おとめ座(*新5)
1. アストライアー(Astraea)/ユースティティア(Iustitia)
2. デーメーテール(Demeter)/ケレース(Ceres)
3. エーリゴネー(Erigone)
4. テュケー (Tyche)/フォルトゥーナ(Fortuna)
5. パルテノス(Parthenos)
今日は.3.エーリゴネー
なお,おとめ座新シリーズとしましたが,エーリゴネーに関しては,旧シリーズ版 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/06/20/034120 と大きな違いはありません.
3.エーリゴネー
エーリゴネーはアテネのイーカリオスの娘.
イーカリオスはディオニューソスから葡萄酒の作り方を学びますが,その葡萄酒を飲んだ牛飼いたちの誤解から殺されてしまいます.エーリゴネーは猟犬マイラによって父の遺骸をみつけ,父を追って自ら首をつってしまいます.哀れんだ神々(またはディオニューソス)によっておとめ座として天に置かれます.
古代ギリシャローマの多くの作家が彼女の名前を記しています.この逸話は古代ギリシャ・ローマではよく知られた物語だったのでしょう.
偽アポロドーロス『ビブリオテーケー』では,次の通り.
日本語訳『ギリシア神話』 アポロドーロス 高津春繁訳 岩波文庫 をお借りして:
エレクトニオス(アテーナイ王)が死んで,同じアテーナーの境域に葬られた後,パンディオーンが王となった.
彼の時代にデーメーテールとディオニューソスがアッティカに来たのである.しかし,デーメーテールをばケレオスがエレウシースへ,また,ディオニューソスをばイーカリオスが受け入れた.
イーカリオスはディオニューソスより葡萄の木の枝を得,醸造の術を教わった.
そして神より得た恵みを人類に与えんものと,ある羊飼いのたちの所に来た.彼らはその飲物を味わい,かつ水を混ずることなしに甘いので大いに飲んだ後に,毒を盛られたと思って彼を殺した.
しかし,翌日真実を知って彼を葬った.
イーカリオスの娘エーリゴネーが父を尋ねて探していると,マイラと呼ぶ,なれて,イーカリオスに従っていた犬が彼女に死骸を示した.
そして彼女は父を傷んで自ら縊(くび)れた.
この逸話は,かなり多くの古代ギリシャ・ローマの文献に記載されているとのことですが,最も詳しく記しているのは,偽ヒューギヌスの神話集(Fabulae) ならびに天文詩(De Astronomica).
これらの内容も入れ,the Theoi projectでは.IKARIOS (Icarius イーカリオス)についてまとめています.
本文英文の一部を私の拙訳で.
なお,このthe Theoi projectのまとめでは,
・“イーカリオスとエーリゴネー・マイラを天にあげ,うしかい座,おとめ座,おおいぬ座とした”
としています.
一時に三つの星座となったのは,アンドロメダーの物語に近い数ですね.
ただし,偽ヒューギヌスの神話集(Fabulae) ならびに天文詩(De Astronomica)英訳文では,
うしかい座ではなく,その主星アークトゥルス,おおいぬ座ではなく,その主星シリウス
(英訳文ではCanicula ややこしいことにラテン語の字義は子犬.にもかかわらずシリウスの別名 ランダムハウス大辞典)
と記載しています.
・天にあげたのはディオニューソスとしていますが,神話集,天文詩の英文訳では,天にあげたのは“神々”.
ICARIUS (Ikarios) - Athenian Vintner of Greek Mythology
イーカリオス
アテネの人.
ディオニュソースが初めてこの地にやって来たとき,ワインの作り方を教わりました.イーカリオスはその贈り物をその国の人たちと分かち合いました.しかし,酔っ払った羊飼いのグループが,毒を盛られたと思い,イーカリオスを石で打って殺してしまいました.
イーカリオスの娘エーリゴネーと忠実な猟犬マイラは,イーカリオスを探しに出かけ,彼の遺体を見つけたエーリゴネーは,首をくくり,マイラは井戸に飛び込みました.
ディオニューソスは,彼らの死に激高し,イーカリオスとエーリゴネー,マイラを天にあげ,うしかい座,おとめ座,おおいぬ座とした後,この地を干ばつとし,わかい娘たちを狂気に駆り立て,彼女たちもまた首をくくるよう仕向けました.
アテネの人びとは,神託の教えに従い,死んだ英雄たちに敬意を表して祝祭を始め,ディオニューソスの激しい怒りを鎮めました.