「様々な楓の種」&「楓/紅葉を詠った短歌」(5) シュガーメープルは,世界で最も知られているカエデでしょう.ほとんどの人はカナダ国旗を見たことがあるでしょう.メープルシロップは,高級シロップとしてよく知られています.また日本人にはあまりなじみがないシュガーメープルの紅葉の美しさから,アメリカで庭木として人気となっています. 邪淫妄語おもしろかりし若き日の色澄みくるやもみじくれなゐ 馬場あき子

160種あると言われるカエデ(=ムクロジ目 Sapindales,ムクロジ科 Sapindaceae,カエデ属 Acerの植物)は,古来から日本で愛され続け,今では世界でも重要な観賞用樹木になっています.

今日は,「様々な楓の種」&「楓/紅葉(楓の紅葉に限らない)を詠った短歌」の5回目.楓の種としてはシュガーメープルを概観します.

 

楓の品種(5) シュガーメープル(サトウカエデ  Acer saccharum)

世界で最もよく知られているこのカエデについて,三つの視点から概説します.1. 観賞用樹木としてのシュガーメープル.2. カナダ国旗 3. メープルシロップ.

 

1.  観賞用樹木としてのシュガーメープル

アメリカのBetter Homes & Gardensのサイトに「These 15 Maple Trees Will Set Your Yard Ablaze with Vibrant Color 庭を鮮やかな色に彩る15のカエデの木」という記事がありました.

https://www.bhg.com/gardening/trees-shrubs-vines/trees/marvelous-maples/

 

一番目から六番目を引用すると次の通りで,シュガーメープルは四番目にありました.シロップを採るカエデとしてだけではなく,ガーデニングでもおすすめの樹木であることが分かります.

画像は全てhttps://www.bhg.com/gardening/trees-shrubs-vines/trees/marvelous-maples/

から.

ガーデニングの樹木としてのシュガーメープルの解説(DeepL翻訳)は次の通り.様々な品種が開発されているんですね.

シュガーメープル

https://www.bhg.com/gardening/trees-shrubs-vines/trees/marvelous-maples/

秋の紅葉といえば,シュガー・メープルが一番です.この原生種のカエデは,秋に葉が赤,オレンジ,黄色などの鮮やかな色に染まり,実に見事なものです.広い裏庭に最適なシェードツリーです.多くの品種から選ぶことができますが,乾燥に強い'Green Mountain'は最も人気のある品種の一つです.

植物名 Acer saccharum

 

2. カナダ国旗

「カナダ国旗の両側の赤い帯は北アメリカ大陸をはさむ太平洋と大西洋.

中央のメイプルリーフ(種としてはシュガーメープル)はカナダの象徴で,赤と白は1921年に指定された国の色.

葉の先端の尖った部分と葉柄を合わせた12の数は,国を構成する10州と2準州(現3準州)を表している」

https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/search/research_guide/olympic_paralympic/area_studies/index/canada/

カナダ国旗の制定は比較的最近(1965年https://www.britannica.com/topic/flag-of-Canada)で,それまでは,イギリス国旗とthe Canadian Red Ensignが国を象徴していました.

なお,メープルリーフは,カナダの紙幣の図案にもなっていますが,「2013年の新紙幣のメープルの葉は,シュガーメープルではなく,ノルウェーメープルだ」と植物学者が指摘したことが,ロイター電で世界を駆け巡ったとのこと.

 
シュガーメープルの樹液を濃縮したものがメープルシロップで,もともとは北米先住民がつくったのが始まりとされています.
一本の木から60ガロン(227リットル)の樹液が採取できるものの,濃縮して得られるシロップは1.5ガロンとのこと.
 
英語版ウィキペディアの解説では:
「寒冷地では,カエデの木は冬の前に幹や根にでんぷんを蓄え,冬の終わりから春の初めにかけて,でんぷんが糖分に変わり,樹液として出てくる.メープルの木に穴を開け,樹液を採取し,加熱して水分を蒸発させ,濃縮したシロップを作る」
「世界のメープルシロップのほとんどは,カナダと米国で生産されている.カナダのケベック州は最大の生産地で,世界の生産量の70%を占めており,2016年のカナダのメープルシロップの輸出額は48700カナダドル(約36000万米ドル)で,このうち約90%をケベック州が占めている.

ープルシロップは,色と味を基準に等級分けされている.メープルシロップに最も多く含まれる糖分はしょ糖である.カナダでは,メープルシロップとして認められるためには,メープルシロップがカエデの樹液のみから作られ,さらに糖分が66%以上でなければならない. アメリカでは,メープルシロップが「メープル」と表示されるためには,ほぼ完全にカエデの樹液から作られなければならないが,バーモント州ニューヨーク州などでは,より厳しい定義がなされている.

メープルシロップは,パンケーキ,ワッフル,フレンチトースト,オートミール,お粥などの調味料としてよく使われる.また,お菓子作りの材料や,甘味料,香料としても使われる.料理の専門家はその独特の風味を賞賛しているが,その要因となる化学的性質は完全には解明されていない.」

 
伝統的な採取の仕方は,樹液をバケツで受けるというものだったようですが,今は採取の仕方から濃縮にいたるまで,ずっと洗練された技術が採用されています.



 

「楓/紅葉/黃葉を詠った短歌」(5)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より抜粋

 
波うてる山ことごとくもみじしぬ遠世のひとは神を見にけむ  大野誠夫 行春館雑掌
 
 
ためらいののちにみずから日が射せば赤くけむらふ雑木林に  武川忠一 緑稜
 
 
邪淫妄語おもしろかりし若き日の色澄みくるやもみじくれなゐ  馬場あき子 南島
 
 
岩あひを落ちゆく真水腹這ひて飲まむとするに映るもみぢ葉  新井章 雨の音
 
 
夕もみぢ紅きはまれり辿りきてここにやすらぐいちにんのため  藤井常世 氷の貌
 
 
背を抱けば四肢かろうじて耐えているなだれおつるを紅葉と呼べり  永井和宏 メビウスの地平