短歌(万葉以外)/詩/ 短歌に詠まれた植物・季節

シュウカイドウ(秋海棠)を詠んだ短歌 素敵な名前.薄紅色の,可憐で優しい,みかけるとほっとさせてくれる花.「秋色中第一となす」とも言われています.  青苔の上にこぼれてうす紅く形くづさぬ秋海棠の花 窪田空穂  秋海棠のうすき種袋(しゅたい)がたり長に擦れあひてをりささやくに似て 生方たつゑ  秋かけて夏はやくより咲きつぐや秋海棠のうすべにの色 窪田章一郎  おりおりの心に映えて華ありき秋海棠は匂ううすべに 坪野哲久

先日,鎌倉妙法寺で見かけた秋海棠. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/09/19/234740 素敵な名前.薄紅色の,可憐で優しい,みかけるとほっとさせてくれる花. 園芸植物として,ずっと後から入ってきたベゴニアの仲間ですが,名前も花姿も…

海蔵寺まで秋みつけに行って来ました.夏から咲いている花の加え,タマスダレ,シュウメイギク,さらにはシオンといった秋の花もしっかり咲き始めていました.コムラサキも色づいて秋の風情.そして,海蔵寺といえば萩.山門脇の萩は,咲き始めたばかりでしたが,境内の株は,かなり開花が進んで,三分咲きといってよいかと思います. 萩原を朝たちくれば枝はさもをればをれよと花咲きにけり 和泉式部  萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなき 源実朝  

午後,鎌倉海蔵寺まで散歩. 夏の名残を残した花たちに加え,秋の花も咲き始めていました. ハナトラノオは夏から咲いている花ですが,タマスダレは秋の花. タカサゴフヨウは夏の花.トキワマンサクは春の花ですが,秋にも咲くようです. シュウメイギクは…

秋の夕(ゆうべ)・秋の夕暮(ゆうぐれ)を詠った短歌  東京は真夏日.西日本は猛暑.「秋の夕暮」に思いをはせることがなかなかできません. さびしさに宿を立ち出でて眺むれば何処も同じ秋の夕暮 良暹  寂しさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮 寂蓮  心なき身にもあはれは知られけり鴨立つ沢の秋の夕暮 西行  見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮 藤原定家  おどけたる一寸法師舞ひいでよ秋の夕(ゆふべ)のてのひらの上 与謝野晶子

今日は,「秋の夕(ゆうべ)」「秋の夕暮(ゆうぐれ)」の短歌を取り上げようと昨日から決めていたのですが---- 厳しい残暑がつづきます. 東京は真夏日.西日本は猛暑.9月の最高気温を示したところもあるようです. https://tenki.jp/forecaster/deskpart…

梨を詠んだ短歌  9月上旬中旬の梨主力品種は豊水.果肉はやわらかで多汁.甘味の中にほどよい酸味.栽培面積第2位の品種で親は「幸水」×「石井早生× 二十世紀」. 梨はむと富士にむかひてひらきたるわが口を吹く初秋の風 前田夕暮  こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ 若山牧水  みづみづしかがやく珠をまもらむと袋をかけて梨はしづまる 生方たつゑ  男たる鬱を抱きて帰り来つ梨むく妻へ梨食ふ子らへ 高野公彦

秋の味覚ナシ. 今,ご近所の青果売り場に置かれている主力品種は豊水です. ほかに置かれていたのは,二十世紀とあきづき. 2018年の栽培面積では,豊水は第2位.二十世紀とあきづきは,それぞれ第4位,第5位となっています. https://www.naro.go.jp/la…

イチジクを詠んだ短歌2 人類が最初に栽培した植物の一つ.「単為結実型」が紀元前9,400~9,200年頃の遺跡から発見されています. 生きてゐてああよかったと朝露にしつとり濡れし無花果を食む 香川進  無花果の繁みに遺(のこ)る少年期も嗅ぎつけられる蟻攀(すが)りゆく 平井弘  無花果の青葉明るき下ゆくと妻病みてよりわが愉しまず 田谷鋭  無花果のしづまりふかく蜜ありてダージリンまでゆきたき日ぐれ 小中英之  恋を好むひと多すぎる無花果を食めば愚かに泣けて泣けて 山田富士郎

子供のころの思い出から,懐かしさを感じてしまうイチジクですが,イチジクの家庭での栽培が最近少なくなったように思います. 一方,季節になるとイチジクが果物売り場に並ぶようになっています. 現在多く流通している品種は,かなり日持ちが良い桝井ドー…

イチジクを詠んだ短歌1  秋明菊がほぼ満開.百日紅の花は雨に打たれて散っている秋.スーパーに店先に,無花果が.懐かしさを感じる果物です.  いきどほろしきこの身もつひに黙(もだ)しつつ入日のなかに無花果を食む 斎藤茂吉  生きていてああよかったと朝露にしっとり濡れし無花果を食む 香川進  ひめやかに幼ならに来しさきはいか葉がくれに乳房にほふ無花果 木俣修   宵々の露しげくしてやはらかき無花果の実に沁みとほるらむ 佐藤佐太郎

買い物途中で立ち寄ったおんめ様(大巧寺)の小径には,秋明菊がほぼ満開になっていました.蒸し暑さはまだつづきますが,秋ですね. 水鉢に植えられた蓮の花も最後の花になるのでしょうか. ハナトラノオは,ほぼ夏を通して咲き続けていた気がします.まだ…

コオロギを詠んだ短歌  朝晩の気温は確実に下がってきたと思います.コオロギの声が秋を感じさせてくれます.古くは,「秋鳴く虫の総称」でした. 夕月夜ゆふづくよ心もしのに白露の置くこの庭に蟋蟀(こほろぎ)鳴くも 湯原王  こほろぎのしめらに鳴けば鬼灯(ほほづき)の庭のくまみをおもひつつ聴く 長塚節  独り居の身に相応(ふさ)ひゆくや本棚の裏にひそみてこほろぎの鳴く 大西民子  恋ふというしづけき思念,枕べに夜もすがらなるこほろぎのこゑ 成瀬有

今日の東京は,正午の気温が30℃を切ったとニュースで報じていましたが--- 結局32℃まで上がったようです.関東地方の気温は,明日,更に低そうですが,その後はまたムシムシ暑い日が続くとのこと. それでも,9月に入ってそろそろ一週間. 朝晩の気温は確実に…

9月を詠んだ歌 9月になっても体温並みの暑さ.秋のはずですが---しかし「9月から11月が秋」は感覚には合つています. 九月よりわがま近くに聞こゆるは小学校のおさな等のこゑ 斎藤茂吉  九月一日来てまたも食ふ焼きむすび妻子もわれも命生きたり 松村英一  歌え歌う雨の九月の峰越えてびしよ濡れの谺(こだま)かえる楽しさ 佐佐木幸綱  梨もぐと手をのばしたる少年の脇下の翳(かげ)りほのかな九月 久々湊盈子

9月になりました.しかし--- 「9月になっても体温並みの暑さ.東京は今年71日目の真夏日で最多タイ」 https://weathernews.jp/s/topics/202309/010175/ 秋のはずですが--- 秋 日本国語大辞典 ①四季の一つ。現在では九月から一一月、 旧暦では七月から九月ま…

オシロイバナを詠んだ短歌  普段はあまり気にしませんが,かわいらしい花です.沢山の別名は愛されている証? 夕化粧,Four-o’clock,Marvel of Peru. 松陰の草の茂みに群れ咲きて埃(ほこり)に浴(あ)みしおしろいの花 長塚節  白粉草(おしろい)の赤い花束夕べ咲きみち朝はわがごと小花つぼめて 北見志保子  砂地なる道のほとりに白粉はいまだ花咲くくさむらなせり 佐藤佐太郎  散漫にいまだ咲きつづくおしろいの花の陰,実の鮮(あたら)しき黒 田谷鋭

夕方,オシロイバナ(白粉花)が咲いているの出会いました.どこにでも咲いているので,普段はあまり気にしないで通り過ぎてしまいますが,かわいらしい花です. オシロイバナ ナデシコ目 Caryophyllales,オシロイバナ科 Nyctaginaceae,オシロイバナ属 Mir…

カンナを詠んだ短歌 今年も楽しませてくれた線路横のカンナ.今日見たところ,残つている花はわずかでした.終わろうとしてる夏を感じます. カンナの花黄なる洋燈(ランプ)の如くなり子供出で来よ背戸の月夜に 北原白秋  カンナ刈り鶏頭刈らるる芝の上にはかに広き曇天となる 葛原妙子  崖際に朱のカンナ燃ゆぎらぎらと危ふきものは炎の色に 武川忠一  赤々とカンナは咲けり打たれなば打ち返すべしと思い至りぬ 高橋幸子   灌木も老婆もつひに挽かざりし古鋸が挽く花カンナ 寺山修司

夏,毎年,楽しませてくれる横須賀線横のカンナ. 今日見たところ,残っている花はわずか. (一回刈り取られた後,また咲く花もありますが) 夏の終わりを感じます.あんな酷暑はもうごめんと思いつつ,ちょっぴりさみしさも感じてしまう--. カンナは不思…

トマトを詠んだ短歌  真っ赤なトマトが当たり前になったのは,タキイ種苗が「桃太郎」を完成させて以来.現在では,一年中,真っ赤なトマトが,野菜売り場の前面を飾り,トマトは人気野菜になつています. さ庭べにトマトを植ゑて幽(かす)かなる花咲きたるをよろこぶ吾は 斎藤茂吉  村の子は,/大きとまとを かじり居り。/手に持ちあまる 青き その実を 釈迢空  忽然と人ゐぬ厨(くりや)水口(みなぐち)に赤きトマトの相寄りにけり 葛原妙子  薄く切る皿のトマトよ血の匂う日の輝きもかかる色なる 平井弘

トマトは夏野菜と言われていましたが,現在では,一年中,真っ赤なトマトが,野菜売り場の前面を飾っています. 真っ赤なトマトが当たり前になったのは,それほど古いことではなく,1983年,タキイ種苗が,完熟で出荷できるトマト「桃太郎」を完成させて以来…

キュウリを詠んだ短歌(キュウリ2) 一年中生で食べられているきゅうり.サラダ・酢の物・ピクルス----.中国では炒め物にも用いられていますが. みちのくに病む母上にいささかの胡瓜を送る障りあらすな 斎藤茂吉  焼け込みし畑の土にうれはてて赫くなりたる黄瓜まろびおり 三ヶ島葭子  かかへたる青き胡瓜の感触がわかれて帰る腕(かひな)の上に 君島夜詩  庭畑にもぎし胡瓜をはりはりと囓りつつ朝の息をととのふ 木俣修  

キュウリ2 みずみずしいキュウリ.普通,生で食べますね. http://tokunaganouen2608.com/shop/245 メロンと同じ属ということに驚かされますが,生食という点では同じ. キュウリは熟す前に食べますが,メロンも野菜として食べるときには若い実を用いるそう…

残暑を詠んだ短歌  今日の鎌倉は「残暑」の1日.台風による気候の変動,そしてお盆休みも終わった現時点では,違和感なく残暑という言葉を使える気がしますが,残暑という言葉が一般的になったのは,比較的最近のことかもしれません. 幼子をもつゆゑにころすわが怒り白き残暑のひかりの中に 木俣修  あはあはと日の射してゐる竹群(たけむら)の梢も桃の梢も残暑 佐藤佐太郎 [付録:お盆の日付の不思議] 

今日は,お盆の8月15日には行けなかった墓参りに. よく晴れた芝生墓地は,アキアカネが飛び交い,さるすべりが満開でした. アキアカネの写真撮影は,残念ながら叶いませんでした.昆虫ではオオスカシバがアベリアの蜜を吸いに来ていました.赤褐色の帯が,…

西瓜を詠んだ短歌  美味しくなつている小玉スイカ.負けずと大玉スイカにも新品種が開発されています.今年もう一回食べたいもの. 西瓜割れば赤きがうれしゆがまへず二つに割れば矜(ほこ)らくもうれし 長塚節  ごろごろと土間にころがる青西瓜一つ一つに大きかりけり 三ヶ島葭子  碧き珠の大西瓜なれ食ひて見ねば讚め得ずとにかく刃をあておろす 阿部静枝  西瓜切る妻の傍に座を占めてその眼見張りてゐるや男童 大岡博

夏の果物といえば,スイカ. 一時期,人気に陰りが出たように思いましたが,最近は美味しい小玉スイカが沢山開発され,人気を盛り返してきているように思います. ネットで検索すると沢山の人気品種の名前が: ひとりじめ,スウィートキッズ,黒子玉,姫まく…

暑し・暑さを詠った短歌  鎌倉は異常に蒸し暑い1日でした.台風7号が運んだ海風のせいでしょう.鎌倉の谷戸のお宅にはサルスベリが最後の花を咲かせ,わが家ではジンジャーリリーが開花しました. 声聞けばあつさぞまさる蟬のはのうすき衣は身にきたれども 和泉式部  水の音に暑さわするるまどゐかな梢の蟬の声もまぎれて 西行  暑き山くだりくだりて寂(しづ)かなる安楽律院の水のみにけり 斎藤茂吉  やや暑き山の日ざかりの心よく大き西瓜をわりにけるかも 古泉千樫

暑い鎌倉の1日でした.異常な蒸し暑さ.関東地方ではなく,紀伊半島へ向かった台風7号が運んだ海風のせいでしょう. 三時過ぎ,所用で鎌倉扇ガ谷の谷戸のお宅へ. 通りに沿った何軒ものお宅に,サルスベリが植えられていて,最後の花を咲かせていました.ざ…

ナスを詠んだ短歌  日本人が長く食べてきた野菜なす(古くはなすび).世界に広がったなすには,様々な姿・色をしたものが.黒に近い濃い紫色の日本のなすは世界でも人気とか. 葉も花も実も紫の茄子ばたけつやつやしもよ朝露帯びて 窪田空穂  女(め)のわらは入日のなかに両手もて籠(こ)に盛る茄子のか黒きひかり 斎藤茂吉  出盛りとなりて紫紺の色深し一山の茄子を日ぐれにあがなふ 君島夜詩  ゆうぐれに澄む茄子畑かなしみのしずくとなりて茄子たれており 玉井清弘

「夏野菜の代表の一つ」とされるナスですが,現在の日本では一年中手に入る野菜となっています. 各県の分業が進み,冬春は高知・熊本・福岡などから出荷され,夏秋は群馬・茨城などからの出荷が多くなります. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?…

立秋/秋立つを詠んだ短歌  明日は立秋.「とても秋とは言えない」と,評判の悪い日です.しかし,夏至と秋分の中間点.太陽の運行は,着実に秋を目指しています. 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行  秋立つと人はつげねど知られけりみ山の裾の風のけしきに 西行  かの青き空のかがみにあらはれてさやかに秋の来たるを見ずや 太田水穂  秋立つは水にかも似る/洗はれて/思ひことごと新しくなる 石川啄木  針箱はなつかしきもの秋くれば針の光りの身をそそるかも 今井邦子

今日は大暑の最後の日. 晴れていながら時々雨がザーッと降るといった1日でした.奄美大島付近に停滞している大きな台風の影響が,鎌倉にまで及んでいるようです. 昨日今日は,「大暑の末候:大雨時行 たいうときどきにふる」に合致しているとも言える日で…

芙蓉を詠んだ短歌 いつも夕方〜夜で,萎んだ花しか知ることがなかった鎌倉本覚寺の白芙蓉. 今日は開いている姿を写真におさめました. しろ百合はそれその人の高きおもひおもわは艶(にほ)ふ紅芙蓉とこそ 与謝野晶子  白花の芙蓉のをはりしづかなる園はいさよふゆうべの光 山本友一  中東湾岸 危急を告ぐる朝(あした)あした 薄くれないの芙蓉咲きつぐ 加藤克巳  白芙蓉あしたは軽(かろ)く夕まぐれほのぼの重し光(かげ)を孕みて 栗木京子

見るのがいつも夕方〜夜で,萎んだ花しか知ることがなかった鎌倉本覚寺の白芙蓉. 今日は開いている姿を写真におさめました. 芙蓉は花の少ない八月には貴重な花.ハイビスカスやムクゲと同じフヨウ属Hibiscusです. 清楚で美しい顔を「芙蓉の顔(かんばせ)…

さるすべり百日紅を詠んだ短歌  鎌倉本覚寺では枝垂れ桜が有名ですが,もう一つよく知られている植物がサルスベリ.今日の本覚寺では5分咲き.米国議事堂の横にもCrepe (Crape) Myrtleが夏の花としてとして植えられています.  妙宣寺 豪雨のあとの庭 潔し—。ひろく流るゝ 百日紅のはな 釈迢空  急湍(きゅうたん)を流るるさるすべりの花のうず盛りあがりざまに岩分けて落つ 川口美根子  百日紅色おとろへて咲き居たりいくさ敗れし日の炎天に 蒔田さくら子

最近暗くなってから出かけていた夕方散歩.今日は少し早めに出かけました.本覚寺を通って,妙本寺まで. 鎌倉本覚寺は,日朝さまと親しみを込めて呼ばれることもあるお寺.子供のころは何回か寺近くの友人と遊んだ思い出のあるお寺.遊んでいる子供は最近ほ…

雷を詠んだ短歌 暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.雷を表す日本語としては,古くは「いかずち」もしくは「なるかみ」が一般的だったようです. 雷神(なるかみ)の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ 柿本人麻呂  逢ふことは雲居はるかに鳴神(なるかみ)の音に聞きつつ恋ひわたるかな 紀貫之  鳴神(なるかみ)の鳴らす八鼓(やつつみ)ことごとく敲(たた)きやぶりて雨晴れにけり 正岡子規  岩根ふみ天路(あまぢ)をのぼる脚底ゆいかづちぐもの湧き巻きのぼる 斎藤茂吉

大暑のほぼ中日の今日8月1日. 昨日までと同様,暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.東京は正午頃よりとのことでしたが, https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2023/08/01/24498.html 鎌倉は午後2時過ぎから1時間以上,稲妻と大雨に見…

浜木綿の蕾が一つ,見事に開きました.鎌倉おんめ様(大巧寺)の浜木綿です. み熊野の浦の浜木綿いはずとも思ふ心の数を知らなむ 源実朝  もろかりし妻のいのちをおもひおれば浜木綿の花に虹のいきほふ 川田順  夕立の雨をしのぎて浜木綿のつぼみ持てる茎ふとぶとと伸ぶ 植松壽樹  はまゆふのそよがぬ闇の汝を抱き盗人のごと汗ばみにけり 高野公彦

このところ,毎晩通るおんめ様(鎌倉大巧寺)には浜木綿があります.今年は三つの蕾がつきましたが,一つは咲き終わり,残りは二つ. そして,今日通りがかったとき,一つのはまだ蕾のままでしたが--- 一つが見事に開きました! 浜木綿の語源は,「浜に咲く…

むくげ・おんめ様の花  おんめさま(大巧寺)では,花の少ないこの時期でもいくつもの花に出会います.ユウスゲ,ハナトラノオ,オカトラノオ,オミナエシ,シュウメイギク---.一番目立っているのがムクゲ.ピンク,白,一重八重と多様な花が秋まで楽しめます. 薮原に,むくげの花のさきたるが よそ目さびしき 夕ぐれを行く 釈迢空  花終る百日紅(ひゃくじつこう)としろたへの木槿(むくげ)と見えて朝ごとの窓 遠山光恵

夕方,おんめ様(鎌倉大巧寺)の小径を歩いてきました. 7月初めにすでに咲いていたユウスゲ.まだ花を付けていてくれました.趣と気品のある花です. ハナトラノオとオカトラノオ. 「虎の尾」の名前がついているので,近縁の種と思っていましたが,かなり…

大暑 今日から約15日間は,二十四節気の一つ「大暑」.二十四節気に「中暑」はありませんが,中国語「中暑」は熱中症.暑いは中国語では「熱」(簡体「热」).中国で暑さ寒さを表現する漢字は「热」「暖」「温」「涼」「冷」.日本では「あつし」 「さむし」 「ぬるし」 「すずし」「あたたか」「ひややか」「つめたし」--- こゑひくき大暑の蟬やしんしんと木の間の闇をひろぐる如く 石川不二子

今日も暑い1日.そして,「大暑」です. 大暑には「激しい夏の暑さ」の意味もありますが,今日から約15日間は,二十四節気の一つ「大暑」. たい‐しょ【大暑】(日本国語大辞典) ①はげしい夏の暑さ.夏のきびしい暑さ.酷暑.極暑.烈暑. ②二十四節気の一…

半夏生(七十二候) 日本人の多くが季節を思い浮かべるときに,また農作業などで利用してきたのが,24節季72候を利用した季節.今日は二十四節気では夏至.七十二候では半夏生(はんげしょう)にあたります.半夏が生え始める頃.「半夏」は「烏柄杓」(からすびしゃく)の漢名.あまりなじみのない植物ですが,二十四節季の「雑節」として半夏生が導入された平安時代に「半夏」と称されていたのは,間違いなく「カラスビシャク」.ドクダミ科の半夏生は江戸時代以降の用例しか見当たらないとのこと.

今日も蒸し暑い1日でした. 7月に入って3日.季節としてはもう夏.しかし,私は,梅雨が明けないと夏が来たという感じになりません. 国立天文台計算室のウェブページによれば,初夏秋冬という季節には絶対的な定義は存在しないとのこと. 暦Wiki/季節 - …

ユウスゲとユウスゲを詠つた詩・短歌  おんめ様(鎌倉大巧寺)に夕菅(黄菅)が咲いていました.黄色の色彩にやさしく,ときには淋しい美しい花.野で出会ったら見とれてしまうでしょう. 「薊(あざみ)の花やゆふすげにいりまじり 稚(をさな)い いい夢がゐた――いつのことか!」(立原道造)  夏の花原の黄菅はあけぼのの山頂よりもやや明うして 与謝野晶子  人恋はばひとを殺(あや)むるこころとは風に乱るる夕菅の花 道浦母都子  わがために優しかりにき野の花の黄すげ夕すげこの夏の花 道浦母都子

昨日・今日と,遠出をする元気が出ない日々.主としてはっきりしない天気のため(:曇,時々しとしと〜ざっーと降る雨). 夕方散歩は,いつものおんめ様(大巧寺). 花が少なくなってきている季節ですが,この小径では,かなり多くの種類の花に出会えます…

ポプラ2 ポプラを歌った詩歌(キントラノオ目の植物12) ポプラを詠んだ英米詩が多い中,ウィリアム・クーパーの"The Poplar Field"は名詩として知られています.日本でも明治以降短歌に盛んに詠まれました.しげり立つぽぷらの青葉いちじるくか黒くなりて風にさやげり 古泉千樫  白楊(ポトナム)の直ぐ立つ枝はひそかなりひととき明き夕べの丘に 小泉苳三  風にのるポプラの花の果てしなきゆく手目に追ふ淡き漂ひ 長澤美津  夕焼けに抱かれながら陰影にみちみちていま謳う,ポプラは 三枝浩樹

キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています. 今日は,ポプラの2回目.ポプラを歌った詩一編と日本の短歌を取り上げます. 出典は,いつもの古今短歌歳時記(鳥居正博編 教育社)です. 植物学に重点を置いた説明では,「ポプラ(P…

シダレヤナギ/ヤナギ (キントラノオ目の植物8) 多くの日本人がイメージする柳は,シダレヤナギかと思います.学名はSalix babylonicaですが,バビロンにこの柳はありません.聖書の詩篇137篇の冒頭に記載されている木(ヘブライ語からするとポプラを意味する)が柳だと長く誤解されていたため,babylonicaが種小名となりました.万葉集に詠まれていることから,日本へは奈良時代後期までに渡来していたと考えられます.春さればしだり柳のとををにも妹(いも)は心に乗りにけるかも 万葉集

キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています. 今日は,シダレヤナギ(枝垂柳)/ヤナギ(柳) https://en.wikipedia.org/wiki/Salix_babylonica ヤナギは,スミレとともに,キントラノオ目の中で最もよく目にする植物でしょう. ヤナ…

ギボウシを詠んだ短歌  わが家のぎぼうしは,まだ蕾.鎌倉おんめ様(大巧寺),そして日朝さま(本覚寺)にも立派なギボウシがあり,こちらはきれいに咲きそろっています.  ぎぼうしゅに愛(かな)しき小花(こはな)むれ咲て白日光(はくじつくわう)に照らされ居たり 斎藤茂吉  擬宝珠のみどり葉を裂き降りし雹(ひょう)ひかりつつあり土に静かに 鹿児島寿蔵  擬宝珠は手鈴(しゅれい)のごとき花もてり水ひかりつつ落つるかたへに 生方たつゑ

早くも木槿が咲き始めました. 昨日の夕方,覗いた梅雨晴れをバックに撮ると,夏が来たように見えます. 毎年買い求める八重のインパチェンス.根もしっかり張り,これからつぎつぎ花を咲かしてくれると期待しています. 澄んだ青色に魅せられて衝動買いした…

梅雨空の下,妙法寺・安国論寺に咲く季節の花々と山の緑の写真を掲載します.妙法寺で最も見応えのあった花は,仁王門に通じる参道横の半夏生と紫陽花.そして,妙法寺と言えば苔階段.最高です.安国論寺の空き地には野の花が咲きそろっていてモンシロチョウが沢山飛び回っていました.そして山には水木の花が. 葉の白き半夏生見んと誘はれて夏日傾く古寺に来ぬ 島田修二  枝ごとに吹かれゐる水木の白き花ひとつの谷をへだてて見ゆる 遠山光栄

先日散歩で出かけた妙法寺,安国論寺. 何回出かけても,ゆったりした気分にさせてくれる,良いお寺です.梅雨空の下の季節の花々と山の緑の写真を掲載します. 妙法寺は,ぼんやりしていると通り過ぎてしまうかもしれない場所にありますが,鎌倉に来たら,…

ネジバナ 捩花(梅雨空の下で出会った野に咲く花3) ネジバナは花序がねじれている珍しい植物.わかりやすい名前です.ネジバナ属の英語通称名は ladies'-tresses(婦人の房の編んだ髪).和名別名がモジズリ 捩摺.(小倉百人一首14 陸奥(みちのく)のしのぶもぢずり誰(たれ)ゆゑに乱れそめにしわれならなくに) ねじればかりに目がいってしまいますが,ネジバナはとても美しい花だと思います.ラン科の花なので,当然と言えるかもしれません.

昨日訪れた鎌倉英勝寺で,ネジバナに出会いました. 「日本全土の草地や崖などに生え,都市の芝生にも多い」(ニッポニカ)ので,英勝寺の庭にもたまたま生えてきたと考えてよいのですが--- わざわざ移植したものかもしれません. このお寺の庭師さんは,い…