ギリシャ神話で,人間として初めての女性とされるパンドーラー.
ヘーシオドスの「仕事の日」では,
ゼウスの命により,オリュンポスの神々がそれぞれの贈り物を差し出して作り上げたとされています.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/04/29/001319
https://www.iwanami.co.jp/book/b247093.html
この一文にある神々を改めて書き出してみました.wikipedia等からの画像を添えて.
全員,ゼウスの子どもとされている神々でした.
(末尾,系譜図参照)
名も高き足萎(な)えの神(ヘーパイストスHephaestus 鍛冶・火山・炎の神):
土を捏(こ)ねて気品高き乙女の姿を造りました.
Hephaestus - Wikipedia ヘーパイストス - Wikipedia
眼光輝くアテーネー(アテーナーAthena知恵・工芸・戦略の女神)
帯を締めさせ.衣装を整えました.
Athena - Wikipedia アテーナー - Wikipedia
女神カリス(カリテスCharites:美と優雅を司る女神たち)と高貴のペイトー(説得の女神)
黄金の首飾りを掛けました.
Charites - Wikipedia カリス - Wikipedia CHARITES (Kharites) - The Graces, Greek Goddesses of Pleasure & Joy
http://www.theoi.com/Daimon/Peitho.html ペイトー - Wikipedia
髪美(うる)わしきホーライ(Horai季節、時間、秩序の女神たち ホーラ)
春の花を編んだ冠を被(かぶ)せました.
Horae - Wikipedia ホーラ - Wikipedia
パラス・アテーネー
くさぐさの飾りを,その肌(はだ)につけました.
神々の使者なる神(ヘルメースHermes:伝令神,能弁/発明/策略/盗人の神)
Hermes - Wikipedia ヘルメース - Wikipedia
偽りと甘き言葉,それに不実の性(さが)を植え,
乙女の声を与えました.
そして,パンドーレーと名づけました.
オリュンポスの館に住まうよろず(パンテス)の神々が
乙女に贈物(ドーロン)を授けたから
ただし,名前パンドーラーの由来が
“ オリュンポスの館に住まうよろず(パンテス)の神々が
乙女に贈物(ドーロン)を授けたから ”
とは,ヘーシオドスによるこじつけの可能性が強いという指摘があります.
▽PANDORA - The First Woman of Greek Mythology には次のような記述があります.
“Orphic poems”では,パンドーラーは悪魔のような怖ろしい神で,ヘカテー(死の女神)やエリーニュス(復讐の女神)と結びつけて考えられている.
また,パンド−ラーは,ガイア(大地の女神)の別名とされたり,“全てを与える者”とされたりもしている.
In the Orphic poems Pandora occurs as an infernal awful divinity, and is associated with Hecate and the Erinnyes (Orph. Argon. 974). Pandora also occurs as a surname of Gaea (Earth), as the giver of all. (Schol. ad Aristoph. Av. 970; Philostr. Vit. Apoll. vi. 39; Hesych. s.v.)
▽松平千秋氏は,ヘーシオドス「仕事の日」の訳注で次のように書いています.
パンドーラが本来—あるいは並存した別伝では,地下から人間に恵みを授ける豊穣の女神であったらしいことは,幾つかの古い壺絵から容易に推定される.この女神は,アネーシドーラー(地下から地上へ恵みを持ち上げる者)とも呼ばれ,デーメーテールとも同一視される.
ヘーシオドスの与える語源解釈は,ギリシャ人の愛好したいわゆる通俗語源解釈に類するもので,語の構成形式から言って妥当なものではなく,こじつけであることは明白である.
ただこの箇所の表現は曖昧で,本訳のごとく,神々が女に「贈り物を与えたから」という意味なのか,「贈り物として(人間に)与えた」という意味なのか,判然としない.
しかし,そのいずれの場合でも無理な解釈であることには変わりがない.
パンドーラーの名前が先にあって,ヘーシオドスがこじつけた可能性が高い?
というより,ギリシャ神話の専門家の間では,共通理解となっているような---.