オリオン座2 オーリーオーンという名前が,何を意味しているかは不明.出生に関しては三つあるうちの「父親をポセイドーンとする」が最有力.そして,海洋神の息子だけあってか,波の上を走る能力を持っていました.

星座として最も見付けやすいものの1つ,オリオン座.

 

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Star Myths | Theoi Greek Mythology 

冬の夜空,あの三つ星がとても目立ちます.

英語では “Orion's Belt オリオンのベルト” とも.

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オリオン座 - Wikipedia 星座図鑑・オリオン座

 

古代メソポタミアでは,“アヌ(天空神)の真の羊飼い”とされていた星座が,古代ギリシャでは,狩人オーリーオーンに置き換えられました.

yachikusakusaki.hatenablog.com

オーリーオーンという名前が,何を意味しているかは不明(*)です.

 

彼の出生については,大きく分けて3つの説があるようで,特に次の2つが有力,そして,多くのサイトでは1のポセイドーン父親説に従っています.

ORION - Boeotian Giant of Greek Mythology

1.父親をポセイドーンとするもの.

2.もう一つは,母をガイアとする説.

2.は,古代ギリシャ・ローマの詩人・歴史家の何人かが記述していますが,ややうさん臭い.私ごときがそう思っても何の意味もないのですが,その理由については後述(*).

 

ポセイドーンを父とする場合,母親を,ミーノースの娘エウリュアレーとする場合がほとんどのよう.

ミーノースは,あの白い牡牛に姿を変えたゼウスに連れ去られたエウローペーの息子.当然父親はゼウス.

 

ORION - Boeotian Giant of Greek Mythology

ヘーシオドスは彼(オーリーオーン)を,ネプチューン(ポセイドーン)の息子と呼んでいます.母は,ミノースの娘エウリュアレー.

オーリーオーンは,イーピクロス(俊足で知られる戦士)が立っている麦の穂の上を走ってもそれを傷つけずに走ることができるといわれているごとくに,陸上同様,波の上を走る能力を持っていました.

Hesiod calls him the son of Neptunus [Poseidon] by Euryale, daughter of Minos. He had the ability of running over the waves as if on land, just as it is said that Iphiclus could run over standing grain and not bruise it.(Pseudo-Hyginus, Astronomica 2. 34 )ORION - Boeotian Giant of Greek Mythology

 

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*Orionの語源と,出生第二説「ガイア母親説」

Online Etymology Dictionaryによれば,

Orionの語源(星座の解説で後半にギリシャ語の語源が解説されています)は以下の通り.

orion | Origin and meaning of orion by Online Etymology Dictionary

Orion

目につきやすい星座で,はっきりとしたパターンの七つの明るい星を含む.(英語としての初出は)14世紀後半.大元はギリシャ語のOariōn.ギリシャ神話の巨人狩人で,オーロラに愛され,アルテミスに殺害された.(Oariōnという名前の)起源は不明.ある推測では,アッカド語のUru-anna(天国の光)から.

Orion

conspicuous constellation containing seven bright starts in a distinctive pattern, late 14c., orioun, ultimately from Greek Oriōn, Oariōn, name of a giant hunter in Greek mythology, loved by Aurora, slain by Artemis, a name of unknown origin, though some speculate on Akkadian Uru-anna "the Light of Heaven."

 

一方では,このUru-annaを古代ギリシャ語ウーロンと勘違いしたような説があるようです.

 

日本語版ウィキペディアオリオン座 - Wikipedia

“しかし、別の説によれば、オリオンはウーロン(古代ギリシアの言語で尿の意)からきているともいわれる”.

 

いつも引用しているthe Theoi projectでも

ORION - Boeotian Giant of Greek Mythology

オリオンの名前は,古代ギリシャ語のoros(山)またはurine(尿)に由来する.

Orion's name is derived from the ancient Greek word oros "mountain" or from ourios "urine".

 

この「ourios尿 由来説」説が,ガイア母親説を生み出したかのように感じてしまうのは,私の考えすぎ?

ガイア母親説は,「オーリーオーンは大地と尿(ゼウス,ポセイドーン,ヘルメース)から生まれた」とする説(Pseudo-Hyginus, Fabulae 偽ヒュギーヌス  神話集)ですから!?

"Jove [Zeus], Neptunus [Poseidon], and Mercurius [Hermes] came as guests to King Hyrieus in Thrace. Since they were received hospitably by him, they promised him whatever he should ask for. He asked for children. Mercurius [Hermes] brought out the hide of the bull which Hyrieus had sacrificed to them; they urinated in it, and buried it in the earth, and from it Orion was born. When he tried to violate Diana [Artemis], she killed him. Later he was placed by Jove [Zeus] among the stars, and called Orion."

Pseudo-Hyginus, Fabulae 195 (trans. Grant) (Roman mythographer C2nd A.D.)