レアーがクロノスとの間にもうけた神々は6名.
ヘスティア,デーメーテール,へーラー,ハーデース,ポセイドーン,そして,ゼウス.
レアーが登場するギリシャ神話は,このゼウスの出生にまつわる物語が中心ですが----
レアー(Rhea)3 - yachikusakusaki's blog
http://www.theoi.com/Titan/TitanisRhea.html
その他の場面にもレアーは登場します.
その代表がいわゆる「ペルセポネーの略奪」.
ペルセポネー1 「ペルセポネーのブーケ」. - yachikusakusaki's blog ペルセポネー2 「ペルセポネーの略奪」の物語 キーとなる果物「ザクロ」の位置づけ「ホメーロス風讃歌」/「変身物語」のどちらか? - yachikusakusaki's blog ペルセポネー3 「ペルセポネーの略奪」 主役は農業と大地の女神デーメーテール.yachikusakusaki's blog ペルセポネー4 ペルセポネーの略奪は,ペルセポネーに冥界と地上では全く異なる神としての役割を与えます.魅力がぎっしり詰まった女神であることだけは確か. -yachikusakusaki's blog ヘカテー3 ペルセポネーの略奪では,デーメーテールとペルセポネーの最も信頼できる味方がヘカテーでした. - yachikusakusaki's blog
デーメーテールへの賛歌(ホメーロス風讃歌)では,冥界で再会を果たしたデーメーテールとペルセポネーに,ゼウスの約束を伝える役をレアーに与えています.
デーメーテールへの賛歌
四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』より (岩波文庫 )逸身 喜一郎 (翻訳), 片山 英男 (翻訳)
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こうしてその時ふたり(デーメーテールとペルセポネー)は一日中,心を一つに結んで抱きあい,互いの胸と心をあたためあった.心は苦しみを忘れ,ふたりはともどもいく度となく,相手から喜びを受けては,また返した.
そこへ,つややかな髪覆いのヘカテーが二人に近づき,尊いデーメーテールの娘神をかき抱いた.こうして女王ヘカテーは,娘神の先触れとも従者ともなったのである.
雷鳴とどろき眼光遠く及ぶゼウスは,ふたりのもとへ見事な髪のレアーを伝令として使わし,黒い衣まとう,デーメーテールを神々のもとへ連れてこようとした.
そして,不死なる神々の中で望むかぎりの誉れを得させることを請け合い,娘神には,巡りゆく年を三つに分けた一季は,暗く霞む冥界に充てられるものの,残る二季は母神や他の不死なる神々とともに暮らしてよいと認めた.
こう言うと,女神レアーはゼウスの命に従い,たちまちオリュンポスの頂きを後にして,ラーロスの野に到った.
かつては暮らしを支える豊かな土地だったが,今や暮らしを支えることもなく,草木を芽ぶかず,不毛に横たわる土地である.他でもない,美しい踵(かかと)のデーメーテールの謀(はか)らいにより,白い大麦を閉じこめていたのである.
だがやがては,春の訪れとともに,いっせいに長い穂が生えいで,地面に畦道(あぜみち)をふさいで重く穂が積み上げられ,束ねられる定めとなっていた.
この地に女神レアーが,実りをもたらさぬ高空からまず降りたつと,どちらも互いの姿を認めて喜び,心弾ませた.
そして,つややかな髪覆いのレアーはこう話しかけた.
「さあ我が子よ,雷鳴轟き眼光遠く及ぶゼウスがお呼びです.神々の一族のもとへおいでなさい.
ゼウスは不死なる神々の中で[(望むかぎりの)]誉れを得させることを請けあい,娘には,巡りゆく年[(を三つに分けた一季は)]暗く霞む[(冥界に充てられるもの,残る二季はそなたや他の)]不死なる神々とともに暮らして[(よいと認めました)]
[(この決定を約束し]みずからの頭で同意を示しておいでです.
だからさあ我が子よ,勧めを聞き入れ,行きなさい.
黒雲まとうクロノスの御子ゼウスと,あまり際限なく事を構えてはなりません.人間たちの暮らしを支える実りを,直ちに生え出させなさい.」
こう言うと,見事な冠のデーメーテールはそれに従い,直ちに肥沃な畑から実りを萌え出させた.
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