秋の星座として紹介されているおひつじ座.
この星座にまつわる牡羊の名はギリシャ語で,“KRIOS KHRYSOMALLOS”,ラテン語でCrius Chrysomallus.
CHRYSOMALLUS (Khrysomallos) - Golden-Fleeced Ram of Greek Mythology
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/10/17/002410
ギリシャ神話では,この黄金の毛をもった空飛ぶ牡羊が,アイオロスの王子プリクトスと王女ヘレーを助け,星座となったとされています.
http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html
牡羊の最期は?助けたのに生け贄にされた?
牡羊の最期は生け贄となり,金の毛皮を差し出しますが,もっとも詳しく記載している偽アポロドーロスによるビブリオテーケーには,その前後のいきさつの記載はないようです.
「そしてプリクトスは金毛の羊を厄除けの神としてのゼウスに捧げ,その皮をアルイエーテースに与えた」
とあるだけ.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/10/18/005802
ネット上の,この星座にまつわる神話においても,何の説明もありません.
ただ,「古代においては神の遣わした獣は、生け贄として神に返す風習だった」との脚注をつけているサイトがありました.
この脚注の真偽を確かめる術を私は持ちません.
しかし,ギリシャ神話関連の話題で,私がその多くをお世話になっている,the Theoi projectや英語版ウィキペディアでは,これに類する解説を見つけることはできませんでした.
でも,
助けたのに生け贄にされる?
確かに腑に落ちませんね.
偽ヒュギーヌスの天文詩でも,「ジュピター(ゼウス)にその牡羊を生け贄として捧げ」としているのみ.
http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html
yachikusakusaki.hatenablog.com
ただ,その後に,次のような文章が続いています.
エラトステネス(ギリシャの詩人,紀元前3世紀)は,その羊は,自分自身で,皮を脱ぎ,プリクソスに記念に与え,自ら進んで星々になり,
そのために,前に言ったように,やや暗い星になった,と語っています.
おひつじ座2 - yachikusakusaki's blog
(このエラトステネスが,天文学や数学で著名な学者だった人物と同一かどうかは不明.ただし,生存時期は一致し, 英語版ウィキペディアでは“Greek mathematician, geographer, poet, astronomer, and music theorist”とあるので,同一人物である可能性は高い)
Eratosthenes [Greek poet C3rd BC] says that the ram itself removed its golden fleece, and gave it Phrixus as a memorial, and then came of its own accord to the stars; for this reason it seems somewhat dim, as we said before . http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html
the Theoi projectは,牡羊の最期について,次のようにまとめています.
おそらく,このエラトステネスが語ったとする記述に重きを置いたのでしょう.
「牡羊はプリクトスを,黒海の果てコルキス(古代グルジアの王国)まで送り届け,少年に自分を神々の生け贄とし,アレースの手袋の中に自分の毛皮をいれるよう指示しました」
http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html
yachikusakusaki.hatenablog.com
牡羊の生まれ.
この空飛ぶ黄金の毛を持った牡羊は,ポセイドーンの息子だったという記載があります.
空飛ぶ天馬,ペーガソスの誕生を思い起こさせるお話です.http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/05/09/025522
偽ヒュギーヌス 神話集(Fabulae)
http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html
テオパネーは,最も美しい乙女で,Bisaltesの娘でした.沢山の求婚者が,彼女を手に入れようとしていたとき,ネプチューン(ポセイドーン)が彼女を連れ去り,Crumissaの島まで運びました.求婚者たちは,彼女がそこに留まっていることを知り,船を確保して,Crumissaまで急ぎました.
彼らを欺くために,ネプチューンはテオパネーをとても美しい牝羊に,自らを牡羊に,そして,Crumissaの市民を家畜に変身させました.求婚者たちがそこについた時には,人間を見つけることはできず,家畜の群れを解体処理し始め,食べてしまいました.
ネプチューンは,家畜に変身させた人間が殺されるのを見て.求婚者をオオカミに変身させました.
そして,ネプチューンは,牡羊のままでテオパネーと交わり,黄金の毛を持つ牡羊(Aries Chrysomallus)を産みました.この牡羊が,プリクトスをコルキスまで運び,彼の毛皮はマーズ(アレース)の手袋にかけられ,イアーソーン(ジェイソン)が持ち去ったものとなります.
BIRTH OF THE GOLDEN-FLEECED RAM
Pseudo-Hyginus, Fabulae 188 (trans. Grant) (Roman mythographer C2nd A.D.) :
"Theophane, a most beautiful maiden, was the daughter of Bisaltes. When many suitors sought her from her father, Neptunus [Poseidon] carried her off and took her to the island of Crumissa. When the suitors knew she was staying there, they secured a ship and hastened to Crumissa. To deceive them, Neptunus changed Theophane into a very beautiful ewe, himself into a ram, and the citizens of Curmissa into cattle. When the suitors came there and found no human beings, they began to slaughter the herds and use them for food. Neptunus saw that the men who had been changed to cattle were being destroyed, and changed the suitors into wolves. He himself, in ram form, lay with Theophane, and from this union was born the Golden-fleeced Ram (Aries Chrysomallus) which carried Phrixus to Colchis, and whose fleece, hung in the grove of Mars [Ares], Jason took away." http://www.theoi.com/Ther/KriosKhrysomallos.html