サツマイモで全8回も記事を続けてしまいました.
それでも,まだまだ書き足りないことがたくさんありますが---
https://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/181112/1.html
第9回目の今日は,いくつかの項目について,ジャガイモ,サトイモ(種はタロイモと同じ,タロイモの一種と見なされる)と簡単に比較して,このシリーズを終えたいと思います.
なお,栄養成分については,既に第7回で比較したので,ご参照ください.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/11/27/032846
名前の由来
サツマイモ 薩摩国が産地であることから付けられた名前.(日本国語大辞典 小学館)
現在は全国的に用いられていますが(例えば,文科省日本食品標準成分表では「さつまいも」,ただし農水省農業統計では「かんしょ」),日本国語大辞典(小学館)によれば,出身地,伝来経路によっていくつかの名前が使い分けられてきたそうです.
サツマイモ; 東日本〜中国・四国.
トウイモ(唐芋); 九州北部〜山口.
カライモ(唐芋); 九州南部,四国の一部
ジャガイモ 「ジャガタラいも」の略.1598年,オランダ船がジャカトラ(現在のジャカルタ)から伝えた.(日本国語大辞典 小学館)
サトイモ 古くは“イヘツイモ”などとよばれたが,16世紀末にはサトイモの名が現れた.ともに,人の住む地域でとれるからであろう.(日本国語大辞典 小学館)
⇔ヤマツイモ,ヤマノイモ
補足
漢字「芋」はもともとは,サトイモ/タロイモのことを指していました.
日本語「いも」も,「特にサトイモ」をさして使うことがあります.
▽漢字「芋」
芋 “特にサトイモ,タロイモの類に用いる” 芋 - ウィクショナリー日本語版
芋 ① “いも,さといも”.② “いも類の総称”.角川新字源
▽「いも」
“茎とか根とかいう分類認識を離れ,地下にデンプンを貯蔵し,比較的簡単に食用になるものを指す便利な日本語”(堀田満 2003)
https://www.nodai.ac.jp/application/files/8414/8599/9455/62.pdf
日本国語大辞典(小学館)でも,「いも」の①として,ほぼ同様の解説をしています.そして,②として“特に.サトイモの称”.
原産地と日本への伝播
サトイモは縄文の昔から貴重なデンプン供給源でした.
サトイモに比べれば,日本のサツマイモ,ジャガイモの歴史はとても浅いものです.
https://www.kagoshima-shoku.com/2266 サトイモ - Wikipedia ジャガイモ - Wikipedia
山川 理「サツマイモの世界,世界のサツマイモ」 現代書館 https://www.nodai.ac.jp/application/files/8414/8599/9455/62.pdf
世界での生産量と主な生産国
インカ帝国の基盤を作ったとされるじゃがいもは,人の消費量の観点からは,米・麦に次いで,世界で3番目に重要な作物といわれています.Potato - International Potato Center
サツマイモの生産量もかなりのもの.しかし,ジャガイモと比較すると1/3〜1/4.しかも,その生産は中国に大きく偏っています,
熱帯〜亜熱帯の国々で食糧難を解決するためには,最適の作物と思われますが---
生産量としてはジャガイモ,サツマイモに大きく水をあけられているタロイモ(サトイモはタロイモの一種).しかし,稲作ができない/行っていない熱帯アジアなどでは,主食となっている/いた例があることはよく知られています.
Colocasia esculenta - Wikipedia
植物分類
サツマイモとジャガイモは,どちらもナス目という点では同じですが,科は別々.
サトイモは単子葉類で,サツマイモ・ジャガイモとはかなり離れた位置に分類されます.なお,ヤマノイモも単子葉類です.
ヤマノイモを含めた,この四者.分類上はかなり離れ,利用部位も異なっていますが(ヤマノイモの利用部位は根から茎への移行部分が肥大した担根体 山芋(料理百科事典) (株)柴田書店 - 食の総合出版社 ),“いも”という「便利な言葉」のおかげで,並べて扱うことが可能になっています.