上野千鶴子さん語録1 超高齢化社会とは,---- 誰もが身体的・精神的・知的な意味で,中途障害者になる社会だ ''障害者と高齢者の狭間から(現代思想 緊急特集相模原障害者殺傷事件)''より [付録「オルト・ライト」の思想の一端 NHKアメリカ大統領選報道より]

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上野千鶴子 (@ueno_wan) | Twitter

「齢を重ねる」と「弱いを重ねる」

◎(事件直後,相模原での在宅医療シンポジウムのできごと:「聴衆は事件に関心がないだろう」と伝え,実際,反応が鈍かったこと,を受けて)

 なぜか?私には理由が分かる.高齢者は自分を障害者だとは思っていないからだ.それどころか,障害者と自分を区別して,一緒にしないでくれ,と思っているからだ

◎周囲が障害者手帳を取得するよう勧めても,それに頑強に抵抗するのは高齢者自身である.

 なぜか?その理由も分かっている.高齢者自身が,そうでなかったときに,障害者差別をしてきたからだ.自分が差別してきた当の存在に,自分自身がなることを認められないからだ.

◎私は最近の講演では,わざわざ次のようなことを強調するようになった.

齢を重ねるとは,弱いを重ねる,こと

加齢とは,昨日出来ていたことが今日できなくなり,今日できていたことが明日出来なくなる,という経験.

高齢化社会とは,どんな強者でも強者のまま死ねない,弱者になっていく社会であること.すなわち,誰もが身体的・精神的・知的な意味で,中途障害者になる社会だと.

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いくらそう伝えても,いま健康な聴衆には将来の恐怖を与えるのみで,それなら,と認知症予防や健康寿命の延長のための体操教室がはやるばかりだ.

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いついかなるときに,自分が弱者にならないとも限らない.弱者になれば,他人のお世話を受ける必要も出てくる.そのための介護保険である.それだからこそ弱者にならないように個人的な努力をするより,弱者になっても安心して生きられる社会を,と私は訴えてきたのだ.

 

(以下 続く)

 

結語『相模原事件は氷山の一角に過ぎない.これを異常者の例外的な犯行,としてはならないだろう』

上野千鶴子 障害者と高齢者の狭間から( 現代思想2016(10月号)  vol 44-19 緊急特集相模原障害者殺傷事件)より

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テレビではアメリカ大統領選挙で,トランプ氏が当選していることを伝えています.トランプ氏は数々の差別的発言を繰り返してきました.恐ろしさを感じてしまいます.

11月7日のNHKニュースウォッチ9.

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選挙前の激戦州フロリダから,河野憲治アナウンサーが投票前の様子を中継していました.その中で取材したトランプ氏支持「オルト・ライト」.

オルト・ライトの中心メンバー,ジャレット・テイラーさん

「『オルト・ライト』の究極の目的は白人が大多数を占める国家を築くことだ.ドナルド・トランプ氏は人種についての理解が洗練されているわけではないが,本能的に我々が主張する政策を支持する様になった.

ポリティカル・コレクトネス』は悪しき平等主義をアメリカにもたらした.例えば''イスラム教は危険な宗教だ''と言ってはいけないという考え方だ.男も女も同性愛者も美人も醜い人も全て平等だと言うことが,『ポリティカル・コレクトネス』だとされているがそんなことがあるはずはない」

河野アナウンサーのコメント

「このオルト・ライトのメンバーの発言なんですが,これは極端なところがあるんですが,アメリカで人種や民族の多様性を尊重する上でのいわばルールとなっている,この『ポリティカル・コレクトネス』,この言葉が建前に過ぎないんじゃないかという風潮が少しずつ広まっている様なんですね.そうした流れの中で,トランプ氏こそ本音を語ってくれる人物だという期待が高まっている様に感じます」

 

「オルト・ライト」と同様な考え方は,日本の社会では長く「本音」として認められてきたのでは?政治家の数々の問題発言,最近では大阪府警機動隊員の発言が不問に付されてきたのですから.そして,欧米の考え方に依ってこのような「本音」を批判することは出来なくなっていくのでは.

上野千鶴子さんの言われるように.「どんな強者でも強者のまま死ねない,弱者になっていく社会」を想定する中で,日本人一人ひとりが,上記のような「本音」と「建前」の問題について自らの言葉で考えていくことが必要とされている気がします.

私たちは,他者から生産的であると認められたときだけ,生きる権利があるというのか.非生産的な市民を殺してもいいという原則ができ実行されるならば,我々は老いて弱ったとき,我々も殺されるだろう(フォン・ガーレン)」http://yachikusakusaki.hatenablog.com/?page=1475140707