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千原ジュニアさん「やっぱり青コーナー背負うっていうことじゃないですかね.チャレンジャーであり続けるというね」('今モハメドアリについてどう考える?' と問われて)NHK総合クローズアップ現代+ 「モハメド・アリ “史上最強伝説”の真実 」より

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モハメッド・アリが亡くなった今年2016年.最後のブログを彼への追悼で締めくくりたいと思います.

NHK総合クローズアップ現代+ 「モハメド・アリ “史上最強伝説”の真実 」(No. 3820 2016年6月13日(月)放送 出演者 千原ジュニアさん(芸人)高橋源一郎さん(作家)杉浦友紀(キャスター))から,番組出演者とインタビューを受けた方々が語った言葉のみをピックアップした記録です.

(この番組の詳細なダイジェストは以下で読むことが出来ます.このブログ記事はその中の言葉を拾い,割愛されたいくつかを加え,順序を変えて整理たものです)

www.nhk.or.jp

モハメド・アリ

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・「最強は誰だ?」(あなただ!)「その通り」「観客は俺の対戦相手が空の果てまで飛ばされる姿を見るとはまさか思わない!」(口を閉じてくれないか?)「そんなのできっこない.できない,俺は最も偉大なボクサーなんだ」

・「Float like a butterfly.Sting like a bee」

・(なぜモハメド・アリと呼べと?)「これが本当の名前だからだ.カシアスは奴隷の名だ」

・『不可能なことなどない』『他人が望む人間ではなく,私は,私がなりたい人間になる』

・『だめだ,私は軍の要請には応じない.戦争は間違っている』「何の罪もないベトナムの人たちに爆弾を落としたり,銃弾を浴びせたりすることなどできない.」

・“人間が困難に立ち向かうとき,恐怖を抱くのは,信頼が欠如しているからだ.私は,私を信じる.”

 

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マイケル・J・フォックス「誰もが彼に夢中になるんだ」

追悼の言葉

ボブ・ディラン「地球上の全ての人間の心を喜ばせることを偉大だというなら,アリこそが本当に偉大な人物だ」

ポール・マッカートニー「親愛なアリ,私はこの人物を愛した.世界は真に偉大な人物を失った」

ペレモハメド・アリは私の友人にして崇拝する人物で英雄だった.悲しみはとてつもなく大きい.彼が神とともに平和であることを願う」

カストロ議長「偉大なボクシングのチャンピオンであったモハメド・アリの家族にお悔やみと連帯のメッセージを送ります」

 

千原ジュニア

「調子いい時,蝶より華麗に舞いますからね」(今見ても,すごさが伝わるが?)「これでいちばん重たいヘビー級ですから」

(ラップの原型になったとも言われる独特のしゃべり.リング外でも対戦相手を挑発するパフォーマンスは,アリから広まったといわれています.リズミカルな独特のしゃべり,どう思われますか?)「でも,これは受け継がれてくると思うんですよ.クレバーでおもしろい,応援したいなって思う選手は多かれ少なかれ,やっぱりヒーローインタビューがおもしろいですもんね」

(千原さんから見て,モハメド・アリのどこがすごいと思う?)「僕はもちろん,リアルタイムじゃないんですけど,ボクシングが好きになって,いろんな好きなボクサーに聞くと,もう,みんながもれなくアリの影響を受けてて,アリの映像とか発言とか,そこから後追いで見るんですけど,技術面はもちろん,最大の魅力は,最後までいろんなもの,いろんなことに対して挑戦者であり続けたってところじゃないですかね」

村田諒太選手

「アリさんっていう存在がすごいですね」「いろんな人が(アリを)コピーしましたけど,やはりアリにはなれない.その中にはやっぱりボクシングの華とか,人間性とか色んなものが含まれていると思うが,カリスマって結局は,先駆者であってコピーじゃないですえね」

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辰吉丈一郎選手

「ほんまにすごい人,ありえんぐらいすごい」「こうやってこういう.『アリ・シャッフル』といって,アリが考えた.ちょっとパンチが効いているんじゃないか,ボディが効いているんちゃうか,というときに,あのパフォーマンスをすると『あ,こいつまだ元気やん』となる.ボクサーにしても,色んなスポーツ界にしても,パフォーマンスをするじゃないですか.あれ,アリがたぶん初なんちゃうかな」

 

デイブ・キンドレッド(スポーツジャーナリスト)

ローマ法王に匹敵するほどの有名人だったアリが,アメリカで最も嫌われた男になってしまったのです.」(問題児だから?)「問題児という言葉では,1960年代にアリに向けられた嫌悪感は表しきれません」

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藤永康政日本女子大学准教授)

ローマオリンピックの金メダリストであり,弁舌も巧みで,面白い,顔は男前だというので,アリはヒーローだった.ところが手のひらを返された分だけ,アメリカ社会の反発は強烈だった」

 

ボブ・アラム(アリのプロモーター.パッキャオら,名選手を手がけたボクシング界の超大物)

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「国を敵に回せば,ボクサー生命が絶たれる」

「私は当時のジョンソン大統領に掛け合って,アリが戦場に行かなくて済むよう話をつけました.基地で兵士向けに試合を見せれば,ボクシングのキャリアは保証するという約束も取り付けていたのです.それでもアリは『だめだ,私は軍の要請には応じない.戦争は間違っている』と言ったのです」

 

カシアス内藤(元プロボクサー)

「自分と闘わなきゃいけないから,あの人は,やっぱり強い人なんだよね.自分が(タイトルを)剥奪された,何をされたといっても負けない.」

「休憩で(椅子に)座るときに,スッと背中を押してくれて,ハッと思ったよね.彼も疲れてるんだよ.それでも椅子を引いて俺を座らせてくれた.あれがたぶん本当の彼なのかもしれない」

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カリーム・アブドゥル・ジャバー(元プロバスケットボール選手)

「アリは揺るがぬ信念を持つべきだと言いました.周囲に妨害され,信念を曲げるよう迫られたときでも,屈してはならないということを訴えたのです.私は,アリの訴えていることが正しいと思ったのです」

 

千原ジュニア

(復活劇も強烈な印象を残しました.7年間,王座から遠ざかっていた32歳のアリ.白いトランクスがアリです.当時,無敗だった若きフォアマンと対戦.下馬評を覆しての勝利.「キンシャサの奇跡」と呼ばれました)「この時は確実に1ラウンドか,もしくは2ラウンドで,フォアマンが勝つだろうと.ここまで無敗ですからね,フォアマン.(ロープにもたれて,相手が打ち疲れるのを待っていた,狙っていたと?)1ラウンドであった時,これ,まじでやばいなって,さすがに思ったらしいですね,アリも.それでも,これはスタミナをロスさせるしかないと,打たれて打たれて,ずっと我慢して8ラウンド,まさかのね.まさに奇跡の一戦ですよね」

ボブ・アラム(アリのプロモーター)

「アリが再びチャンピオンに返り咲いたとき,アメリカだけでなく世界中で最も偉大な男になりました.アリはついに戦争や人種差別に対する人々の意識まで変えることができたのです.アリは正しく,我々全員が間違っていたのです」

「アリの登場で初めて,黒人たちは自分の考えを代弁してくれる人を得ました.アリなしには黒人初のオバマ大統領はいませんでした」

 

高橋源一郎

(ボクサーとしてだけではなく,リングの外でのアリの言動にも高橋さんは注目されてきたということですが?)「彼が一番活躍したのは,63年から67年ぐらいだと思うんです.僕がちょうど中2から高2ぐらいまでの間で,何であの頃,そんなにボクシングを見ていたんだろうと思うんですけど,1つは,もちろんボクサーとしてもかっこよかったんですが,さっき言った『大言壮語』.これは,こんな人がいるのかっていうふうに思っていたら,その後,ベトナム反戦運動とか,徴兵忌避の問題で彼がしゃべるようになったんですね.ですから,いわゆるボクサーとしての言葉でびっくりして,こんな言葉をスポーツ選手が言うのか.本当に,芸人さんというか,ミュージシャンみたいな言葉の選び方ですね.その後に,今度はアリのシリアスな言葉をスポーツ選手が言うのかということで,ちょっと驚いたっていうのが1つ.

でも,それがちょうど1960年代なんで,さっきボブ・ディランの話もありましたが,ボブ・ディランとかビートルズ,そういった60年代の文化の1つ,ことばの文化でもあったんですね.その中にすっぽり,実は彼の言葉っていうのが入っていて,特徴もあるっていうんで,これ逆にいうと,単にスポーツ選手がすげぇかっこいいこと,変なこと言ってるなっていうのが,そのうち『いや,これはすごい.60年代を実は代表しているのは,彼の言葉だったのかな』っていうふうに思うようになったっていうのは驚きですね」

千原ジュニア

「あの置かれている状況,今のまたアメリカの黒人という状況と全く違いますもんね.だから本当に,あれだけ大きいものをひっくり返した最初で最後の人じゃないですか.それをリング外でできた」

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 (VTRをどう見ましたか?)

千原ジュニア

「何なんでしょうね.どこからくるんでしょうね」

 高橋源一郎

「言葉を持っていた人だと思うんですけど,今からたぶん想像しにくいと思うんです.60年代のアメリカですから,特に戦争をやっている国で,その中で徴兵を拒否するっていうことは,今でも大変だろうって分かりますけれども,特にアメリカっていう国は,愛国心を持つことがスタンダードになっていますよね.だから当時,公民権運動で黒人の権利を獲得する運動をやってたんですが,そういう人たちだって一応,愛国心はOKというふうにした.

しかも,モハメド・アリベトナム戦争に行かないって言った理由もベトナムの人たちに,自分と関係ないベトナムの人たちに爆弾を落としたり,殺してはいけない』と言っていたんですけど,あれには,実は続きみたいなのがあって,実はアメリカはそんなふうにして,黒人にもある種の爆弾を落としてるんじゃないかと,同じことをやってるんだっていう論理なんですね.これは言ってみれば,言っちゃいけないことだったんです.つまりアメリカっていう国はこんな国なんだと,そうすると,つまりベトナムの人も黒人も一緒だっていうふうになったら,じゃあアメリカの国が分裂しちゃうじゃないですか.白人が,アジア人だからやっているんだみたいなニュアンスのことを.

とすると,えっ?っていう.つまり,単にアリは愛国心がなかったから戦争を拒否したっていうよりも,アメリカ人が実は見て見ぬふりをしていた,これに触れるとやばいっていったことを,非常に簡単な言葉で言っちゃったんです.それがまあ,いわば国家のげきりんに触れて,やっぱり人々もそういう意味では,なんとなく思ってきたんだけど,それを言ったらちょっとまずいよっていうことで,すごいバッシングを受けたんです.

結局この数年後に,世界中でベトナム反戦運動が盛り上がって,実際にアメリカは戦争をやめて,アリは正しかったっていうふうになって,そっちの印象が強いんで『いや,そんなのできるだろう』っていうふうになるんですけど,アリがあの行動を取った時に,ほとんど誰も支持しなかった

(その時は,むしろ悪になってしまった?)

「そうなんですよね.だからそれは,本当に孤独な戦いだったと思います」

千原ジュニア

「だから,国がいちボクサーからグローブを取り上げるって,どんだけでかいことかってことですよね」

高橋源一郎

「だからそういう時代だから,例えば作家とかミュージシャンとか,そういう言葉を持つ人はたくさんいたのに,実際にアリぐらいのことをして,アリのような目に遭った人はほとんどいない.いちスポーツ選手なのに,彼がそういう意味では国家を揺るがしたっていうことですね」

(どうしてあの厳しい状況の中で,信念を貫けたのかでしょかね.どのように考えますか?)

千原ジュニア

「本当にボクシングを愛している人間がグローブを取り上げられるって,めちゃくちゃ.結果3年ですけど,ボクサーの3年ってすごい長い,大きい3年ですから,むちゃくちゃつらかったでしょうけど,でもそれにも代えて,いや,間違ったことはできないっていう『信念』ですよね」

(思ったことを言えないっていうのは当時もそうだし,今でさえそうだと思うんですよ?)

高橋源一郎

「だからね,僕思うんですよ.アリが亡くなって,寂しい悲しい思う人は世界中にいる.僕らはある意味同世代の感覚があってあって,僕なんかよりファンは沢山いるんですけど,今思うと,--アリって最後パーキンソン病になって言葉も失ってあれだけしゃべった人が--.今の時代がどうだって考えると,アリが生きてた時代よりも,もしかしたらひどくなってるかもしれない.

アリが言ったのは,アメリカっていう王様は裸だってことだったんです.『こんな国なんだよ』って.それを言って世界をびっくりさせたんですけど,1人でね.今,どの国でもこんな状況になった時に,王様は裸だって言えるのか,と,アリみたいな人がいるのかと.お前がアリになれるのかと言われると,ちょっとね.微妙っていうふうに思って,ちょっとなんか,僕,アリが亡くなったの悲しいっていうよりも,アリが今いるんだろうか? お前,って言われた時にできるか? アリのような神経があるだろうか? っていうふうに思いますね」

 (もしかしたら,今アリが必要かもしれない.そんな感じといいますか.今,アリについて考えると,どういうことだと思いますか?)

 千原ジュニア

「やっぱり青コーナー背負うっていうことじゃないですかね.チャレンジャーであり続けるというね」

高橋源一郎

「大変ですね」

 

雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)雪の下で麦が芽をだす頃