のり/海苔2 海苔って何? 常陸風土記 (717‐724頃)に記載がある海苔.私たちが海苔と聞いて,まず思い浮かべるのは板海苔(アマノリ属のスサビノリ等)ですが,青のりも海苔と言えます.なぜなら「海苔」は,もともとは1つの種類の海藻を表す言葉ではなく「藻類で,水中の岩石上に付着しているものの総称」.狭義では,現在の認識通りアマノリ類の海藻のことですが.一方の青のり.現在の分類名と一般の呼び名に混乱があるように思います.

昨日より,NHK 梅沢富美男東野幸治まんぷく農家メシ! 佐賀県佐賀市の「のり」 の音声部分の再録を始めました.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/02/24/001500

yachikusakusaki.hatenablog.com

続きは明日にして,今日は番組で取り上げられた海苔について.題して “海苔って何?”

 

海苔って何?

古くは養老律令(757年)に「紫菜(ムラサキノリ)」と記載され,多分,大宝律令にも記載があった,「海苔」

https://www.yamamoto-noriten.co.jp/knowledge/history.html

のりの歴史 | のりを食べよう

ただ,それより前の常陸風土記には,既に「海苔」と書かれていたようで,

信太「浜浦(はま)の上に多(さは)に海苔〈俗(くにひと)、乃理(ノリ)といふ〉を乾せりき」(常陸風土記 717‐724頃)  日本国語大辞典

 

平安中期にも「紫海苔」や「甘海苔」(宇津保物語)の名前で登場しているそうです.

https://www.yamamoto-noriten.co.jp/knowledge/history.html

のりの歴史 | のりを食べよう

 

 当時の海苔が,どのようなものだったかは不明ですが(単に私が調べられなかっただけかもしれません)----

 

板海苔の登場は江戸中頃.

https://www.yamamoto-noriten.co.jp/knowledge/history.html

のりの歴史 | のりを食べよう

 

現代の私たちが海苔と聞いて,まず思い浮かべるのは,この板海苔でしょう.

 

ネット検索「海苔」の結果,

上位の画像は板海苔ばかり

そして,板海苔の形状は,焼き海苔/味付け海苔が大部分.

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海苔 - Google 検索

寿司海苔(乾海苔)は,やっと15番目に登場するだけ.

手巻き寿司は大流行ですが,こちらは焼き海苔ですね.

私も含め,多くの方々にとって,巻き寿司は買って食べるものになってしまった気がします.

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海苔 - Google 検索

 

ネット検索「海苔」の話題をもう少し続けてみると---

板海苔以外では;

9位にフレークにしたものが登場.海苔の佃煮は300位以内には見当たりません.

植物としての海苔は,およそ300位に養殖場面の画像が初めて登場.

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海苔 - Google 検索 海苔 - Wikipedia

 

そして,「海苔」でイメージするもう一つの商品.

お好み焼きでもおなじみの,青のり.

ネット検索「青のり」でもたくさんの画像が.

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青のり - Google 検索

 

青のりは板海苔とは明らかに違う種類.

しかし,どうも一種類ではないようです.

が,その話題は後ほどにして---

 

青のりも,海苔には違いありません.

 「海苔」は,もともとは1つの種類の海藻を表す言葉ではないのですから.

 

海苔 のり 出典 精選版日本国語大辞典

  紅藻類・緑藻類・藍藻類などの藻類で,水中の岩石上に付着しているものの総称.科学的に定義された用語ではない. 

 

ただし,この日本国語大辞典の記載には続きがあって,

 

海苔 のり 出典 精選版日本国語大辞典 つづき

 狭義には,アサクサノリスサビノリなどに代表されるアマノリ類の海藻をいう.生のまま,または乾燥して食用とする.特に,アサクサノリなどを紙のように漉いてかわかした干海苔(ほしのり)は火にあぶって食用とする.

 

「海苔」について,

改めて,植物名/植物分類に基づいて整理してみましょう.

 

▽現在の板海苔(焼きのり/味付けのり/乾のり)

アサクサノリスサビノリ,ナラワスサビノリスサビノリの一品種)

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https://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/kenkyu/kikuchi-asakusanori/kikuchi-asakusanori.htm

 

いずれも,アマノリ属の海藻.

紅色植物門 Rhodophyta,ウシケノリ綱 Bangiophyceae,ウシケノリ目 Bangiales,ウシケノリ科 Bangiaceae

アマノリ属 Pyropia

現在,養殖されているのは,ナラワスサビノリが大部分とか.

かっての主役アサクサノリは,レッドデータブックに掲載されるまでに.

https://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/kenkyu/kikuchi-asakusanori/kikuchi-asakusanori.htm

 

▽アオノリ:

青のりには,幾つかの種が含まれます.

とてもややこしくてうまく整理できません----.属名と一般名とがゴチャゴチャになっていて----

 

・かつては,アオノリ属とアオサ属は別でしたが,現在はアオサ属に統一されています.

アオノリ - Wikipedia

 そして,旧アオノリ属の種のみを青のりとして扱う場合があり,主品種はスジアオノリ.

アオノリとは - コトバンク

・アオサとアオノリは,通常分けて扱われます.しかし,アオサも青のりに含める場合があります.

アオサで検索すると,青のりとは違うという記事にたくさん出会います.しかし,同じとして扱われたり,地方によって呼び名が異なったり---

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アオサ - Google 検索

・アオサ(沖縄のアーサーを含めて)はヒトエグサ属のヒトエグサを指すのが一般的.

アオサ - Wikipedia 沖縄食材:アーサ - 沖縄料理レシピなら おきレシ

 海苔つくだ煮の原料として,最近では板海苔と同じアマノリ属の海苔を用いたものが多くなっています.しかし,以前からヒトエグサを用いたものが海苔つくだ煮として販売されてきました.その時アオサつくだ煮とは呼ばれません.

 

青のりとされる緑藻類には,現在の分類名と一般の呼び名に混乱があるように思います.

 

「青のり」の種

緑藻植物門,緑藻綱, アオサ藻綱.アオサ目,アオサ科

ヒトエグサ属:ヒトエグサ(一般の「アオサ」)

アオサ属 :アナアオサ,

       (以下旧アオノリ属)スジアオノリ ボウアオノリ,ウスバアオノリ,フクロアオノリ,ヒラアオノリ

 

最後に,

日本国語大辞典小学館)にも書かれているように,藻類は 紅藻類・緑藻類・藍藻類に分けてきましたが,現在の「植物」(広義)の分類はずいぶん変わってきていて,私のような素人には一筋縄ではいかない複雑さ.「藻類」をどのように位置づけたらいいのか,まだ理解しきれていません.

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http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/plant.html http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/01/19/022748

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http://keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_2/contents/bi-2/3-bu/3-1-2.htm

  

細かな解説を省いて,改めていわゆる「 緑藻類・紅藻類・藍藻類」にあたる部分を,私の理解の範囲内で表に整理してみました.

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真核生物 - Wikipedia 植物 - Wikipedia taxonomic sytem アオサ藻綱 - Wikipedia 緑藻植物門 - Wikipedia SARスーパーグループ - Wikipedia 不等毛藻 - Wikipedia 緑色植物亜界 - Wikipedia 紅藻 - Wikipedia https://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9022828 Ulva pertusa アナアオサ - Biological Information System for Marine Life Ulva アオサ属 - Biological Information System for Marine Life