新型コロナウイルス 出口戦略は(3)
5月10日(日) 午後9:00~午後10:00
5月16日(土) 午前10:00~午前11:10
WHOシニアアドバイザー 進藤奈那子
国際部デスク 虫明英樹,アナウンサー 合原明子
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/05/15/000500
矢島「日本経済の体力にとっても,今,ギリギリの状況だと言えると思います」押谷「経済的な活動を戻していくにあたって“これだけ守っていればいい”というようなガイドラインは存在しません」「解除の方法というのは,流行が拡散していくのを抑え込むよりも,はるかに難しい判断を迫られる.部分解除しても,ある程度,感染は起こります.ゼロリスクはないウイルスなので.じゃあ,それをどうやって判断するのか.誰が判断するのか」
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/05/16/000500
西浦教授の簡易モデルによるシミュレーション:自粛前の生活に戻すと,およそ一ヶ月後には新規患者数が4月のピーク時を超える.5月末まで現状の対策を続け,その後は集団感染が起こりやすい環境での人との接触を回避し二次感染を自粛前の半分に減らせば,低い水準を維持できる.「一年間,しばらくこの感染症とつきあわないといけないので工夫の積み重ねを皆さんとやっていければ」 付録;緊急事態宣言解除目安関連記事
「ここからは,専門家会議副座長尾身茂さんからもお話を伺います」
----中略
虫明「-------都内の患者数減ってきていると思うんですけど,30人なのか,20人なのか,なにか,判定の根拠っていうものはあるんでしょうか?」
尾身「いろんな事考えますけど,そもそも,この緊急事態宣言を出したときの理由が,オーバーシュートを一度さげて,医療の崩壊をさげて,クラスターの封じ込めができる,クラスター対策ができるレベルまで,下げるということが,大きな理由でしたので,そういうことも考慮して,最終的な目安を決めていく.
ただ,一つの目安だけで決めることはありませんので,いろんなことを総合的に,判断して決めたいと思っております」
虫明「クラスター対策できるようになるまでと.さきほど,矢島さんの方からも,今企業動けないんだと.どの時点になったら,どの程度の動きができるのか,先の見通しを示して欲しいという切実な声もあったですけれど,これについてはいかがでしょう」
尾身「緊急事態宣言を解除したからといって,全くガードを下げるというわけにはいきませんね.ガードを下げれば,必ずまたリバウンドが出てきてしまうので.そういう意味では,今,ポストコロナとか,ウィズコロナ,コロナと共にとか言われていますけれど,私は,感染症対策をしっかりやると同時に,社会・経済をどう維持するかという観点,両立するということが極めて重要で.
今まで,この感染症は新しい未知の感染症ということで,我々,公衆衛生・感染症の専門家が中心に政府に提言をしてきたわけですけど,このフェーズになりますと,社会,あるいは経済の専門家も,独立して政府に提言をしていただければと.そういう時期に来たんではないかと思っております」
合原「政治行政システムが専門の牧原出さんとも中継を結んでいます.
牧原さん,新型ウイルスへの対応にあたって,本来専門家からのデータ,助言を元に決定すべきは政治であるという発言を繰り返しなさっています.出口戦略,ますます難しい判断を求められますが,政治の役割をどのように考えていますか」
牧原「この問題は,やはり,政府と専門家と市民,この三つがどう結びつくかっていうことが問われていると思うんです.
尾身先生がおっしゃったように,今までは新しい感染症をどう抑え込むかということが最大の課題でありましたから,医療専門家の役割が非常に大きかったわけですけど,これからは出口戦略となりますと,経済とか教育とか多くの分野が関わってくるわけですね.
特に長い期間がかかるとなると,地震とか集中豪雨とか,複合災害の可能性もやはり考えていく必要がある.
こういったいろいろな分野をどう総合的に調整するかというのが政治の役割だと思います.従って,やはり今尾身先生おっしゃいましたように,現在在るような感染症中心の専門家会議とは別に,様々な分野の専門家が関わるようなそういう仕組みを考えなければいけないところだと.
ところが,これまで感染症が大きな問題だったものですから,政府の説明というのは,どちらかというと感染症専門家の意見を受けて決定したという内容を繰り返してきたんですけど,やはり,国レベルの専門のあり方については,政府と専門家の間で決定と責任をはっきり分けると.
専門家は科学的中立のもとに諮問を行う.政府は決定と責任を行う.その原則をもう一度確認して,制度のあり方を点検することが必要になってくると思います」
虫明「政府のあり方を点検することが必要と.そういうわけですね.
今日は,スイスのジュネーブから,WHOのシニアアドバイザー,進藤奈邦子さんとも中継がつながっています.進藤さん,検査態勢が不十分などの理由で,日本の対応の遅れを指摘する声もありますけれども,世界的に見て日本のここまでの対策,どうご覧になっていますか」
進藤「日本では,相当早くから患者さんが発生したにもかかわらず,非常に低いレベルでずっと抑え込んできていて,まあ,こういう現象は世界的に見ると,ほぼ奇跡と見られてきたわけです.
この理由は,私として考えますのは,日本には,世界から,もう仰ぎ見られるような感染症の専門家がいらっしゃって,その方たちが陣頭指揮を執って来られたこと.これがまず一つ成功の理由だと考えていますし,それから,国民の高い衛生意識,そして感染症に対する理解,これは,毎年のインフルエンザを通して,もうよく分かってきたことですけど,これがきちんとしていたことが理由ではないかと考えています.
こんなにすばらしい日本の対策なんですが,さきほど死亡者を見ていただいたところでも分かると思いますけど,欧米諸国に比べて圧倒的に日本では死亡が少ないと.インフルエンザのパンデミックでも見られたことなんですけど,世界からもジャパニーズミラクルみたいにね,考えられています.
緊急宣言を出さなければいけなかったことの背景は,今,尾身先生からうかがいましたが,日本では,SARSあるいはMARS,中東呼吸器感染症候群ですが,こういったことで(の感染がなかったため),いってみれば本土決戦になったことがなかったわけです.
お隣の韓国はMARS,そして中国や台湾,シンガポールではSARSの大激震を味わっていますから,一旦こういう感染症が出た場合,国民の人たちの注意度,参加が十分に行われていたわけです.
ところが,日本はこれだけ人口が多く,人の移動の多い国ですし,世代によっては,トップからの声がなかなか届かないような場所もあるわけですね.そういう所に十分な注意喚起ができなかったことを背景に出されなければいけなかったとは思いますが,このショック療法が国民の中にいきわたって,今や皆さんがこの先を見つめているという状況なので,解放に向かって積極的,あるいは建設的な対策が立てられるのではないかと私たちの方では期待しております.
ただ,検査の遅れは,私たちは間違っていると思ってます.
けれど,日本の戦略的検査は高く評価しています」
「世界では,都市封鎖など,日本よりはるかに厳しい制限をしいてきたわけですが,今,それを緩和する動きが進んでいます.
どのような根拠や判断に基づいて,出口戦略を行おうとしているんでしょうか」
中国
---中略
社会活動を再開させる上で,中国が切り札としているのが,ビッグデータを利用した個人情報の管理システムです.
観光地の入場ゲートの前,訪れた人たちは,皆,スマートフォンでQRコードを読み取ります.すると,個人のID番号と,当局が収集した移動履歴などのビッグデータが照合され,感染のリスクが判定されます.最近,感染者と濃厚接触があったり,感染が拡大している地域に滞在したりしていたことが判明すると,リスクが高いとして,入場することはできないのです.
全国に導入されているこのシステム,プライバシーと引き替えに,感染のリスクを徹底して削減しようとしています.
観光客「個人情報は出したくないけど,安全のために国に協力すべきです」
しかし,それでも,感染を全て防ぐことはできません.
東北部,黒竜江省の省都ハルビン.居住地域のまわりは,フェンスで封鎖されていました.
取材者「なぜ封鎖されているの?」
ガードマン「この前,感染者が出たんだよ」
ハルビンでは先月,アメリカからの帰国者を感染源とした50人を超える集団感染が発生.さらに省内では,国境を接するロシアからの入国者に感染が発覚するケースが急増.
再び,全ての居住地域を封鎖し,出入りを厳しく管理する措置を取りました.
ガードマン「通行証はありますか」
市民「私の家はここではありません.ここに住む母に魚を届けたいんです」
ガードマン「住民以外は入れません」
個人の権利を制限する,国家の強い権限で,第二波を食い止める取り組みを続けています.
続く