ほぼ何も知らないまま,お正月を過ごしてきた私ですが---
「正月に祀るカミは,その年をつかさどる歳神(年神 としがみ)」
「山の彼方から『ゆずり葉』(ユズリハ)に乗ってやってくる」
「各家庭で正月に行われる年祝いの儀式・習慣は,歳神を迎え,幸運を授けてもらうため生まれ,定着・伝承されてきた」
という民俗学の成果を知る事で,多くのならわしの説明がつけられることを知りました.
門松・鏡餅.
どちらも,年の初め(正確には大晦日の夜)に迎える歳神(としがみ)の依代(よりしろ:祭りにあたって神霊が依りつくもの).
門松.http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/29/001919
yachikusakusaki.hatenablog.com
鏡餅http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/12/31/021147
yachikusakusaki.hatenablog.com
神崎宣武「しきたりの日本文化(角川ソフィア文庫)」によれば,お年玉,雑煮もこの流れの中にある習慣!
https://www.jalan.net/yad330195/blog/entry0002743582.html http://kosodate19.com/5594.html
鏡餅は,歳神の依代である.神霊(御魂)が依り憑いたものを下げて,分けていただく.それが「おかげ」となる.
正月の鏡餅.それを下げて,家人がいただく.雑煮の本来の意味も,そこにあるのだ.つまり,歳神からの「御魂分け」.そして,歳神の御魂分けであるから,これが「歳魂」(年玉)なのである.
なんと,「歳神の依代としての鏡餅」で一気に「お年玉」と「雑煮」が説明されてしまいました.
もちろん過去の経緯の説明には異論があるのが常.
雑煮
https://www.jalan.net/yad330195/blog/entry0002743582.html https://news.ameba.jp/entry/20170102-140
「雑煮」についてのネット上の記事は概ねこの説明と一致しています.「歳神からの御魂分け」説はかなりの支持を集めているようですね.
ただ,江戸時代には全国に広まっていた雑煮ですが,始まったのは室町時代で,その頃は正月料理ではなかったようです.当時は「儀礼的な酒宴の席に出された酒肴」とのこと.正月の料理としては「天文11年(1542)正月元日に初献雑煮」の記録が存在. 「もち」(渡部忠世・深津小百合,法政大学出版局)
また,誰もが元旦にお雑煮を食べられたわけでもなかったようで,「日本人は何を食べてきたか」(原田信男,角川ソフィア文庫)によれば,大阪の奉公人は正月3日目に初めて出されたとのこと.餅は少なくとも明治時代までぜいたくな食物.
(以上はhttp://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2016/12/30/023530 でも引用)
神崎氏は,雑煮について更に以下のように説明
雑煮は,その名が示すとおり,その地方でとれる季節の野菜や魚介類などが具として用いられる.汁のだしも,ところによってさまざま.が,なんといっても餅が主役である.雑煮を食する本来の意味は,年重ねにある.歳神の御魂を分け授けてもらい,福寿を願っておかげを食するのだ.「餅の歳食い」などという風習も各地に存在した.
だが,今日,鏡餅を下げて切り分け,それを雑煮の餅にするところは少ないのではあるまいか.氏神の祭りなどでは,御魂分けと称するそうした慣習がみられるのに,正月の餅だけが別の形式というのもおかしなことである.
ちなみに,元皇族の方から聞きたしかめたところでは,皇族家では銘々椀で雑煮を食べる前に,テーブル中央に置いた鏡餅にそれぞれ箸を三度ずつつけて,「いただいたまね」をするそうだ.それはそれで,十分に説得力を持つ作法である.「しきたりの日本文化(角川ソフィア文庫)」
一方のお年玉
http://kosodate19.com/5594.html https://allabout.co.jp/gm/gc/450220/
「歳魂」説はとても魅力的ですね.しかし,「雑煮」=「歳神からの御魂分け」説ほど広い支持を集めているわけでもなさそうです.
いずれも歳神由来としながらも,「年賜」説や「魂ではなく初めから玉を使っていたとする説」が お年玉(おとしだま) - 語源由来辞典 に.
一方,日本国語大辞典〈年玉〉語誌には,「歳魂」等の語源そのものの記述はありません.ただ,年初の贈り物の歴史に関してはかなり詳しく記載.その中で,
「(文献的に)年初の贈り物の習慣は古くから存在し,宮中での賜物に関する記述は多い」とありました.
歳神-鏡餅とは関連が薄い年初の贈り物として宮中で始まった可能性も考えられる?
神崎氏は,次のように記載していますが---
年玉は,今日では子供たちへの新年の贈りものと考えられているが,かつては,主人から使用人へ,家長から家族へ贈られる正月の贈答品の総称であった.金銭から食品,雑貨まですべてを年玉といったのだ.それも,もともとは小餅であったに相違ない.歳神の御魂分け,すらわちおかげを分配する意味があったのである.「しきたりの日本文化(角川ソフィア文庫)」
関連ブログ(雑煮の由来については未熟な記述ですが)
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2016/12/30/023530