神話

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)10  「ようこそ,尊い御方.浄福なる神々のどなたがこの家へおいでなされたのか」「わたしは神ではありません.ヘルメースはわたしをここへ連れておいでになりました.わたしはアンキーセース様の臥所に入り,正妻と呼ばれて その方のために立派な子を産むことになっている,とのこと」「今ここであなたと愛の交わりを遂げるまでは, 神々であれ人間であれ,誰一人としてわたしの邪魔はさせますまい」 アフロディーテー讃歌(讃歌第五歌)3

アフロディーテー讃歌(讃歌第五歌) 3 ホメーロスの諸神賛歌(沓掛良彦訳 筑摩書房)より アフロディーテー讃歌5歌では,他の神々にその力を発揮してきたこの女神が,みずから人間の男であるアンキーセースを恋するはめに陥り,彼の子供を宿すこと,そして…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)9 ゼウスは女神の心に,アンキーセースへの甘い憧れをかきたてた. 微笑を喜ぶアフロディーテーは,その姿を一目眼にすると,たちまち恋心を抱き,甘い憧れが狂おしくその胸をとらえた.カリス女神がアフロディーテーに浴(あ)みさせ,女神の肌に 永遠にいます神々の肌に匂う不死の香油,甘く香る神油(アムブロシア)を塗った.アンキーセースのみは牛舎に居残り,ただ一人離れて,朗々と竪琴を奏でながら,かなたこなたと歩きまわっていた. 

ホメーロス風讃歌から,アンキーセースとアプロディーテーの物語「アフロディーテー讃歌5歌」を取り上げてきましたが--- https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/07/04/235908 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/07/05/235505…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)8  アプロディーテーは,しばしば美の女神,愛の女神と称されるが,その機能の最たるものは,生殖と豊穣をもたらす力である.古典古代においては,動物の性衝動と,人間のそれとは同一のものとしてとらえられている.つまり人間の場合も,さらには神々の場合にも,恋心と性欲との両局面は区別されることなく,アプロディーテーの御業,すなわち力の顕われとして表現される.アプロディーテーへの讃歌解説/四つのギリシャ神話 逸見喜一郎・片山英男訳 岩波文庫

昨日から,アンキーセースとアプロディーテーの物語を取り上げています. このブログで引用しているギリシャローマ神話原典は,ホメーロス風讃歌第5歌アフロディーテー讃歌. 日本語訳としては,ホメーロスの諸神賛歌(沓掛良彦訳 筑摩書房)を用いましたが…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)7  アンキーセースとの恋1 ムーサよ語れ,キュプリス女神,黄金ゆたかなアフロディーテーの御業(みわざ)を, 女神は神々の心に甘い恋への憧れをかきたて, 死すべき身の人間の族(うから)も,空を飛びかう鳥をも, また陸と海とが育むあらゆる獣の類をも,その御心に従える. 生きとし生けるものはなべて,うるわしい花冠戴くキュテーラ女神の御業に心よせる. アフロディーテー讃歌(ホメーロス風讃歌第五歌)1

アプロディーテーは性愛を司る女神であると同時に,恋多き女神でもありました. the Theoi projectのサイトでは,神々との恋としてヘーパイストス,アレースを含めて7名,人間との恋として,アンキーセース,アドニス等5名の名前が挙げられています. APHROD…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)6 いきりたった野猪は,すぐさま血にそまった槍をはらいおとすと,アドニスに追いすがり,かれの股に牙を根もとまでつきさし,褐色の砂の上に息もたえだえのかれをおし倒した. 空からすでに意識をうしなって血のなかをころげまわっているアドニスを見つけると,いそいで地上に降りたち,胸をはだけ,髪をむしり,はげしくわれとわが胸を打った. オウィディウス 転身物語 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト4

オウィディウス 転身物語 田中秀央・前田敬作訳 人文書院 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト4 アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)5 「キュテラの女神がわたしの計画をたすけ,わたしの胸におつけになった炎をまもってくださるよ…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)5  「キュテラの女神がわたしの計画をたすけ,わたしの胸におつけになった炎をまもってくださるよう,せつにお願い申しあげます」 ここから黄金の林檎を三個もぎとって,それをもっていきました. 勝ったヒッポメネスは,その褒賞である妻を故郷につれて帰ったというわけです.ふたりは獅子となって,おとなしくキュベレの車を牽いています. オウィディウス 転身物語 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト3

オウィディウス 転身物語 田中秀央・前田敬作訳 人文書院 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト3 アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス) 3 オウィディウス 転身物語 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト1 木は,みをくねらせ…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス) 4 女神は,忠告すればなにか役にたつこともあろうかとおもって,アドニスよ,おまえにもこれらの動物をおそれるように言ってきかせた.『わたしは,こういう動物がいちばんきらいです』『じゃ,話してあげましょう.この古い罪の物語のふしぎさに,あなたもおどろくことでしょう.-----』とこどき接吻のために話をとぎらせながら,つぎのような話を始めた.オウィディウス 転身物語 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト2

オウィディウス 転身物語 田中秀央・前田敬作訳 人文書院 巻一〇 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト2 1. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/06/28/235724 「こうして,女神は,若者の美しさにまよい, ---- 天上に昇ることさえ…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス) 3  オウィディウス 転身物語 アドニスの誕生〜アドニスの転身 ダイジェスト1 木は,みをくねらせ,いくどとなく呻き声を発し,とめどもなく涙をながした. 慈悲ぶかいルキナは,産婦の苦しみをのぞいてやる呪文をとなえた. すると,たちまち木がさけて,そのさけ目から生きた赤ん坊が,いさましい産声をあげてとびだした. いまや彼の美しさは,以前にもまして輝かしかった.女神は片時もかれからはなれず,かれの行くところなら,どこへでもついていった.

アプロディーテーは性愛を司る女神であると同時に,恋多き女神でもありました. the Theoi projectのサイトでは,神々との恋としてヘーパイストス,アレースを含めて7名,人間との恋として,アンキーセース,アドニス等5名の名前が挙げられています. APHROD…

アプロディーテー(ウェヌス/ヴィーナス)2 ギリシャ神話の多くの場面で,アプロディーテーは,「ディオーネとゼウスの娘でエロースの母」として描かれています. 一方,ウラノスの性器からできた泡から生まれ,エロースを伴って登場するアプロディーテーは,ボッティチェリのヴィーナスの誕生で描かれアプロディーテー讃歌で歌われている,よく知られた女神像で,この女神の特質は,この誕生の場面抜きにしては語ることができません. 改めて,ヘーシオドス「神統記」とアプロディーテー讃歌の抜粋を掲載しておきます.

愛,美,快楽,子孫繁栄の女神アプロディーテー. 彼女の誕生については,主に二つのヴァージョンがあります. 一つはヘーシオドスが描く「ウラノス(天)の切断した性器を息子クロノスが海に投げ入れたときにできた白い泡から」とする見解. 一方,ホメーロ…

アプロディーテー(ウェヌス / ヴィーナス)1. アプロディーテーは古代ギリシャの性愛と美の女神.ヘシオドスは,ウラノス(天)の切断した性器を息子クロノスが海に投げ入れたときにできた白い泡からアプロディーテーが生まれたと書いています.ホメロスによれば,ディオーネとゼウスの娘でした.ヘパイストスと不釣合いになり,ハンサムな軍神アレスとの浮気に明け暮れることになりました(アレスとの間にハルモニア,双子の戦士フォボスとデイモス,愛の神エロスの母となりました).ブリタニカ

3回にわたって,転身物語「没薬(もつやく)になったミュラ(ミルラ)」のダイジェストを掲載してきました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/06/22/235752 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/06/23/235718 https://yac…

没薬(もつやく)になったミュラ (ミルラ) ダイジェスト(下) 自分の向こうみずを悔い,できればこのままこっそりとひきかえしたいとも願った. ミュラは,父の胤(たね)をうけて部屋から出ていき,その呪われた胎内におそろしい胤をやどし,恥ずべき罪の子をはらんだのであった. かの女は死をおそれながらも,生きることにも倦みはてて,つぎのように祈った.『どうかわたしを別の姿に変えて,生きるとも死ぬともつかぬ状態にしてくださいませ』悔いる者の祈りにも耳をかたむけてくれる神があった.

3回にわたってお届けするダイジェスト版「没薬(もつやく)になったミュラ」(オウィディウス「転身物語」) 今日は最終回. Commiphora myrrha - Wikipedia 転身物語 田中秀央・前田敬作訳 人文書院 巻一〇 七 没薬(もつやく)になったミュラ (ミルラ) ダ…

没薬(もつやく)になったミュラ ダイジェスト(上) ミルラの変身を取り上げているギリシャ神話原典は,いくつかありますが,ミルラ(またはスミルナ)が父親に恋をし,結果として没薬の木(ミルラの木)へ変身するという点では一致しているものの,その他のストーリーは,それぞれ,かなり異なっています.例えば父親に恋するきっかけ,等.今日と明日・明後日,オウィディウス・転身物語「没薬(もつやく)になったミュラ」を,かなりはしょったダイジェスト版で3回にわたってお届けしたいと思います.

ミルラが没薬の木(ミルラの木)に変身したとする物語を取り上げているギリシャ神話原典は,いくつかありますが--- 今,日本語訳が私の手もとにあるのは,次の三編. 1. 偽アポロドーロス「ギリシャ神話(ビブリオテーケー)」 高津春繁訳 岩波文庫 2. アン…

アプロディーテーと没薬(もつやく) ギリシャ神話で,父親に恋し交わってしまったミルラ(ミュラ/スミルナ)が変身したとされる「没薬」ミルラ.アプロディーテーの神木の一つに数えられていますが,ギリシャ神話原典に物語が残されているものの,没薬を聖なる植物としたとする記述は,実は残されていないようです,なお,日本語のミイラ(木乃伊)は,ミルラが語源!

ギリシャ神話で,父親に恋し交わってしまったミルラ(ミュラ/スミルナ)が変身したとされる「没薬」. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/06/20/235530 yachikusakusaki.hatenablog.com ミルラとも. マートル(ギンバイカ)と同じように,…

アプロディーテー(ウェヌス/ ビーナス)とマートル(ギンバイカ)2.   ⇒アプロディーテーと没薬(もつやく)の木(ミルラの木) 「マートルはアプロディーテーの神木」を裏付ける神話として,マートルに変身したミルラの物語が挙げられますが.現在残っているギリシャ神話原典は,ほぼ全て「ミルラが変身した植物は「没薬(もつやく)の木(ミルラの木)」としています.

マートル(ギンバイカ)は,アプロディーテーの神木として知られ,結婚式の日、花嫁はマートルガーランドを身につけ,マートルの香りの水を浴びたとされています. PLANTS & FLOWERS OF GREEK MYTH 2 マートルとアプロディーテーについては,著名な旅行家パ…

古事記で描かれたヤマトタケルの物語では,野蒜のあと,さらに3種類の植物が登場します.いずれも歌に歌われる形で.「マツ」「シラカシ」「ヤマノイモ」です.「をはりに ただにむかへる をつのさきなる ひとつまつ(尾張の方(かた)に まっすぐに向きあう 尾津の崎なる 一つ松)」「くまがしが葉を うづにさせ その子(そのクマカシの葉を 髪飾りにせよ 倭へ向かう者たちよ)」「いながらに はひもとほろふ ところづら(その稲の茎に 絡まり這い廻る 山の芋の蔓よ)」

東征を終えたヤマトタケルは,足柄の坂の神を「ヒル(野びる)」の片割れで殺し,頂きから振り返ります. 「吾妻はや」---- 古事記 人代篇 其の三 (口語訳古事記 三浦祐介 文藝春秋) 足柄の坂本に到り,食(お)し物を口に運んでおった時に,その坂の神が…

「すぐさまその食い残しのヒルの片割れを,狙いすまして投げつけると,白い鹿の目にあたっての.鹿はころされてしもうた」匂いや味などに刺激のある植物は魔よけの力があると考えられていました.一方,匂いや味に刺激がある植物は,また滋養に富んだ野菜と考えられ,中国最古の医学書『黄帝内経』にある五菜の一つ薤は野蒜のこと.現代でも山菜愛好家に好まれるノビルですが,スイセンやタマスダレの誤食には注意.ノビル 野蒜2

植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜2 ノビル 野蒜1 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/04/29/235542?_ga=2.29427007.1803228887.1618937900-847026506.1533741043 ノビル - Wikipedia 古事記 人代篇 其の三 (口語訳古事記 三浦祐介…

古事記には「ノビル」が2箇所に登場します. 「それで,すぐさまその食い残しのヒルの片割れを,狙いすまして投げつけると,白い鹿の目にあたっての.鹿はころされてしもうた」「いざ子ども のびるつみに ひるつみに わがゆく道の かぐわし はなたちばなは ほつえは とりゐがらし」植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜 

植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜 古事記には「ノビル」が2箇所に登場します. 初めの場面は,ヤマトタケルが東征から帰途につく途中,足柄の坂で,坂の神が姿を変えた白鹿に向けて投げつけた「食い残しの“ヒル” 」として. 2カ所目は,ホムダワケ…

オレイアス3 女神の頭の動きにつれて,たわわにみのった田畑がゆれた.女神はあるむごい罰を考え出した.つまりファメス(飢餓,リモス)によって,エリュシクオンを苦しめてやろうと思いついたのだ.女神は自分でファメスのもとへ出かけることができないので,山の妖精たちの中から田園に住むオレアスを呼んで,次のように言われた.「おまえは,この飢餓(ファメス)にあの神を冒瀆した男の罪深い体内に入ってくれるよう命じておくれ」

一昨日からとりあげている,山や洞窟のニンフ(ニュンペー),オレイアス(Oreias 複数形はオレイアデスOreades). 昨日までに三組のオレイアスを取り上げましたが, エコー(エーコー) ドリュアスとされることも https://yachikusakusaki.hatenablog.com/…

オトレーイス. ゼウス,そしてアポローンという,ギリシャ神話でもっとも女性関係が華やかな?二人の神と結ばれ,それぞれの子をもうけたオレイアス. 彼女のことを伝えるギリシャ神話原典は,アントーニーヌス・リーベラーリス「メタモルフォーシス」のみ.そして,ここでは,彼女自身の物語はほとんど語られていません. メリテウスはゼウスと妖精オトレーイスとの間に生まれた子供であった. オトレーイスは,ゼウスが彼女と交わったことをヘーラーが憤るであろうと恐れて,この子を森に捨てた.

昨日からとりあげている,山や洞窟のニンフ(ニュンペー),オレイアス(Oreias 複数形はオレイアデスOreades). オレイアスは,木や森のニンフ,ドリュアスに属すとみなされ,山のコニファーのニンフとされています.ギリシャ神話の時代,山と木々(特に山…

オレイアス(複数形オレイアデス) 山や洞窟のニンフ(ニュンペー). よく知られているのがナルキッソスに恋したエコー.また幼子ゼウスを養育したイーデーとアドラスタイアーもオレイアデスです. (レアーは)ディクテーの洞穴でゼウスを生んだ.そして,クーレースたちおよびメリッセウスの娘でニムフなるアドラーステイアーとイーデーにその子を育てるように与えた.ビブリオテーケー

ギリシャ/ローマ神話に数多く登場するるニンフ(Nymph ニムフ,ニュンペー). 山,水,森,木,場所,地方,都市,国などに固有な神的力を擬人化した精霊/マイナーな女神で,若い乙女の形をとって現れます. 様々なタイプがあって,それぞれに名前が付けら…

その言葉を申し終えたかとみるとすぐ,ヲウス(ヤマトタケル)は,まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく,クマソタケルの体をずたずたに切り刻んで殺してしもうたのじゃった.(古事記) ウリは,古くは特にマクワウリのことで,日本には紀元前に渡来し,弥生時代前期の遺跡から種子が出土.青果売り場でマクワウリに取って代わって現在並んでいるのがメロンですが---- マクワウリもメロンの一変種です. 「うり」(瓜)1

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 「うり」(瓜)1 “三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記” 其の三 ヤマトタケルの戦いと—天翔ける英雄 その言葉を申し終えたかとみるとすぐ,ヲウス(ヤマトタケル)は,まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく,クマソタ…

アポローン(5) ピュートーン(ピュトン)の殺害 ピュートーン(ピュトン 英語名 パイソン)は,ガイアがデルフォイ(デルフィ)の神聖な神託を守るために置かれた極悪な大蛇です.ある人によると、この生き物は大洪水によって残された腐ったスライムから生まれたと言われています.アポローン神が神殿を領有したとき,彼は百本の矢の一斉射撃でピュートーンを殺害しました. ピュートーンをガイアの息子としているのがヒュギーヌス「神話集」.一方,ホメーロス風讃歌「アポローンへの賛歌」では,母親はヘーラーと記載しています.

予言と神託,音楽,歌と詩,弓術,癒し,疫病と病気,若者の保護を司るオリンポスの神,アポローン. 今回は,よく知られているアポローンの神話の中から, 「デルポイ(Delphoi)の神託を下す神殿を守っていた蛇/龍のピュートーン(ピュトン)の殺害」 the …

「ひさご」(瓢.ヒョウタン)2 今日の「ひさご」は,器としてのヒョウタン(もしくはユウガオの実).ヒサゴが登場するのは,オキナガタラシヒメ(神功皇后)に依り憑いた神の言葉の中.「天つ神,国つ神と,山の神と,河や海のもろもろの神とに,ことごとく幣帛を捧げ祭り,わが御魂を船の上に置き祀りて,真木の灰をヒサゴの中に入れ,また,箸と平たい皿とを山のごと作り備え,それらを皆,大海に散らし浮かべながら渡り行くがよいぞ」 植物をたどって古事記を読む

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 「ひさご」(瓢.ヒョウタン)2 前回は,若いヤマトタケル(ヲウス)の髪型を表す「ヒサゴバナ」として登場する場面を取り上げました. yachikusakusaki.hatenablog.comこの時には,オホウス(ヤマトタケルの兄)は…

ひさご(瓢 ヒョウタン) “もう,この時には,オホウスはひとかどの男じゃったが,年の離れた弟のヲウスは,髪をヒサゴバナに結うての,ヤマトヲグナと呼ばれておったのじゃ” ヒサゴバナは,十四,五歳の少年の髪型のことで,ヒサゴの花のような形といわれ,若いヤマトタケル(ヲウス)の髪型でした. 「植物をたどって古事記を読む」

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 今日とりあげるのは,「ひさご」. 漢字では瓢.ヒョウタンを意味します. (瓠・匏もおなじく「ひさご」.どのように使い分けているのかよく分かりません) “三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋”によ…

日本の「産神」(エイレイテュイア番外編) 出産の女神エイレイテュイアは,古代ギリシャでは,重要な信仰対象となった女神でした.かつての日本にも,妊婦と生児を守ってくれる出産の神さまとして“産神”がいました.出産は穢れと考えられ,神仏は近づかないとされていましたが,産神だけは穢れを厭わず訪れる神と信じられ,出産が始まると来臨し3日目あるいは7日目ごろには帰ると考えられていました.

アポローンやヘーラクレースの誕生で名前が登場する出産の女神エイレイテュイア. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/02/11/232656 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/02/14/001326 EILEITHYIA - Greek Goddess of Childbir…

エイレイテュイア2 重要な信仰対象となった女神で,ギリシャ周辺に沢山の聖堂がありました.出産を早め,陣痛を和らげるために,出産の苦しみにある女性たちから呼び寄せられる女神.「『アルゴスのアルクメナさまのお産は,もうおわりました』お産の女神は,はっとおどろいて,そのはずみにくみあわせていた手をほどいてしまったんだよ.と,同時に,わたしの呪縛(いましめ)もとけて,すっかり楽になったの」アルクメネのお産とガランティスの機転/オウィディウス転身物語

ゼウスとヘーラーの間にうまれた出産の女神エイレイテュイア. EILEITHYIA - Greek Goddess of Childbirth (Roman Lucina) アポローン,ヘーラクレースの誕生の場面ではヘーラーの意を受け,レートーやアルクメーネーの出産を遅らせるという,かなり損な役回…

エイレイテュイア1 「いちばん最後に ゼウスは ヘラを 咲き匂う花嫁となさった. 彼女は ヘペ アレス エイレイテュイアを生んだ」「七日七夜というもの,苦しみどおしに苦しんだあげく,もうへとへとに疲れきって,天にむかって両腕をさしのべ,大きな声をあげてルキナ(エイレイテュイア)やニクシ(ローマの妊婦を守る女神)の御名をよびました. ルキナさまは,すぐに来てはくださったけれど----」

出産の女神 エイレイテュイア1 ギリシャ神話を注意深く読んでいかないと,見落としてしまう名前のように思います.ゼウスとヘーラーの娘という血筋に当たるにもかかわらず. EILEITHYIA - Greek Goddess of Childbirth (Roman Lucina) いちばん最後に ゼウ…

アポローン(4) デロス島での誕生2 エイレイチュイアがデーロスに歩みを向け始めるやすぐに,分娩は始まった.子供が光の中へ跳びでてくるや,女神たちはいっせいにどっと声を挙げた.テミスが,ネクタルと美わしきアンブロシアとを不死なる手でふくませた. レートーよ,喜びたまえ,弓もつ力勝った子供をあなたは産んだのだから.ポイボス・アポローンは女神たちにこう言った.「竪琴と曲がった弓は,今後,私が司る.それにゼウスの誤謬なき考えを,私は人間どもに予言しよう」

昨日に引き続き,アポローンへの讃歌から,デロス島での誕生の場面を引用します. APOLLO (Apollon) - Greek God of Music, Prophecy & Healing アポローンを身ごもったレートーは,デーロス島に神殿を建てる約束をして,この地で出産することを選びます. …

アポローン(3) デロス島での誕生1 レートーはヘーラーの前のゼウスの妻とも言われていますが--- 「デーロスよ,ポイボス・アポローンの座となり,豊かな社を設けてくれまいか---」「話によればアポローンは,とりわけ自分の力をたのむお方.軽蔑し,大地の中に押し沈めるのではなかろうか---」.レートーは神々の厳かな誓いをたてた.九日九夜,いっこうに生まれてこない陣痛の,刺すような苦しみを忍びつづけなければならなかった.(エイレイテュイアが手伝わなかったからである)アポローンへの讃歌より

アポローンが関わるよく知られた神話12編を,Theoi project のサイトが掲げています. APOLLO (Apollon) - Greek God of Music, Prophecy & Healing 原典に沿いながら,一つずつゆっくり取り上げていくつもりです. この内の幾つかは,かつて本ブログでとり…

アポローン(2) 何回か取り上げ,まとめも1回試みてあるアポローンですが,出来るだけ原典の逸話にふれながら,改めて全体像を調べてみることに.“アポローン(アポロン)は,予言と神託,音楽,歌と詩,弓術,癒し,疫病と病気,若者の保護を司るオリンポスの神.月桂樹の花輪と枝,弓と矢筒,カラス,竪琴などをシンボルとし,長い髪で髭のないハンサムな青年として描かれていました” 理性を体現したような癒やしの神であると同時に,非道に対しては残虐とも言える罰を下します. 

多くの恋をし(59回),子供もたくさんもうけた(56人)アポローン. APOLLO (Apollon) - Greek God of Music, Prophecy & Healing 絶世の美男子であるとともに,すべての古代ギリシャ・ローマの神々の中で最も広く尊敬され,影響力をもった一柱. (Britann…