「わかりにくいし,見えにくい.数週間前には,恐らくパンデミックの状態」「スピードを与えたのは人類.全てこのウイルスのスピードに人類がついていけてない.武漢を閉鎖した1月23日には,もう既に中国各地,世界各地に広がってしまった」「限られた感染者;喉に非常に多くのウイルスを持って必ずしも明確な症状がない人たち,が広げてしまうので,見えにくい」「今まで考えられてきたような感染経路ではない形で感染が進んでいる」押谷仁氏 BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」1

BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」1

2020年3月19日(木) 午後9時00分(50分),2020年3月28日(土) 午前0時20分(50分),2020年4月1日(水) 午後9時00分(50分),

 

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https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2416283/index.html

 

出演者ほか

【出演】東北大学大学院教授…押谷仁,国立環境研究所 室長…五箇公一,作家…瀬名秀明,【解説】中村幸司

 

中国・武漢市から広がった新型コロナウィルス感染症

発生確認からおよそ3ヶ月.世界中を震撼させている.

 

トランプ大統領「国家非常事態を宣言する」

 

WHOは,世界的な大流行パンデミックを宣言.

経済にも大きな影響が出ている.

いつまで,こうした状況が続くのか,人々は不安の中で暮らしている.

 

人類はこれまで様々な感染症と闘い,膨大な数の命が失われてきた.

そして,今,グローバル化が加速する中で,未知のウィルスが人類を襲う.

果たして,この危機を乗り越えることはできるのか?

 

今回,3人の専門家が徹底的に語り合った.

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東北大学大学院教授 押谷 仁

「非常に早いスピードで世界に広がってしまった.そのスピードを与えたのは人類だ」

 

国立環境研究所 五箇 公一(ごか こういち)

「これは闘い.まさにウイルスと戦争している状況になりますから」

 

作家 瀬名秀明

「過去の経験とは,全く違った想像力が必要とされる事態になってしまった」

 

 

ウィルスと人類との闘い.

今,私たちに求められているものは何なのか.歴史から学び,未来を見つめる.

 

瀬名「今日は専門の先生やNHK解説委員の中村さんと一緒に,お話ができればと思っています.

この一ヶ月二ヶ月で,急速に社会の状況も,変わっていってしまったなと.だから,気がついたら何か感染症が広まっていて,私たちもちょっとどういうふうに対応したらいいのか,分からなくなってしまった」

 

押谷「非常にこの感染症はわかりにくいし,見えにくい.

おそらく,11月には始まっていたと思われるので,11月下旬ぐらいから,4ヶ月位かけて広がっていて,中低開発国ではですね.検査が十分にできない国がたくさんありますので,もうすでに,中東はかなりの国で広がっていますし,アジアの相当な国で広がっています.

もう,すでに,数週間前には,恐らくパンデミックの状態だったと思います」

 

瀬名「五箇先生は,外来種の生物から,日本にもたらされるいろいろな感染症,そういったものに関してお詳しい

 

五箇「最近話題になったヒアリ.2017年になって初めてコンテナから発見されて,このタイミングでなぜヒアリが急に来だしたかというと,中国の経済がすごく発展して,荷物のやりとり,それから人のやりとりがすごく増えるという中で,ヒアリも必然的に入ってきた.

今回のコロナも,ウイルスそのものの力よりも,人の動く速度と距離,そういったものがものすごく縮んでいるというのが,一番大きな原因だと思いますね

 

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年間に航空機で移動する人は35億人.この15年余りで倍増した.

中国の経済成長も,地球規模の人の交流を更に加速させている.

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グローバル化が急速に進む中で発生したのが新型コロナウイルスだった.

表面の突起がコロナ=王冠に似ていることから名づけられたコロナウィルス.

これまでに6種類が発見され,その内4種は一般的な風邪の原因で,症状は軽い.

残りの2種は 

▽2003年にアジアで感染が広がったSARS(サーズ).野生のコウモリが由来

 2002〜2003年 SARS(severe acute respiratory syndrome重症急性呼吸器症候群) 

 感染者数 約8000人 致死率 約10%

 

▽2012年に中東で発生したMERS(マーズ).ラクダから人へ感染.

 2012〜 MERS(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus 中東呼吸器症候群)

 致死率 約34%

 

今回の新型コロナウィルスは未知のもの.

SARSやMERSほどの強毒性はないが,致死率はインフルエンザよりもはるかに高いとみられている.

 

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(ウイルス一般の解説 略)

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押谷「高齢者にとっては,季節性インフルエンザよりはるかに危ないウイルスで,このウイルスは,肺の中で増殖をして,ウイルスそのものが人を殺すので,これは,全く季節性インフルエンザとは違う.

亡くなる人は,20代30代はかなり少なくて,40代50代60代と上がっていって,80代,90代になると,非常に高くなる.ウイルスの増速を制御できる人にとっては,それほどひどいウイルス性肺炎を起こさない.ただ,年齢が上がるに従って,それが制御できない人たちが出てくる.そのことによって,重症化していく」

 

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https://www.mhlw.go.jp/content/000609467.pdf

 

瀬名「今回も,動物からおそらく入ってきたウイルスだろうと思われています」

 

五箇「中国南部に住んでいるいろんな種類のコウモリを調べると,コウモリ種ごとに特異的なウイルスが寄生しているわけですね.

ウイルスというのはそういう形で自然宿主(ウイルスと共生している生物)というものの中で,ある意味共生というか,閉じ込められているんですが,常に変異しているんです.それで,その変異がたまたま新しい宿主に出会ったときに,マッチングして一気にそこに中で広がるということを繰り返している.

今回も,おそらく野生生物の中に閉じ込められていたウイルスが,まさに人間がどんどん自然の中に入り込むという形で活動域を拡大していく中で,そういったウイルスが,人間に限らず,たまたまそこにいる家畜などに寄生すると,そこを介して,また変異を起こして人間に感染するタイプに変化する」

 

押谷「今回のウイルスは----,

もう,中国が世界にダイレクトに飛行機でつながってしまっている.武漢にも日本からフライトは,何便も飛んでいる.そういう中で,このウイルスは非常に見えにくいウイルスであると同時に,非常に速いスピードで,世界に広まってしまった.そのスピードを与えたのは人類なんです.グローバル化の名のもとに,これだけ人が移動している.もう,ここまでやってきたことは全て,このウイルスのスピードに人類がついていけてない.

武漢を閉鎖した1月23日には,もう既に非常に多くの中国各地,世界各地にウイルスは広がってしまった」

 

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新型ウイルスはなぜ見えにくいのか

▽感染してから確認まで時間がかかる:

潜伏期間(平均5〜6日)⇒風邪の症状(1週間程度)⇒重症化

感染から,感染確認まで2週間,あるいはそれ以上かかることもある.

▽症状が軽い

・およそ80%は軽症(無症状の人も.感染していることに気づかずに広げてしまっている人がいる)

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瀬名「こういう性質を持つウイルスっていうのは,今まで,僕,あまり知らなかったように思うんですけど----」

押谷「ピラミッドでいうと,下の方が無症候感染で,その上に計症例があって,重症例があって,亡くなる方がいる,死亡例がある.

ピラミッドを考えると,非常に裾野の広い感染症で,そのことが全てのことを見えにくくしてます.

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今回のウイルスは,一部の人が,全員ではないんですが,本当に限られた感染者が,上気道=喉(のど)に非常に高いウイルス量をもつ,多くのウイルスを持っている.その人たちは,必ずしも明確な症状がなくて,そういう人たちが,このウイルスを広げている.

症状がない人たちが広げてしまうので,非常に見えにくいし,今回の大阪のライブハウスのあの流行のきっかけになった人も,ライブハウスに行った時には,喉が痛いっていうことしかなかった.というふうに記録されています」

 

中村「肺の奧ではなくて,喉のあたりにウイルスがあるので,くしゃみとか咳とか,あるいは飛沫に感染が---」

押谷「くしゃみとか咳をしてない人たちが感染させているので,今まで考えられてきたような感染経路ではない形(⇒*)で,おそらく感染が進んでいるんだろう」

 

続く

 

⇒* 

NHKスペシャル 「“パンデミック”との闘い〜感染拡大は封じ込められるのか〜」より

今,専門家は,感染拡大を防ぐカギとして,新たな感染の仕組みに,注目しています.

日本感染医学会舘田一博理事長「ただの会話の中で,感染が広がっている.とか,ある程度距離があっても,それが広がっているような,そういった事例を見ると,通常の飛沫感染だけでは,説明できない.非常に小さな粒子ということで,マイクロメーター(1000分の1mm)の粒子,マイクロ飛沫感染と呼べるような,そういった状況が起きたんじゃないかと考えられます」

くしゃみなどでできる飛沫はすぐに落下.100分の1ミリ以下の小さな粒子は,小さく軽いため漂い続ける.このマイクロ飛沫は,大きな声の会話でも発生し,漂い続ける.

舘田理事長「マイクロ飛沫の中にもたくさんの生きたウイルスがいて,大きな声での会話,激しい息づかい,そういった中で,このマイクロ飛沫ができて,それを近くの人が吸い込むことによって,感染が広がる.そういったリスクが見えてきた」

換気の悪い密閉空間では,マイクロ飛沫が,より感染リスクを高める可能性も,浮かび上がってきました.

教室程度の大きさの密閉空間に10人ほどがいるケース.一人が一度咳をすると,およそ10万個の大小様々な飛沫ができる.

大きな飛沫は一分以内にほとんど落下するが,マイクロ飛沫は空中を漂い続ける.

少なくとも20分,マイクロ飛沫は空気のよどみで漂い続ける可能性が,シミュレーションで明らかになった.

このよどみを防ぐ方法:窓を開けて部屋の茎を入れ替える!

マイクロ飛沫は小さく軽いため,空気の流れを作れば,排出できる.

舘田理事長「2カ所開けて風邪の流れを作る事が大事.1時間1回でもよいから,そうすることでリスクをかなりさげることができる」

 

パンデミックの中,「東京重大局面」で外出自粛が要請された2020年3月29日.

関東地方は何と雪!

チューリップのつぼみに積もった雪を初めて見ました.

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