沖縄生まれの布,芭蕉布. 始まりは,およそ600年前の琉球王国の時代.風通しが良く,高温多湿の沖縄に最適な布として愛されてきました. 素材は,バナナの仲間の植物から取り出した繊維そのもの. 壺一:“自然をまとう 沖縄の糸” 一本一本作られた芭蕉布の糸.島の恵みと技の賜物です. NHK 美の壺 「沖縄の風をはらむ芭蕉布」1

沖縄の風をはらむ芭蕉布

NHKBSプレミアム 美の壺File445
2020年10月7日(水)

(初回 2018年5月18日(金))

【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

f:id:yachikusakusaki:20201123233229j:plain

「沖縄の風をはらむ 芭蕉布(ばしょうふ)」 - 美の壺・選 - NHK

 

草刈正雄「え〜,どんなのが来たのかな」

 

草刈さん,それどうしたんですか?

「いやね,妻がね,涼しい着物が欲しいってずっと前から言ってましてね,それでね,沖縄の友達にね,何か良いものはないかと相談したところ,これを送ってくれたんですよ.うれしいね,友達っていうのは」

 

素敵な着物ですね.

「え〜いいね〜.沖縄の布かな〜? ---芭蕉布.バショウフ?」

 

沖縄生まれの布,芭蕉布

始まりは,およそ600年前の琉球王国の時代.風通しが良く,高温多湿の沖縄に最適な布として愛されてきました.

素材は,バナナの仲間の植物から取り出した繊維そのもの.

糸を作るところから,1枚の布に織り上がるまで,全て手作業で作られています.

沖縄の人と風土に育まれた布.芭蕉布

今日はその魅力をご紹介します.

f:id:yachikusakusaki:20201123233331j:plain

 「沖縄の風をはらむ 芭蕉布(ばしょうふ)」 - 美の壺・選 - NHK 

 

東京に芭蕉布のファンという人がいます.

「週末には着物を着て出かけるのが一番の楽しみ」.そう語る会社員の戸屋好江さんです.

ほかの着物も持っていますが,芭蕉布は特別な存在.

20年ほど前から集め始め,今では,その数11着.夏だけでなく,春や秋口にもまとうのだといいます.

「着てると,沖縄にそれだけで行けた感じの時がありますね.糸が本当に張りがあって,透明感がある.自然に生えている繊維が,そのまま着物になった感じ.光を当てるときらめくんですよね.きらっという感じ.光沢があるところが本当に美しいなと思います」

 

今日ひとつ眼の壺は

壺一,自然をまとう 沖縄の糸

沖縄県北部に位置する大宜味村(おおきみそん)喜如嘉(きじょか).人口は,およそ400.

現在,芭蕉布のほとんどが,この集落で作られています.

f:id:yachikusakusaki:20201123233427j:plain

http://okinawaclip.com/ja/detail/1914

 

集落の中には,芭蕉布の原料となる糸芭蕉の葉が広がります.

f:id:yachikusakusaki:20201123233455j:plain

https://bashofu.ti-da.net/e5039649.html

芭蕉は,バナナの仲間の植物.糸が取れるようになるまで,3年かけて育てます.

布に使われるのは茎の部分.

f:id:yachikusakusaki:20201123233534j:plain

 「沖縄の風をはらむ 芭蕉布(ばしょうふ)」 - 美の壺・選 - NHK 

毎年,10月から3月のはじめにかけて,刈り取りが行われます.

 

直系10㎝ほどの茎から,外側の皮を剥がし,中の繊維をより分けます.

f:id:yachikusakusaki:20201123233617j:plain

芭蕉布ができるまで|沖永良部芭蕉布協議会

「外側は太い糸で,ちょっと粗いです.中は少しやわらかくなって,一番中心は着尺(着物地)に使いますので,口割りする(切れ目を入れる)時に,やわらかさが感じられるものがあります」

 

芭蕉は繊維の硬さによって4種類に分けて使います.

外側は,テーブルクロスや帯,ネクタイなどに.

中心に近い,白くてやわらかな2種類が,着物に使われる部分です.着物一着分を織るためには,糸芭蕉が200本ほど必要になります.

 

糸になるまでには,まだまだ,幾つもの工程を経なければなりません.

まず,皮を灰汁(あく)で数時間炊き,柔らかくします.

f:id:yachikusakusaki:20201123233716j:plain

芭蕉布ができるまで|沖永良部芭蕉布協議会

 

灰汁とは,木の灰を水に混ぜたものの上澄み.これに含まれるアルカリ性の成分によって,組織が柔らかくなります.

強く炊きすぎると,繊維が切れてしまいます.ベテランでも,最後まで気を抜くことはできません.

炊きあがったものから,不要な部分を取り除くのも手作業.タケで作ったハサミでこそぎ落とします.

f:id:yachikusakusaki:20201123233754j:plain

芭蕉布ができるまで|沖永良部芭蕉布協議会

ここまで,丸2日.ようやく白い繊維が姿を現しました.

f:id:yachikusakusaki:20201123233853j:plain

芭蕉布ができるまで|沖永良部芭蕉布協議会

 

最後の工程が,苧績み(うーうみ)と呼ばれる作業.とりだした繊維をつないで,糸にしていきます.

繊維そのままでは,太さがバラバラ.これを織りに使いやすいように,細く裂き,結んでいきます.

f:id:yachikusakusaki:20201123233933j:plain

 「沖縄の風をはらむ 芭蕉布(ばしょうふ)」 - 美の壺・選 - NHK 

 

苧績み(うーうみ)のでき具合が,芭蕉布の仕上がりを大きく左右します.

芭蕉職人稲福千代さん「いい反物を作るためには,苧(うー,糸芭蕉を績む(うむ,つなぐ)時の糸の口,結び目をちゃんときれいに切るということ.そうした場合には,織る時もとても楽になります」

 

織り上がった時,糸の結び目は,布の表面に残ります.

これが芭蕉布ならではの味わいに.

稲福さん「織るよりも糸作りが大事なんですよ.いい糸を作れば,いい反物ができる.っておばあさんたちからも,先輩の方々からもよく言われてました」

一本一本作られた芭蕉布の糸.島の恵みと技の賜物(たまもの)です.

f:id:yachikusakusaki:20201123234016j:plain

 

https://www.noevir.co.jp/Botanical/t/ym/indexWebForm.aspx?ym=201707

 

f:id:yachikusakusaki:20201123000650j:plain