江ノ島近くの片瀬地区には,古い和菓子屋さんが3軒ほどあります.
今日のブログで羊羹を取り上げようと思い立ち,羊羹がないか探したのですが---
「小さな和菓子屋さんの店頭には蒸し羊羹はあっても練羊羹はなかなか置いていない.作るのに手間がかかるからでしょう.私は大好きなのですが---」と思いつつ,
代わりに桜餅を購入.季節の味を楽しみました.
桜餅を食べながら思い出したのは---江ノ電藤沢駅から江ノ島に向かうすばな通りには,羊羹を専門にしている和菓子屋さんがあった!一度も買ったことがないお店なので忘れていました.明日,購入します.
羊羹を取り上げようと思ったのは,かなり前に録画してあったNHK「美の壺 羊羹」を見たことがきっかけです.引っ越し準備中,フランス洋菓子の記事を書き続けた,その続きという意味もあります.
というわけで,今日の話題は
https://www.nhk.jp/p/tsubo/ts/3LWMJVY79P/episode/te/14RNVW48JV/
冒頭の木村多江さんの素敵なナレーションは
「大切な人への贈り物.お茶の時間の彩りに.黒くてつややかな羊羹.日本人が愛して止まない和菓子の代表格です.
---
古くて新しい羊羹の魅力.探っていきましょう.」
続いて登場した太田達(とおる)さんは,一切れの羊羹には,特別な美が宿っているといいます.
撮影場所は京都上京区有斐齋弘道館.太田さんは,かつて多くの若者が学んだこの場所で講演活動なども手がける老舗和菓子店老松店主.
https://www.google.com/search?上京区有斐斎弘道館
「他のお菓子みたいな手を加えていない造形の中に,光と影があるわけですね.50グラムの立体造形に,手のひらにある宇宙,天空のようなものまで感じられるじゃないですか」
「まさに一期一会の光のアート.そういうふうに考えると奥が深い」
この時,映し出されていた羊羹の映像が素晴らしかった!
ナレーションは「黒くつややかな表面が,鏡のように万物を写し込みます.菓子器の中の羊羹は,漆黒の肌に金蒔絵が.」
そして,本当に金蒔絵を映し込んだ鏡のような羊羹の映像が流れました.
映像は,東京赤坂虎屋本店へ変わります.
ナレーション「創業は,室町時代後期の京都という,老舗和菓子店,東京赤坂とらや.
店頭には看板商品の洋館がずらにと並びます.」
https://www.google.com/search?東京赤坂とらや
https://www.google.com/search?東京虎屋 店頭 羊羹
https://nipponselect.com/product/虎屋本舗のようかん-本練りようかん・抹茶ようかん
なぜ,羊羹という名前がついたのか?現在の甘い羊羹になるまでの歴史,等の解説が美しい映像とともに流れました.
虎屋文庫上席研究員森田環さん
「羊羹はもともと中国の料理で,羊の羹(あつもの),羊の肉が入ったスープの事だったんですね.」
https://www.toraya-group.co.jp/corporate/bunko/activity/bunko-activity-yokan001
羊羹こぼればなし
羊羹はお菓子なのに、なぜ羊の字が使われているのでしょう?
意外にも「羊羹」の意味は,羊の羹(あつもの),つまり羊肉の汁物.
歴史をさかのぼるとルーツは中国で,鎌倉~室町時代に中国に留学した禅僧によって,日本にもたらされました.
本来,おもてなし料理の一つでしたが,禅僧は肉食が禁じられていたため,小豆や小麦粉,葛粉などの植物性の材料を使い,羊肉に見立てて作ったと考えられています.
室町時代後期の書かれた武家の作法書(続群書類従に収録),ここに「やうかん」の文字が.
このころ羊羹は僧侶だけでなく,公家や武家のあいだにも広まっていきます.
「一見すると,お菓子の羊羹のように見えるんですけれど,じつはまだ料理の羊羹で,甘くない羊羹でした」
虎屋に伝わる菓子の見本帳です.
江戸時代に一冊に砂糖の入った羊羹が描かれています.浜辺の入江を表した州浜型という蒸羊羹です.
現在の蒸羊羹は,餡につなぎとなる小麦粉を加え,さらに水で溶いた葛を入れ,小豆色の生地を型に流し込んでいきます.蒸籠(せいろ)に入れて蒸し上げると,あっさりとした甘さで,もちもちとした食感の蒸羊羹となります.
羊羹を劇的に変えていったもの,それが寒天でした.
天草などの海藻を原料とした寒天は,保水性や凝固力に優れています.
この寒天の特徴を取り入れたのが水羊羹.
水羊羹は更に進化します.
寒天に砂糖を加え煮溶かし,餡を入れて煮詰めると,練羊羹に.
https://news.nissyoku.co.jp/kojocho/tanakak20081113103946637
この店では,熟練の職人が,腕を振るいます.
「練り上げている内に,窯の中の状態が,寒天独特の艶,粘りが出てくる.」
寒天を使うことで,黒くつややかな練羊羹になります.これまでの和菓子にはない,独特のなめらかさと弾力が生まれたのです,
さらに練り上げることで水分が飛び,糖度が上がるため,飛躍的に日持ちがするようになりました.
練羊羹には極意があるそうです.
https://www.toraya-group.co.jp/corporate/csr/manufacturing
「羊羹の練り上げには,ここだというタイミングがあります.それは,羊羹にゃ文字を入れて,垂れ落ちるスピード,重さ,そこを見極めています.練羊羹の美味しさやつややかさの決め手となる一瞬なんです」
日本に渡ってきた羊羹が,練羊羹になるまで400年以上.
技は磨かれ練り上げられた羊羹となりました.