くさかんむりに秋=萩(はぎ)/万葉集 ''まくずがはら,なびくあきかぜ,ふくごとに,あだのおおのの,はぎがはなちる'' 作者不詳

ハギ(萩)は,かって育てたことがあります.

というより--- 勝手に大きくなったという印象でした.刈り込んでも刈り込んでも勝手に枝を伸ばしつづけるので.しかし,一面に咲き誇った姿は見事で,ススキと並んで,秋を感じるには最高の花.

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山田卓三先生の「万葉植物つれづれ(大悠社)」によれば,

万葉集には萩の歌が 141首あり集中最多」

「芽や芽子の字が用いられていますが,秋の代表的な花なので,後に萩の字が当てられるようになりました」とのこと.

また「ヤマハギは,全国の山野に自生しています」が(例 このブログの第一首目),「わがやどの」と詠まれているように(例 このブログの第2首目),当時から庭にも栽植されていたようです.

 

また,ハギ(萩)とは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 によれば,

「ハギの仲間(マメ科ハギ属)は種類が多く,最も広く栽培されるのがミヤギノハギ

ヤマハギやマルバハギ、ケハギなどの野生種や、その園芸品種の総称としてハギが使われている」とのことです.

 

 

 萩(はぎ)/万葉集

まくずがはら,なびくあきかぜ,ふくごとに,あだのおおのの,はぎがはなちる 

真葛原,靡く(なびく)秋風,吹く毎に,阿太(阿陀)の大野の,萩が花散る(巻10・2096)作者不詳

 

◎原一杯に生えた葛の片寄る,秋風が吹く度毎に,広い阿陀の野原の萩の花が散ることだ.(折口信夫 口訳万葉集

 

◎「阿太の野」は,今の吉野,下市町の西に大阿太村がある,その付近一帯の原野であったろう.

葛の生繁っている(おいしげっている)のを靡かす(なびかす)秋風が吹く毎に,阿太の野の萩が散る

というのだが,二つとも初秋のものだし,一方は広葉の翻った(ひるがえった)もの,一方はこまかい紅い花というので,作者の頭には両方とも感じが乗っていたものである.それを,「吹く毎」で融合させているので,稚拙なところに,かえって古調の面目があらわれている.特に「阿太の大野の萩が花散る」の諧調音(かいちょうおん:調和した音)はいうのいわれぬものである.(斎藤茂吉 万葉秀歌)

 

◎葛(くず)の原をなびかせる秋風が吹くたびに、阿太(あだ)の荒れ野の萩(はぎ)の花が散ります。阿太(あだ)」は、現在の奈良県五條市と考えられています。( たのしい万葉集(2096): 真葛原靡く秋風吹くごとに

 萩 撮影(2007) by きょう

 

 萩(はぎ)/万葉集 2

わがやどの,はぎさきにけり,あきかぜの,ふかむをまたば,いととおみかも

我が宿の、萩咲きにけり、秋風の、吹かむを待たば、いと遠みかも (巻19 4219)大友家持

 

◎自分の屋敷内の萩が咲いたことだ.秋萩の咲くのを,今から待ちうけると,非常に遠かりそうである.(口訳万葉集 折口信夫

 

◎私の庭の萩の花が咲きました。秋風が吹いてくるのを待ちきれなくて咲いたのでしょうか。

天平勝宝2年6月15日、早咲きの萩の花を詠んだ歌です。( たのしい万葉集(4219): 我が宿の萩咲きにけり

 撮影(2000.6) by きょう