わし座3 ユーピテル(ゼウス)は,成人すると,ティターンと戦うことを決心して勝利祈願の生贄を捧げようとしたところ,鷲を見つけます.吉兆と考えたユーピテルは,鷲を星々の間に置きました.(偽ヒュギーヌス「天文詩」)/ユーピテル(ゼウス)は,彼を哀れみ,彼女がアケアロス川で水浴びしているときに,鷲をおくって,彼女の履き物をとって----

わし座のギリシャ神話

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星座図鑑・わし座

 

the Theoi project のサイトでは,わし座の候補が,六つ挙げられています. 

Star Myths | Theoi Greek Mythology

アプロディーテーの鷲 EAGLE OF APHRODITE

② プロメーテウスの鷲 EAGLE OF PROMETHEUS

③ ゼウスの鷲1 EAGLE OF ZEUS 1 

(ハンサムなトロイの王子ガニュメーデースを天に掴み取るために送った鷲. The eagle which Zeus sent to snatch the handsome Trojan youth Ganymedes up to heaven.)

④ ゼウスの鷲2 EAGLE OF ZEUS 2

ティターンとの戦いを始めるにあたって,祭壇に生贄捧げたとき,吉兆としてゼウスの前に現れた鷲. An eagle which appeared to Zeus as a sign of good omen when he was sacrificing on an altar prior to the commencement of his war against the Titans.)

⑤ ゼウスの鷲3 EAGLE OF ZEUS 3

(ヘルメースがアプロディーテーに求愛し,彼女はそれをはねつけました.ゼウスは息子ヘルメースをかわいそうに思い,鷲を送って彼女の履き物をつかみとらせ,その履き物をヘルメースに与えます.その履き物を取引に使って,彼女の好意を得ました.)When Hermes was wooing the goddess Aphrodite she spurned his advances. Zeus, pitying his son, sent an eagle which snatched away her sandal and delivered it the god, which he used to barter for her favours.)

⑥ メラプス(?) MEROPES

 

わし座2 ギリシャ神話でわし座となった鷲の候補は,6.その内4つは,ゼウスが関わる鷲.鷲はゼウスのシンボルアニマルです.わし座の鷲として最も多く取り上げられているのは,ハンサムなトロイの王子ガニュメーデースを天に掴み取るためにゼウスが送った,もしくは,自ら変身した鷲. “かつて,神々の王ユピテル(ゼウス)が,トロイアの少年ガニュメデスへのおもいに焦がれたことがある. そして,自分の正体をさらすよりは,別のものになりたいと考えて---”(変身物語) - yachikusakusaki's blog

yachikusakusaki.hatenablog.com

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GANYMEDE (Ganymedes) - Greek Cup-Bearer of the Gods 

 

わし座3

 

わし座となった“ゼウスの鷲(AETOS DIOS)”としては,三つのエピソードの関わる鷲が取り上げられています.

昨日取り上げたガニュメーデースを掠奪した鷲(③)は,ゼウスが変身した鷲であったという物語が一般的になっていますが,わし座2 yachikusakusaki's blog

ゼウスが送り込んだ鷲という話も伝わっています.

“ガニュメーデースをその美貌のゆえにゼウスが鷲を用いて掠い,天上で神々の酒注ぎとした.”

(アポロドーロス/高津春繁訳 ギリシャ神話 岩波文庫

 

 

ティターンの戦いを前にして現れた鷲(④)

:一説にはガイアが,以前,産みだした鷲ともされ,

わし座にあげられたとする物語は,偽ヒュギーヌス「天文詩」に記述されています.

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EAGLE OF ZEUS (Aetos Dios) - Giant Eagle of Greek Mythology

 

偽ヒュギーヌス「天文詩」2. 16

Naxicaを著したアグラオステネ(Aglaosthenes 古代ギリシャの詩人/史家・生年不明)は,次のように書いています.

ユーピテル(ゼウス)は,クレタ島からナクソス島に密かに連れ去られ,そこで育てられました.

成人すると,ティターンと戦うことを決心して勝利祈願の生贄を捧げようとしたところ,鷲を見つけます.吉兆と考えたユーピテルは,鷲を星々の間に置きました.

 

Pseudo-Hyginus, Astronomica 2. 16 (trans. Grant) (Roman mythographer C2nd A.D.) :

"[The constellation] Aquila (the Eagle) . . .

Aglaosthenes, who wrote the Naxica, says that Jove [Zeus] was taken secretly from Crete, brought to Naxos, and there nourished.

After he came to man's estate and wished to atack the Titanes in war, he sighted an eagle as he was sacrificing, and considered this an omen, he placed it among the stars."

 

偽ヒュギーヌス「天文詩」には,

ヘルメースのアプロディーテーへの求愛に,ゼウスが鷲を使って助け,その行いの報償に星座となった話(⑤)も

 

偽ヒュギーヌス「天文詩」2. 16

マーキュリー(ヘルメース)は,ヴィーナス(アプロディーテー)の美しさに心を動かされ,恋におちてしまいます.そして,彼女が親切な行為を全く許さなかった時,ひどく落ち込んでしまいました.ユーピテル(ゼウス)は,彼を哀れみ,彼女がアケアロス川で水浴びしているときに,鷲をおくって,彼女の履き物をとって,エジプトのアミタニア(Amythaonia)運び,それをマーキュリーに渡しました.ヴィーナスは履き物を探して,彼女を愛しているマーキュリーのもとにやって来ました.彼は望みを果たし,報償として,鷲を空に星座として置いてやりました.

Pseudo-Hyginus, Astronomica 2. 16 (trans. Grant) (Roman mythographer C2nd A.D.) :

"Mercurius [Hermes] stirred by Venus's [Aphrodite's] beauty, fell in love with her, and when she permitted no favours, became greatly downcast, as if in disgrace. Jove [Zeus] pitied him, and when Venus [Aphrodite] was bathing in the river Achelous he sent an eagle to take her sandal to Amythaonia of the Egyptians and give it to Mercurius [Hermes]. Venus [Aphrodite], in seeking for it, came to him who loved her, and so he, on attaining his desire, as a reward put the eagle in the sky [as the constellation Aquilla]."

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