ヤマウルシの紅葉.秋を彩る最高の赤の一つでしょう.
私が住むところから眺めた紅葉の遠景で最も目立つ赤(今年は台風できれいな紅葉を見ることができませんが).
その多くがヤマウルシだとは長らく知らずにきました.
子供の頃一回ひどくかぶれた思い出があって,「ヤマウルシには近づくな」と悪の樹の象徴のように思っていた私.遠くから見る美しい山々のポイントの赤がヤマウルシと分かったとき,心の中で「ゴメン,ヤマウルシさん」.
更に無知だったのは,ヤマウルシがウルシを採る樹だと長らく思っていたこと.
別の樹木なんですね.
ヤマウルシの樹液も漆塗りに使えるそうですが,十分量の樹液を採るに細すぎる.
ウルシの方は,傷をつけて樹液を集めるのに十分の太さを持っていて,おそらく中国から入ってきたと言われています.ウルシも日本にあったとする説もあるそうですが,根拠はあまりないよう.ウルシ - Wikipedia (最近,ウルシ以外にも様々な事柄が,やや無理筋にもかかわらず「日本発祥説」となっているような気もします.)
「漆」の漢字はもちろん中国由来.現在,中国語では「ウルシ」以外に,「ニス,ペンキ,ラッカー,塗料」の意味も持っているそうです.(白水社 中国語辞典 漆の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典 )
ウルシという日本語の由来には,様々な説があって,樹木図鑑(樹木図鑑(ヤマウルシ) )では
「山に生えるウルシの意.ウルシについては,潤液(ウルシル)の略,潤為(ウルシ、光沢のでる作業)の意,塗汁(ヌルシル)の略などの説がある」
とのこと.
ヤマウルシは,
バラ類 Rosids,ムクロジ目 Sapindales,ウルシ科 Anacardiaceae,
ウルシ属 Toxicodendron,
ヤマウルシ Toxicodendron trichocarpum.
ウルシはToxicodendron vernicifluum で別の種.
そして,同じウルシ属には,ハゼノキやヤマハゼが.ハゼノキの紅葉は,ヤマウルシに負けません.
関西在住時によく見かけました.友人に教えてもらうまで,名前も知らず,「あ〜きれいだな」と少し思うだけで通り過ぎていましたが.
ハゼノキ - 庭木図鑑 植木ペディア http://www.geocities.jp/tama9midorijii/ptop/yamap/yamahaze.html
ハゼノキ,ヤマハゼとウルシ,ヤマウルシは葉などそっくりで,見分けるのは難しいこともあるようです.ウェブ上に見分け方が沢山掲載されています.例えば,
葉と枝による樹木検索図鑑−類似種の見分け方 他:ハゼノキ-ヤマハゼ-ウルシ-ヤマウルシ
そして,ハゼやヤマハゼもかぶれやすいとか.
ハゼノキは関西では結構どこにでも植えられていましたが---.
さらに,属の名前Toxicodendron は,ギリシャ語で「毒の樹」とのこと.Toxicodendron - Wikipedia
「毒」はアレルギー性接触皮膚炎を起こす作用のことで,ウルシ属の植物はその作用が強いようです.アメリカではツタウルシpoison ivy (T. radicans),やwestern poison oak (T. diversilobum) が問題とされているとのこと.Toxicodendron - Wikipedia
ツタウルシ - Wikipedia http://www.geocities.jp/kinomemocho/sanpo_tsutaurushi.html Toxicodendron diversilobum - Wikipedia
「悪の象徴」の樹のように思っていたのは私だけではなく,世界中で毒の樹と恐れられていた?
一方,科の名前Anacardiaceae を調べてみたらビックリ.
Anacardium カシューナッツが元の形.
Anacardium:ギリシャ語で,カシューナッツのことで,似ている+心臓.この実が鳥の心臓に似ているからとのこと.
(Similar to + heart; the fruit of this plant being thought to resemble the heart of a bird.
http://www.mondofacto.com/facts/dictionary?anacardium)
ウルシ科には,カシューナットノキ属(何故かナッツではなくナットと表記されるようです)が属していた.さらには,マンゴー属まで!
https://www.researchgate.net/publication/304246985_Anacardiaceae_Phylogeny_Poster