品成分ではβカロテン当量(ビタミンAになることができるカロテンの量をβカロテン量に換算した値)もかなりの数値を示しています.これもワカメの加工形態によって数値がまちまちですが---.
また,ワカメにはビタミンAにはなることができないカロテノイド,フコキサンチンが多く含まれています,
ワカメの褐色の色に相当します.ワカメを湯がくと緑色になるのは,フコキサンチンの褐色が薄くなり,葉緑体の色が際立ってくるためと説明されています.
このフコキサンチンも特別な機能をもつ可能性が指摘され,研究が続けられています.
⇒http://agri-renkei.jp/news/docs/20141212seminar_miyashita.pdf