辛子(からし)
辛子(からし)と呼ばれる商品は,マスタードという名前の物を含めると,一体何種類あるのか,それぞれがどのように違うのか,なかなか分かりません.
S&B社の商品だけでも----
S&B社の「からし」についてのQ&Aコーナーでの解説では:
スパイス&ハーブ、カレーQ&A | S&B エスビー食品株式会社
からしと名前の付いている製品は色々あり混乱しがちですが,からしは歴史もあり,よく使われている香辛料だけにいろんな呼び名があります.
からし製品は,粉からし,チューブ入り製品,マスタードという言葉が使用された製品に大別されます.
原料
いずれもアブラナ科に属し5月に黄色い花を咲かせる,「からし菜」の種子が原料として使われています.
からし商品の原料として主に使われるのは,洋からしと和からし,の2種類です.最近は黒からしも使われるようになりました.
▽和からし(英通称名:オリエンタルマスタード,ブラウンマスタード)
-やや小粒で色がいくらか濃い目です.
辛味の特徴:鼻孔を刺激する強烈な辛味 /揮発性(辛味成分:アリール芥子油=アリルイソチオシアネート)
-粒が大きく色は薄目です.
辛味の特徴:刺激の少ないマイルドな辛味 /弱揮発性(辛味成分:ベンジル芥子油=パラハイドロキシベンジルイソチオシアネート)
-大きさは和からしと同じくらいで,色は濃いブラウンです.
辛味の特徴:鼻孔を刺激する強烈な辛味 /揮発性(辛味成分:アリール芥子油=アリルイソチオシアネート)
とありましたが,
分かったような分からないような----.
他サイトからの画像を付け加えると:
和がらしという名前で呼んでいるので,日本産かと思いきや,現在はほぼ全てが,カナダからの輸入品だそうです.
『「からし」の原料である「からし菜」の種は,現在,国内でほとんど生産されておらず,ほぼ全量がカナダからの輸入で賄われています.』(1)世界の食料事情と農産物貿易の動向 イ 我が国の農産物貿易の動向:農林水産省
日本でも,少ないながら伝統的な製法で造っているところはあるようですが--
例えば:からし・和からし・香辛料 地がらし【自然の恵みと老舗の味 麩市】
「和がらし」の歴史
からし・和からし・香辛料 地がらし【自然の恵みと老舗の味 麩市】
によれば:
『和からしの歴史は古く、大日本古文書(739年) 延喜式(平安時代の法典/納税の記録927年)などに芥子(→けし と同字)の記述が見られます.
奈良時代から香辛料として朝廷・貴族の間で使われました.しかし,鎌倉時代まではカラシ菜の葉をそのまま薬味として使っただけで,種子は使われませんでした.1489年の四条流庖丁書で初めて実芥子が記述されています』
とのこと.
カナダのサイトから
日本のカラシ原料(マスタードシード)はカナダからの輸入が大部分とのことでした,ただし,カナダは,ホットドッグ用のマスタード,ヨーロッパ・アジアへの輸出をメインとしているらしく(未確認),生産量自体は世界第3位.ベストファイブの他の4ヶ国は,辛い食事大好きのアジアの国々.
カナダのサスカチュワン州は,主要生産州とみえて,州政府が,マスタードシード生産マニュアルとともに簡潔な解説もアップしています.
Types of Mustard - Spread the Mustard - SaskMustard
Types of mustards and their uses :: Mustard Production Manual
カナダで作っているマスタードシードは
オリエンタルマスタード,ブラウンマスタード,イエローマスタードとのこと.
ブラックマスタードの名前は記載なし.
上記S&Bの解説にはなかった記述のみを加えると,
▽“和がらし”で一緒に説明されていた,オリエンタルマスタード,ブラウンマスタードについては:
●オリエンタルマスタード: 黄色〜暗黄色の種皮を持つ “Brassica juncea (カラシナ類)”種子.主な輸出国はアジア,特に日本.
●ブラウンマスタード: 茶色〜暗茶色の種皮を持つ “Brassica juncea (カラシナ類)”種子.主にヨーロッパへ輸出.ディジョンスタイルのマスタードなどに用いられる.
▽“洋がらし”
●イエローマスタード: “Sinapis alba”(シロガラシ)”種子.北アメリカ伝統のホットドッグマスタードなどに用いられる.
「からし菜」
香辛料の辛子/マスタードは,「からし菜」の種子から作られるスパイス&ハーブ、カレーQ&A | S&B エスビー食品株式会社
とありましたが,「からし菜」は,3種類あります.
▽アブラナ属 Brassica,カラシナ B. juncea
▽シロガラシ属 Sinapis,シロガラシSinapis alba
⇒イエローマスダード (洋がらし)
「:シロガラシからイエローマスタードが採られる!」
▽アブラナ属 Brassica,クロガラシ B. nigra
ややこしいので後にしましたが---
「カラシナ」という名前は,植物学上では存在しないようです.
B. juncea の原種の名前は,正式には,なんと「セイヨウカラシナ」.
B. juncea全体について名前を付けるとすれば「カラシナ類」でしょうか.
現在日本で「からし菜」として売られている葉菜はB. junceaの変種ハカラシナにあたり,種子用のカラシナは,別の品種(変種?).
- B.juncea var. cernua ハカラシナ(葉芥子菜)
- B.juncea var. sabellica チリメンカラシ、セリフォン(雪里紅)
- B.juncea var. integrifolia タカナ(高菜)、
- B.juncea var. rugosa ダイシンサイ、山形青菜、結球高菜
- B.juncea var. tumida ザーサイ
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/publish/bulletin/niaes36-2.pdf
セイヨウカラシナ https://matsue-hana.com/hana/karasina.html Brassica juncea - Wikipedia White mustard - Wikipedia 四季の山野草(クロガラシ)