小学校の卒業式に行ってきました.
何年ぶりでしょうか---.
冬の寒さが戻ってきた体育館の中,震えながらも,卒業生/在校生による,見事な歌のパフォーマンスにややうるうる.
もっとも涙にまみれていたのは,送り出す側の担任の先生でしたが----
式の進め方は,以前とはずいぶん異なったものでしたが,概ね私の想定内のもの.
驚いたのは,子どもたちの服装.
袴姿がかなり多い.男子もいましたが,何と言っても目立つのは女子児童.
帰宅後,朝目を通せなかった東京新聞朝刊を開けると,大きな見出し;
「小学生も袴っ子」
「ハイカラ卒業式 増えてます」
「母も一緒に選ぶ楽しみ」
以下,一部採録します.
大学生には定番の袴姿で卒業式に出席する小学生が増えている.保育園にも人気が広がる気配があるが,費用がかさむとして自粛を呼び掛ける小学校も.
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「去年の卒業式で着ていた先輩がかわいかった.当日も友達と写真を撮り合おうって話している」----
クラスでもほとんどの女子が袴を着たいと話しているといい,数点を試着して目当てを決めた.
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(着物販売レンタル店)
同店では,卒業式用の袴を予約する小学生が5年ほど前から年々増加.今年も前年比15%ほど多く予約が入った.
店長は「理由ははっきり分からないが,先輩の袴姿に憬れる子も多いようです.七五三なども含めて,家族でイベントを楽しむ気合も年々増している印象がある」と話す.
貸出料は着物と袴のセットで四万二千円から.
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学校関係者によると,袴姿が目立ち始めたのはここ数年.
ネット上では「お金がかかる」や「着慣れないのに,トイレが大変」といった議論も起きている.経済的な理由で着られない家庭に配慮し,愛知県内などで自粛を呼び掛ける学校も.
神奈川県内の小学校関係者は「和装の増加で保護者の意見も割れ,対応に困っている」と話す.
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袴はどのように女性達に着られたのか.
弥生美術館外舘恵子学芸員(33)
男性の服装だった袴は明治期以降,女学校で通学服として導入され始めます.着物は裾が乱れやすいですが,袴は動きやすく,学校生活に適していました.
女学生は袴姿で運動や修学旅行,山登りをしました.女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)が1898年に採用すると,全国的にもさらに広がります.
女学校に通えるのは,一握りのお金持ちだけ.女性に教育は必要ないと考えられた時代で,袴は新しい時代の象徴として女性の憧れでした.
しかし,洋服の台頭で昭和初期にはだんだん着られなくなります.
再び脚光が当たったのは,女子大生が卒業式で着始めた1980年代.
大正期を舞台に袴姿の女学生を描いた人気少女漫画「はいからさんが通る」の影響は大きかったと思います.男児雇用機会均等法が85年に制定されるなど,女性の社会進出に注目が集まった時期に着られたのは大正期と似て興味深いです.
最近は袴を着たヒロインの漫画や映画が人気です.学生時代などに袴に親しんだ思い出があれば抵抗感はより薄く,娘と選ぶのを楽しみにしている母親も多いのかもしれません.
文・中村真暁 / 写真・圷真一 / 紙面構成・甲斐毅
2018年(平成30年)3月20日(火曜日)11版
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