ガガイモ(カガミ)4 名称と漢字 ▽「かがみ」は,ガガイモの古名. 日本国語大辞典“かがみ”には,「ガガイモの古名」と明記してあります. ▽かがみ(かかみ)は羅摩.ガガイモも羅摩と書きます. さらに,羅摩をカガミイモと読んでも,ラマと読んでも良い. ▽ガガイモの語源はよく分かっていないが,最も信頼できそうな語源は: 「カガミイモ⇒ガガイモ」(大言海) ▽カガミ(⇒カガミイモ⇒ガガイモ)がなぜカガミ「イモ」と呼ばれるようになったのか?不明です.  “植物をたどって古事記を読む”シリーズ

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ.

 

オホクニヌシ(オホナムヂ, アシハラノヨコヲ)の国づくりを助けたスクナビコナ

小人神で,現れたときに乗っていたのがアメノカガミ船(天之羅摩船).ガガイモので作った船でした.

 

(三浦祐介氏はアメノカガミ船としていますが,従来はアマノカガミ船との訓が多いようです.

 精選版 日本国語大辞典の解説では,

 天の羅摩船(読み)あまのかがみぶね; ガガイモの実を割って作った舟.上代神話で少名毘古那神(すくなびこなのかみ)が乗ってきたと伝える.)

 

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 ガガイモ - Wikipedia

 

今日は,このガガイモの名前について整理してみました.

整理と言っても---

個人的に気になったこと/気がついたことを辞典で調べた内容の箇条書きになってしまい,

ほとんどの方にはどうでもいいことの羅列です.

 

ガガイモ4 名称と漢字

 

▽「かがみ」は,ガガイモの古名.

 日本国語大辞典“かがみ”には,「ガガイモの古名」と明記してあります.

 

 ただし,

凡例に挙げられている日本書紀では,

“白蘞”と書いて,“かかみ”と読ませている.(本来,蘞は旧字体.しかし活字にありません)

ややこしいことに----

 “白蘞は,本来はカガミグサ(鏡草)を意味する漢字” で,本来,かがみと読ませるには無理がある.

(実は,さらにさらにややこしいことに “白蘞は,鏡草の根の生薬名が本来の使い方”)

これを“かかみ”と読ませる根拠として,日本国語大辞典には,次のような注釈が加えられています.

( 白蘞は)“内容上別の草であるが,「蘿摩」と相通じ用いたものと認められる”. 

古事記の使用例を手本とした場合,“相通じ用いたものと認められる”ということなのでしょう.

 

精選版 日本国語大辞典の解説

かがみ【蘿藦】

① 植物「ががいも(蘿藦)」の古名.

 かがみ【蘿藦】 

 ※書紀(720)神代上(兼方本訓)「一箇(ひとり)の小男(をくな)有りて,白蘞(カカミ)の皮を以て舟に為(つく)り」

② =かがみぐさ(鏡草)

 ※色葉字類抄(1177‐81)「薟 カカミ」

 [補注]「書紀‐神代」の「白蘞」は,実はブドウ科のつる草カガミグサのことで,根を薬用としたもの.したがって内容上別の草であるが,「蘿摩」と相通じ用いたものと認められる.

 

▽かがみ(かかみ)は羅摩.ガガイモも羅摩.

 加えて,羅摩をカガミイモと読んでも,ラマと読んでも良い.

 

天之羅摩(アメノカガミ)船の“羅摩”(かがみ)という漢字は.ガガイモにもあてられています.

 

広辞苑 第七版

がが‐いも 【蘿藦】

キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)の蔓つる性多年草.長い根茎がある.葉は長心臓形,茎葉を切れば白汁が出る.夏,葉腋に淡紫色の花をつける.果実は長さ10センチメートル余の楕円形,種子に白色の長毛がある.種子を乾燥したものは生薬の蘿藦子らましで,乾葉とともに強精薬とし,また種子の毛は綿の代りに針さしや印肉に用いた.乳草.シコヘイ.ゴガミ.スズメノマクラ.クサパンヤ

 

蘿藦をガガイモと読むようになったのは,かなり後のこと.

日本国語大辞典の凡例を見る限り,大和本草(1709年)にガガイモと読んでいる例が見つかっているそうです.

 

そして,蘿藦の読み方についてはさらにややこしいことが---

蘿藦をカガミイモと読む場合もあれば,

蘿藦をラマとも読む!

 

精選版 日本国語大辞典の解説

がが‐いも【蘿藦】 ----略----《季・夏》 〔大和本草(1709)〕

 

かがみ‐いも【蘿藦】

〘名〙 植物「ががいも(蘿藦)」の異名.《季・夏》

 

ら‐ま【蘿藦】

〘名〙 植物「ががいも(蘿藦)」の漢名.〔物類称呼(1775)〕

(ラマは漢名とあります.しかし,ネット上の中国語辞典に蘿藦はみつかりません.余り使われていない?日本製漢名?)

 

▽ガガイモの語源はよく分かっていないが,最も信頼できそうな語源は:

「カガミイモ⇒ガガイモ」(大言海

 

ガガイモの語源については,ネット上では様々な説が紹介されています.しかし,決定的なものとして万人に認められているものは無いようです.

その中で,もっとも信頼できそうな説が,カガミイモ⇒ガガイモ.

もともとは,大言海にあった説として,小学館・日本語源大辞典は次のように記しています.

 

ががいも【蘿藦】

[語源説]

カガミイモの略転.カガミは古名〈大言海

 

 

▽カガミがなぜカガミ「イモ」と呼ばれるようになったのか?

 ガガイモがカガミイモから生まれた名前だとして----

 なぜ,カガミがカガミイモとなったのかは全く不明です.

 ガガイモはイモではないのに!

 

このことに疑問を持っているのは私だけではありません.ネット上では,都立薬用植物園のガガイモの解説をしている方も,とても不思議がっています.

http://www5f.biglobe.ne.jp/~homepagehide3/torituyakuyou/kagyou/gagaimo.html

 

以下は,素人の妄想.

カガミは,鏡と同じ音.紛らわしい.

 

それでは,カガミグサとしてもいいのですが---

(実際,この呼び方もあったようです)

ビャクレン等,カガミ草と呼ばれるものは沢山ある.

 

精選版 日本国語大辞典の解説では,

かがみぐさ

始めにカガミグサ/ビャクレンが取り上げられていて,

ブドウ科のつる性草本.-----漢名,白.和名カガミグサ,またはビャクレン.かがみ.やまかがみ.

② に ,今取り上げている)ががいも.“「ががいも(蘿藦)」の古名.”

 

以下

③ 植物「うきくさ(浮草)③」の古名.《季・夏》

④ 古く,宮中で,元日に鏡餠の上に置いた大根の輪切りの称.また,大根そのもの.

⑤ 植物「あさがお(朝顔)」の異名.

⑥ 植物「やまぶき(山吹)」の古名.

⑦ 植物「まめづた(豆蔦)」の古名.

⑧ 植物「いよかずら(伊予葛)」の古名.

⑨ 植物「かたばみ(酢漿草)」の古名.

⑩ 植物「ちどめぐさ(血止草)」の古名.

⑪ 植物「いちやくそう(一薬草)」の異名.

 

紛らわしいので,カガミグサ以外の別の名前に----

実の形,もしくは根っこが芋と見えなくもない---?

それで---カガミイモ.

 

そんなわけはありませんよね.

(密かに,そうかもしれないと思っていますが)