栗 基本情報3 世界の栗 栗は,南欧,トルコ,東南アジア,東アジアで何千年も主要な食べ物でありつづけ,穀物があまり育たない地域では,穀物の代わりになってきました.アレキサンダー大王や古代ローマ人はヨーロッパを縦断して栗の木を植えました. 現在は,中国がダントツ1位の生産国.2位,3位にはトルコ,韓国. 日本も健闘して第8位.ヨーロッパでは,イタリア,ギリシャなどがトップテン入り.

沢山の栗が,青果売り場に並ぶ季節.

梅沢富美男東野幸治まんぷく農家メシ!先週10月13日は,選「くり~埼玉県日高市~」

f:id:yachikusakusaki:20181020235935j:plain

http://www4.nhk.or.jp/manpuku/3/ 

f:id:yachikusakusaki:20181020235953j:plain

https://twitter.com/hidakacity_pr/status/945490395101663232

 

縄文時代,栗はクルミと並んで主食の地位にあり,日本書紀ではその栽培が奨励され,万葉集古事記にも取り上げられています.

栗 基本情報1 日本のクリ第一回「縄文初期にはそのまま食べられる栗とクルミが主食」(石毛直道) yachikusakusaki's blog

 

日本栗は日本と朝鮮半島に生育する品種で,ヨーロッパや中国のものとは異なります.

シバグリが選別・改良されて生まれたとされ,現在の主力品種は「筑波」「丹沢」「銀寄」.

主要生産県は茨城,熊本,愛媛.「渋皮がむきにくい」という日本栗の欠点を改良した品種も生まれてきています.

栗 基本情報2 日本のクリ第二回.日本栗は日本と朝鮮半島に生育する品種 - yachikusakusaki's blog

 

今日は,世界の栗を見ていきます.

 

世界の栗の歴史

(中国における栗の利用の歴史は,ウェブ上では見つけられませんでした)

 

ヨーロッパの栗:

英語版ウィキペディア Chestnut - Wikipedia から.

 

日本の縄文前期主要食物であった栗は,ヨーロッパでも主要炭水化物源として利用していた時代/地域があったようです.

 

ヨーロッパへの栗の伝来は,小アジアのサルディス(現材のトルコ共和国マサニ県にあった古代都市)からとされ,サラディアンナッツと呼ばれていました.

The sweet chestnut was introduced into Europe from Sardis, in Asia Minor; the fruit was then called the Sardian nut.

 

栗は,南ヨーロッパ,トルコ,東南アジア,東アジアで何千年も主要な食べ物でありつづけ,穀物があまり育たない地中海の山岳地域では,穀物の代わりになってきました.

It(chestnut) has been a staple food in southern Europe, Turkey, and southwestern and eastern Asi for millennia, largely replacing cereals where these would not grow well, if at all, in mountainous Mediterranean areas.

 

人間による栽培の証拠は,おおよそ紀元前2000年から見られます.

アレキサンダー大王や古代ローマ人は,様々な戦闘の間.ヨーロッパを縦断して栗の木を植えました.

ギリシャ軍は,栗のおかげで,小アジアから無事撤退できたと言われています.

Evidence of its cultivation by man is found since around 2000 BC.[32] Alexander the Great and the Romans planted chestnut trees across Europe while on their various campaigns. A Greek army is said to have survived their retreat from Asia Minor in 401–399 BC thanks to their stores of chestnuts.

 

森林に居を構える共同体は,小麦粉にほとんど接することができなかったので,ジャガイモの導入まで,主要炭水化物源を栗に依存していました.

Until the introduction of the potato, whole forest-dwelling communities which had scarce access to wheat flour relied on chestnuts as their main source of carbohydrates.

 

 

世界の栗生産

これも,英語版ウィキペディアから.Chestnut - Wikipedia

現在は,中国がダントツ1位の生産国で,他の国を圧倒しています.そして,現在もその生産は増え続けています.

 

f:id:yachikusakusaki:20181022010318j:plain

f:id:yachikusakusaki:20181022010333j:plain

 Chestnut - Wikipedia

 

かなり水をあけられた2位,3位にはトルコ,韓国.

日本も健闘して第8位.

ヨーロッパでは,イタリア,ギリシャ,スペイン,ポルトガルなどがトップテン入り.

 

それぞれの国で生産されている栗の主な品種は,前回のブログにも記載したように,異なっていると考えられます.

 

中国

中国栗 C. mollissima

(小粒で渋皮がむきやすく,甘みも強いため焼き栗に適し,「天津甘栗」などに使われているのはほとんどこの中国栗です)

 

トルコ&ヨーロッパ諸国

ヨーロッパ栗 C. sativa

(小粒でマロングラッセなどを作るのに適します)

 

韓国,日本

日本栗 Castanea crenata (英語ではJapanese/Korean chestnut と呼ばれる場合もある)

(大粒で水分も多いため,茹でて調理するのに適しています)

 

しかし,当然のことながら,それぞれの品種が,国境を越えて栽培されることがあります.

たとえば,ヨーロッパ栗はインドでの栽培も行われるようになっていました.Chestnut - Wikipedia

そして,日本の栗栽培が減少した時期,韓国からの輸入が増えたのに加えて,中国でも日本栗が栽培され,中国産「日本栗」の日本への輸出も始まったとのことです.(元木, 靖 世界のクリ生産の動向について―温帯ユーラシアの東部と西部の比較― 立正大学経済学季報63)